Tianma official blue logo representing the company’s expansion of its Xiamen 8.6G LCD TM19 line for Apple IT display supply

Tianma社、Xiamen 8.6世代LCD TM19ラインキャパを大幅に増設… Apple社へのITディスプレイ供給に備える

Tianma公式ロゴ画像(出典: Tianma)

Tianmaは、Xiamenに位置する8.6世代LCD生産ラインTM19の生産能力を大幅に拡大することで、ITおよび産業用ディスプレイ市場での競争力強化を加速している。

現在、月40K規模で稼働中のTM19ラインは、2026年初頭までに月70K、2027年初頭までに月160Kまで拡張される予定だ。現在の製品構成は、モバイル用に月15K、IT用に月20K、産業用50インチパネルは月5K水準となっている。

特に注目すべきは、TianmaがAppleのiPad及びMacBook用パネル供給を目標に技術検討を完了し、7~16インチ対応可能なモジュールライン3つの投資を計画している点だ。このうち、1つのライン投資が優先的に推進され、現在、Appleの最終承認だけを待っていると報じられている。業界筋では、LGディスプレイの供給量の一部がTianmaに移管される可能性があると見ている。

一方、LCDキャパ増設に続き、8.6世代OLED投資も検討中だ。具体的な技術方向や日程はまだ未確定だが、今後OLED投資が推進される場合、厦門工場が主要拠点になる可能性が高い。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶ China Trends Report Inquiry

270-inch 8K TFT-based Micro-LED display jointly developed by Chenxian and Vistar, representing next-generation large-format display innovation

世界初の270インチTFTマイクロLEDを発表:Vistar-Chenxianが次世代超大型パネルをリード

中国成都で開催された「2025世界ディスプレイ産業革新発展大会」において、Chenxian Optoelectronics社は世界初の270インチTFTベースのマイクロLEDディスプレイを発表した。今回の展示は、中国のマイクロLED産業発展の新たなマイルストーンとして評価され、Visionox系列のVistarと協力して完成した成果である。

ChenxianとVistarが公開した世界初の270インチ8K TFTベースMicro-LEDディスプレイ(出典: Chenxian–Vistar)

世界初の270インチ8K TFTベースMicro-LEDディスプレイ(出典: Chenxian–Vistar)

270インチの超大型ディスプレイは、0.7mmのピクセルピッチと8K解像度(3,300万画素)を実現。TFTベースのAM駆動技術により、各ピクセルが独立制御され、LEDスクリーンにありがちな輝度ムラを解消。完璧な黒・高コントラスト比・鮮やかな色再現性を提供するため、プロの映画館、ホームシネマ、指令センター、商業用ディスプレイなどに適している。

フラッグシップモデルに加え、同社は13.55インチP0.7スプライシングモジュール、27インチP0.7テクスチャードスクリーン、19インチP0.4透明スクリーンなどの新製品を発表した。モジュール設計により高い平坦性、微細な継ぎ目を実現し、大型ディスプレイの拡張性を確保し、透明スクリーンは72%の透過率とタッチインタラクションで現実とデジタルを組み合わせた視覚体験を提供する。これにより、Chenxianは素材・装置・工程・モジュール・ディスプレイ完成まで網羅する包括的なマイクロLED技術のエコシステムを構築した。

同社の成長の背景には、VisionoxとVistarの協力がある。Vistarは2020年にVisionoxが設立したMicro-LED製品化及びモジュール化専門子会社で、Chenxianで生産されたMicro-LEDタイルをパネル単位で組み立て・タイル化・駆動モジュール統合する役割を担う。特に、タイリング(組み合わせ・補正・キャリブレーション)はVistar内部のシステム統合(SI)エンジニアリング部門で行われ、超大型パネルの精度を高める。

Vistarの投資と量産ロードマップも、その急速な拡大ペースを浮き彫りにしている。2020年8月に約1億6千万ドル規模のパイロットラインを開始し、2021年5月に点灯に成功し、2023年には約4億ドル規模の最初の量産(MP)ラインが着工した。2024年12月点灯後、2025年4月に本格的な量産が予定されており、2026年には10億ドル規模の大規模TFTベースの量産ラインが計画されている。

Vistarの2020~2028年Micro-LED投資および量産ロードマップ(出典: Vistar)

VistarのMicro-LED投資・量産計画ロードマップ(出典: Vistar)

今回の270インチMicro-LEDの発表は、Chenxianが技術力と生産能力の両面でグローバルリーダー企業に成長したことを示している。Vistar-Chenxianの垂直的な協力体制は、Micro-LEDの商用化を加速させ、中国のディスプレイ産業の競争力強化をリードする核心的な軸となっている。

UBIリサーチが発行した「2025年Micro-LED ディスプレイ産業 および技術動向レポート」では、中国のMicro-LEDエコシステム、主要投資及び技術ロードマップなど、より詳細な産業分析と市場展望を確認することができる。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025年Micro-LED ディスプレイ産業 および技術動向 レポート

Graph showing forecasted growth of OLED notebook shipments from 2025 to 2029 based on UBI Research data

2025年のノートPC用OLED市場は停滞、2026年から本格的な成長を見込む

2025年から2029年までのノートPC用OLED出荷予測グラフ(出典: UBIリサーチ)

ノートPC用OLED出荷予測(出典: UBIリサーチ)

2025年のノートPC用OLEDの成果出荷台数は約1,000万台に達し、前年と同水準を維持すると予想される。

UBIリサーチが発行した「中・大型OLEDディスプレイマーケットトラッカー」によると、2025年第3四半期までの累積出荷量は約670万台と推定され、年間総出荷量は2024年と同程度と予想される。

ノートPC用OLED市場は2025年まで調整局面にとどまるが、中長期的な成長基盤を強化される期間と評価される。現在、市場はサムスンディスプレイが主導する一方、LGディスプレイとEverDisplayも徐々に出荷を拡大している。

OLEDパネル価格が持続的に下落が続く中、中国パネルメーカーの2層タンデムOLEDと低コストシングルOLEDの供給拡大が続いており、市場は着実な成長が見込まれる。BOE、Visionox、TCL CSOT、Everdisplayなどの主要中国メーカーは、Lenovo、Dell、HP、Huaweiなどのグローバルセットメーカーを対象に量産ラインアップを構築し、競争力を強化している。

2026年には市場構造がさらに大きく変化するとみられる。業界の関心は、AppleがMacBook ProにOLEDディスプレイを採用するか否かに集中している。Appleは2024年にiPad ProにOLEDを初めて導入したが、高価格により需要は限定的であった。このため、同社はMacBookシリーズのOLED適用に慎重な態度を示し、コスト構造と需要の弾力性、サプライチェーンの安定性などを総合的に検討していると報じられている。

UBIリサーチのハン・ハンウク副社長は、「もしAppleが2026年にOLED MacBookを発売すれば、ノートパソコン用OLED市場は前年比30%以上成長し、2029年には2025年比で2倍以上拡大すると予想される」と明らかにした。また、「Appleだけでなく、Acer、Dell、HPなどの主要グローバルブランドもハイエンドラインアップを中心にOLEDの採用を拡大している」とし、「ノートPC用OLEDは徐々にLCDに取って代わり、プレミアムディスプレイの主流になるだろう」と付け加えた。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶Small OLED Display Market Tracker

▶Medium & Large OLED Display Market Tracker 

Google and Magic Leap prototype AR glasses demonstrating Micro-LED and waveguide integration under Android XR ecosystem

Googleのスマートグラス開発動向とMagic Leap社との協力発表

2024年以降、グーグル(Google)はスマートARメガネへの戦略的進出を強化している。特に、今年10月29日、米国のAR企業であるMagic Leapとの協力が発表され、単なるソフトウェアプラットフォーム構築から、光学系・ディスプレイ・製造を包括する統合ソリューションを目指す方向で戦略的転換を進めている。

– プラットフォーム・ソフトウェア中心の戦略

既存のモバイルオペレーションシステム(OS)主導戦略の成功経験を基に、2024年末からAndroid XRプラットフォームを正式に確立した。これはXR機器用の統合OSおよびエコシステム構築の枠組みであり、グラス型ARデバイスまで念頭に置いた拡大戦略だ。これにより、Googleはスマートグラスを単純なカメラ・ディスプレイデバイスではなく、AI機能を結合したウェアラブルコンピューティングプラットフォームへと変革する。翻訳、物体認識、音声/ジェスチャーインタラクションなどがこの戦略の一環である。

– ハードウェア・ディスプレイの能力強化

ハードウェアの面では、自社で完成品を多数発売する代わりに、プラットフォームとエコシステム基盤でパートナー企業モデルを拡散させる戦略を採用している。特に代表的なものは、Micro-LED技術を保有するRaxium社を買収し、高輝度・低電力ディスプレイの確保に乗り出した点である。 また、先日10月29日、サウジアラビアのリヤドで開かれたFII(Future Investment Initiative)イベントで、Magic LeapとGoogleは共同ARメガネのプロトタイプを公開し、両社の協業期間を3年間延長することを明らかにした。この協業の主なポイントは次の通りである。

  • Magic Leapの光学・ウェーブガイド技術+GoogleのRaxiumマイクロLEDライトエンジンの組み合わせ→高い画質・明るさ・装着感の向上を目指す。
  • ARグラスの開発はリファレンスデザイン(Reference Design)の形でARグラス開発が行われており、これによりAndroid XRエコシステム内の複数メーカーに基盤ソリューションを提供する枠組みを確立している。
GoogleとMagic Leapが共同開発中のAndroid XRスマートARグラスのプロトタイプ(出典: Magic Leap)

GoogleとMagic LeapによるAndroid XR対応ARグラスのプロトタイプ(出典: Magic Leap)

この締結は、単なる2社間の技術提携を超えた複数の戦略的意味を持つ。Googleが自社生産ではなく、エコシス手う中心の「プラットフォーム+パートナー」戦略へ転換したことを示している。市場ではMeta、Apple、サムスンなどがスマートメガネ/ヘッドセット競争を繰り広げる中、Google-Magic Leap連合はAndroid XR生態系で差別化された基盤を築こうとする動きとみられる。 ただし課題は残る。消費者向けの完成品仕様(解像度、価格、バッテリー持続時間など)は公開されておらず、発売時期は2026年以降になると予想される。Micro-LEDやウェーブガイドなどの技術は、研究/プロトタイプ段階で一定の進展を見せているものの、量産化・量産コストの観点からは依然課題を抱えている。

今回のGoogle-Magic Leapの協力発表は、スマートグラス市場の全体像を再定義する重要な転換点と考えることができる。サムスンがGalaxy XRを発表したばかりで、Googleとパートナー企業が適切な動きを見せれば、状況が給食に競争の激化へと発展する可能性がある。

Namdeog Kim, Senior Analyst at UBI Research(ndkim@ubiresearch.com)

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ARグラス市場、二つの進化の道: 中国のコンテンツ没入型 vs グローバル ビッグテックのAI融合型ウェアラブルプラットフォーム

TCLのARブランドRayNeoは2025年10月、最新ARグラス「Air 4 Pro」を発売し、高周波PWM(パルス幅変調)調光技術とAIベースの映像最適化を前面に押し出し、グローバルAR市場で差別化された戦略を展開している。

RayNeo Air 4 Proは、3840Hz高周波OptiCare™調光により目の疲労を最小限に抑え、HDR10対応およびVision 4000画質チップを搭載し、没入型コンテンツ鑑賞に最適化された体験を提供する。特にTandem OLED発光構造を採用したSeeya第5.5世代Micro OLEDパネルは最大6000ニットの輝度を実現し、広色域(145% sRGB、98% DCI-P3)と200,000:1のコントラスト比で映像品質を最大化している。

競合他社であるXREALとVitureが電気変色Dimming Lensによる外部光遮断に注力する一方、RayNeoはデジタル方式の輝度制御とAI映像エンジンを通じた画質中心の戦略を堅持している。これによりRayNeoはレンズ重量増加なしに軽量化(76g)を維持し、室内中心の没入型コンテンツ消費に最適化された製品を提供する。

このような技術戦略は市場でも成果につながっている。RayNeoは2025年第1四半期基準で中国AR/AIスマートグラス市場において約50%のシェアを記録し、1位を占めた。特にAir 3s Proは618ショッピングフェスティバル期間中、XR製品の中で販売量1位を記録し、中国国内におけるブランドの存在感を証明した。中国のもう一つのAR専門企業であるXREALは、中国国内でのシェアはRayNeoより低いものの、XREAL One ProのようなOSTベースの製品で差別化を図り、中国国内よりも北米・欧州などのグローバル市場拡大に注力している。

MetaはLCOSディスプレイとカメラ・AIアシスタントを組み合わせ、メッセージ確認、写真撮影、音声コマンドなどスマートフォン補完型スマートグラスに注力している。AppleはVision Proの後継機開発を保留し、軽量型AI/ARメガネの開発へ戦略を転換してスマートフォン連動型ARグラスの商用化を急いでいる。GoogleはAIベースのリアルタイム翻訳・検索を中心に戦略を再構築し、AIアシスタント連携型ARグラスを準備中だ。3社ともスマートフォンに続く次世代インターフェースとして、ARグラスを中核プラットフォームに育成しようという共通の方向性を示している。

RayNeo Air 4 ProとMeta Ray-Ban Displayのディスプレイ種類、光学構造、主要機能、市場ポジションの比較表(出典: UBIリサーチ)

ARグラス市場は、AI融合型ウェアラブルプラットフォームとコンテンツ中心の没入型という二つの軸で再編される流れを見せており、中長期的にはAI融合型ウェアラブルプラットフォームとしてのARグラスがスマートフォンを代替する潜在力を備えた機器として発展することが期待される。

ARグラスを装着したユーザーがAI搭載の没入型インターフェースを操作しているイメージ(出典: Gemini制作)

Gemini制作

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

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Chemical structure and emission performance of double-borylation ν-DABNA OLED materials developed by Kyoto University and JNC

京都大学-JNC共同研究チーム、新しい「二重ホウ素化(Double Borylation)」技術により次世代Deep Blue OLED素材を革新

京都大学化学科の畠山琢次教授の研究チームは、JNC Co., Ltd.との共同研究により、新しい「二重ボロン化(Double Borylation)」合成戦略を開発し、世界最高レベルの純粋なディープブルー(Deep Blue) OLED発光材料の実現に成功した。今回の成果は、国際学術誌Nature Communications(2025年10月、DOI: 10.1038/s41467-025-63908-y)に掲載され、高解像度マイクロOLEDのような次世代ディスプレイの核心技術として期待されている。

OLEDは、赤・緑・青(RGB)の3色のうち、「ディープブルー(Deep Blue)」領域の実装が最も難しいと言われている。濃い青色を出すほど電荷の再結合が不安定になり、効率の低下と寿命の短縮を伴うからだ。畠山教授の研究チームは、このような問題を解決するために、ボロン(B)と窒素(N)で構成された多共振(Multi-Resonance(MR)-TADF発光体骨格に二つのボロン原子を選択的に導入する「二重ボロン化(Double Borylation)」戦略を新たに提示した。

ν-DABNA構造に2つのホウ素原子を導入した二重ボリル化(Double Borylation)OLED合成の模式図(出典: Nature Communications, 2025)

ν-DABNA二重ボリル化OLED構造(出典: Nature Communications, 2025)

このプロセスは、分子のπ(パイ)共鳴構造を拡張し、電子遷移エネルギーを高め、遷移双極子モーメントを強化し、シングレット-トリプレットエネルギーギャップ(ΔE_ST)を減少させる役割を果たす。その結果、効率と色純度、安定性の両方を向上させることができた。今回合成された新素材「ν-DABNA-M-B-Mes」は、これまでに発表されたブルー素材のν-DABNAよりdeep blueである463 nmの波長を持ち、以下の通りである。

  • 光子発光量子効率(PLQY): 93%。
  • 発光半値幅(FWHM): 16 nm (世界最小レベル)
  • 外部量子効率(EQE): 32%以上
  • 色座標(CIE y):09 – NTSC標準青色(0.08)に近似
  • 寿命(LT80、100 cd/m²の場合): 1,000時間以上

また、第4世代の発光材料であるhyperfluorescent材料として注目されているPhosphor-Sensitized Fluorescence構造では、低駆動電圧(2.5V)と効率維持(ロールオフの最小化)、および輝度100 cd/㎡基準でLT₈₀ > 1,000時間の寿命を達成した。

畠山教授は、二重ボロン化(Double Borylation)は単純な合成技術ではなく、OLED材料設計の基本概念を変える戦略的なアプローチで色純度、効率、寿命を全て向上させることに成功し、AR-VR用マイクロOLED(OLEDoS)、超高色純度のスマートフォンやTVディスプレイ、自動車用ヘッドアップディスプレイ(HUD)、ウェアラブルや透明ディスプレイなど、様々な次世代応用分野で活用されることに期待感を示した。

ν-DABNA-M-B-Mes OLEDのデバイス構造、発光スペクトル(467nm, FWHM17nm)、およびCIE座標(0.12, 0.12)(出典: Nature Communications, 2025)

ν-DABNA-M-B-Mes OLEDの発光特性(出典: Nature Communications, 2025)

Changho Noh,  Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶AMOLED Emitting Material Market Tracker Sample

▶2025 OLED発光材料レポート

TCL CSOT 8.6th generation inkjet OLED presentation showing precise RGB structure and printing accuracy from K-Display 2025

TCL CSOT、8.6世代印刷型OLED生産ラインの早期着工を発表

TCL CSOTのインクジェットOLEDプレゼンテーションスライド — 印刷精度とRGB構造の比較(出典: TCL CSOT)

TCL CSOTインクジェットOLED発表スライド(出典: TCL CSOT)

TCL CSOTは2025年10月21日、広州市で第8.6世代印刷型OLEDディスプレイパネル生産ライン(T8プロジェクト)の正式着工を公式発表した。これは当初計画より約1ヶ月早い着工となり、総投資額は295億元(約5.4兆ウォン)となる。本プロジェクトは世界初の8世代印刷型OLEDラインであり、ノートパソコン、モニター、車載用など中型アプリケーション市場をターゲットとし、月産45K(2290mm x 2620mm基板基準)の生産能力を備える計画である。TCL CSOTはT8ラインを既存の広州T9ライン近隣のT8用地に投資する。当初T8用地は太陽光プロジェクトへ転換される予定だったが、当該計画は保留されOLED生産ライン用地として活用が確定した。このT8ライン投資は2ラインに分けて進められ、初期段階では1ラインから先行投資が行われる。

Phase 1の月間基板投入キャパシティは15Kで、2026年9月の設備搬入を目標に進められ、2027年6月に試量産される計画である。中型OLED市場の急成長に対応し、主要ディスプレイメーカーは8.6世代ライン投資に拍車をかけている。TCL CSOTは印刷型OLEDという差別化された方式を選択し、原価競争力と技術革新に重点を置いた。TCL CSOT の印刷型OLED技術は材料利用率が90%を超え、蒸着方式の30%を圧倒的に上回り、製造コストを20%以上削減する。このような原価優位性は、OLEDを大衆化する「中低価格市場の主導権」を先取りする戦略と解釈される。また、中国政府がFMMなどの既存技術方式に対する投資許可を厳格に審査する傾向があるため、Visionox(ViP)やTCL CSOT(インクジェット)などは新技術の適用を通じて投資を進めている。

UBIリサーチの分析によると、印刷型OLEDは依然として技術的課題を抱えている。

・輝度及び寿命:印刷型OLEDプロセスは蒸着方式に比べ、画素(ピクセル)を構成する有機物層を積層する精度が低く、現時点では高輝度実現や素子寿命確保の面で既存の蒸着技術に劣る懸念がある。

・タンデム構造:高効率・長寿命確保に不可欠なタンデム(2層発光構造)技術の適用が蒸着方式より困難な点も弱点として挙げられる。TCL CSOTは印刷設備4台を導入予定で、これはHI/HT/RGB用3台とタンデム用1台と見込まれ、この設備はパナソニックの機器を購入すると予測される。これは技術的難題克服に向けた努力を示すものである。

TCL CSOTはこのように印刷型路線を通じて、蒸着市場の巨人であるサムスンディスプレイとBOEを直接狙う代わりに、新技術で中型OLED市場を攻略し、「市場をリードする革新的な勢力」としての地位を確立しようとする試みと解釈される。

印刷型OLEDは画期的な原価削減を通じて、ノートパソコン、モニターなどのIT用OLED市場の参入障壁を大幅に下げ、市場のパイを拡大するとの期待感を与えている。一方で、印刷プロセス特有の輝度と寿命の課題が、大型IT製品の厳しい品質基準を満たせるかへの懸念も共存する。TCLCSOTが技術的難題を成功裏に克服し、「技術-コスト-規模」の三位一体戦略で2027年に中型OLED市場の勢力図を揺るがす変数となり得るか注目される。

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書 

Apple LTPO+ OLED backplane compensation circuit structure showing oxide TFTs for both switching and driving

LTPO搭載のiPhone 18:パネルメーカー間の技術競争激化

iPhone 18には、LTPO+と呼ばれる新しい形のOLEDバックプレーン技術が適用される予定だ。従来のLTPOがスイッチングTFTのみに酸化物(酸化物)半導体を使用したハイブリッド構造であったのに対し、LTPO+はスイッチングTFTと駆動TFTの両方を酸化物TFTに切り替えたのが核心的だ。これは次世代OLEDパネルで電力効率向上と、長時間使用時の輝度均一性や残像問題への対策として、Appleが採用した戦略と見られる。

LTPO+補償回路構造 — AppleのOLEDバックプレーン特許図(出典: Apple)

LTPO+補償回路(出典: Apple)

従来のLTPS(低温多結晶シリコン)ベースの駆動TFTは、高い移動度を有し、高輝度駆動には有利だが、結晶粒界によるトラップが多く、大きなヒステリシスと不安定な電流特性が生じ、長時間使用すると階調誤差や輝度ムラが発生しやすい。一方、酸化物TFTはヒステリシスが小さく、電流特性が安定しているため、同じゲート電圧条件でも一定の電流を維持する。その結果、ピクセル間の電流偏差が減少し、輝度均一性と色安定性が向上する。さらに残留電荷の蓄積が抑制されるため、画像残像(Image Retention)現象が軽減される。

これらの利点にもかかわらず、酸化物を駆動TFTとして応用するためには、多くの技術的課題が残されている。酸化物半導体の移動度はLTPSより低いため、十分な駆動電流の確保が難しく、高輝度・高リフレッシュレート駆動時に電流応答速度が低下を招く可能性がある。また、長時間のバイアスおよび熱ストレス環境での安定性確保が不可欠である。これは、駆動TFTを長時間駆動すると、電子トラップの蓄積が電流の減少や微細な色変化が引き起こすためである。

一方、LTPO+構造においても一部の回路素子は依然としてLTPSで構成されている。これらのLTPSは駆動用TFTほど高性能ではないため、費用対効果に優れた低コストのLTPS製造技術の確保が極めて重要である。高品質の駆動用LTPSとは異なり、周辺回路やセンシング素子向けのLTPSは、高移動度よりも歩留まり・均一性・低コストプロセスが優先される。こうしたプロセス簡素化とコスト削減技術がLTPO+の量産競争力強化に寄与する。

言い換えれば、LTPO+は、酸化物とLTPSの二つのプロセスのバランスの上で完成される構造であり、一方は高性能化(酸化物)、もう一方は低コスト化(LTPS)が核心的な課題となる。

このような観点から、酸化物駆動TFTの主な課題は4つに整理される。

第一に、バイアスおよび熱ストレスの信頼性確保 – 長時間の駆動中の電気的劣化を抑制し、ΔVth(閾値電圧移動)を最小化する技術。

第二に、補償回路(Compensation Circuit)の統合 – 酸化物デバイスの特性変動を補償し、動作安定性を確保するための回路レベルの補償回路設計。

第三に、大面積均一性(Large-Area Uniformity)の確保 – 基板全体の電流偏差を減らして輝度均一性を維持する技術。

第四に、適正SS(Subthreshold Swing)制御 – SSが低すぎると閾値電圧偏差と経時変化(ΔVth)に対する感度が高まり、電流分散が増大する可能性がある。したがって、電力効率と駆動安定性のバランスを考慮したSSの最適化が必要である。

結局のところ、LTPO+の成功の可否は、酸化物駆動TFTの性能完成度だけでなく、補助LTPSプロセスのコスト競争力にも依存する。AppleがiPhone 18にLTPO+を全面採用するには、移動度、信頼性、均一度、そして製造コストまで目標レベルに到達が必須である。業界では、既存のiPhoneパネルサプライヤー間の技術競争が激化し、酸化物TFTの性能確保と低コストのLTPSプロセス開発が焦点になると予測される。LTPO+は次世代モバイルOLED市場におけるパネル技術の新たな分岐点となる見込みだ。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

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Samsung Electronics 114-inch Micro LED TV representing ultra-premium display market leadership

Micro-LED戦略の多角化 – サムスンは超プレミアム、LG、Vistarは市場多角化で対応

グローバルディスプレイ業界が次世代技術として注目されているMicro‑LEDの商用化競争で、それぞれ異なる戦略的方向性を取っている。Micro‑LEDの進化は「価格の下落」ではなく、「市場の多様化」で現実化している。サムスン電子が超プレミアムTV市場の象徴的な技術リーダーシップを強化する一方、LG電子とVistarはProAV、産業用市場という新たな成長経路を開拓し、Micro‑LED産業の技術的進歩と応用拡大を同時に牽引している。

サムスン電子は自社のMicro‑LED TVラインアップを超高価のフラッグシップ製品群として位置づけ、技術優位性を維持している。110インチ、114インチなどの超大型モデルを中心に、精密転写(Transfer)工程とRGBチップ一体型構造を通じて完全自発光方式を実現した。しかし、このような技術的な完成度にもかかわらず、生産単価と工程歩留まりの限界により、価格は依然として億単位の水準を維持している。

現在、Micro‑LED TVは消費者向け市場で「技術誇示型プレミアム製品」の性格が強く、大衆化には時間が必要である。市場の専門家は「Micro‑LED TVの需要拡大には少なくとも3~5年の時間がかかるだろう」とし、「価格アクセス性と生産効率の改善が並行して行われなければ、市場が本格的に拡大することはできない」と診断する。

これに対し、LG電子はMicro‑LED技術を商業用・専門映像市場(ProAV)に拡大する戦略を取っている。最近発表されたMAGNIT ProAVシリーズは、ピクセルピッチ0.78mm、0.94mm、1.25mmなど多様なラインアップを備え、会議室、放送スタジオ、展示場など高輝度、高精度の映像環境を狙った。

これは、消費者向けテレビより技術的な参入障壁が低く、投資回収期間が短いB2B市場を先取りしようとする試みと評価される。また、ピクセルピッチが1mm以下に縮小されたことは、LGのMicro‑LEDの転写および補正(calibration)技術が安定化段階に入ったことを示すシグナルであり、Micro‑LEDを商業用室内用大型ディスプレイとして本格的に商用化できる基盤が整ったと分析される。

一方、中国のVistar(Visionox傘下)はTFTバックプレーン基盤のタイル型Micro‑LEDディスプレイを通じて最大135インチ級のSeamless Wallの試作品を発表し、大面積市場での存在感を強化している。PCBベースのパッシブ構造からアクティブマトリックス(TFT)駆動を採用することで、明るさ、色の均一性、タイル間の境界を最小限に抑えることができます。これはVisionoxがOLED生産で蓄積したTFTプロセス技術をMicro‑LEDに拡張した事例であり、大型コントロールルーム、展示場、産業用制御システムなどの高精度B2Bディスプレイ領域を新たな成長軸として設定していることを示している。

UBI Researchは「Micro‑LEDがもはや単にプレミアムTVだけの技術ではなく、専門映像、展示、産業制御などのB2B環境で実際の売上につながる段階に入った」とし、「LG電子とVistarの動きは、Micro‑LEDの応用幅が拡大していることを示すシグナル」と分析した。

サムスン電子114インチMicro LEDテレビ — 超プレミアム市場を狙ったフラッグシップ製品(出典: サムスン電子)

サムスン電子114インチMicro LEDテレビ(出典: サムスン電子)

LG MAGNIT ProAVシリーズ — 商業用およびプロAV市場向けMicro LEDディスプレイ(出典: LG電子)

LG MAGNIT ProAVシリーズ(出典: LG電子)

Vistar 135インチTFTベースMicro LEDシームレスディスプレイ — Visionox傘下のVistar試作機(出典: Vistar)

Vistar 135インチTFTベースMicro LEDシームレスディスプレイ(出典: Vistar)

Joohan Kim, Senior Analyst at UBI Research (joohanus@ubiresearch.com)

▶2025年Micro-LED ディスプレイ産業 および技術動向 レポート

Comparison of Google Android XR, Apple Vision OS, and Meta smart glasses — Image created via sora

ビッグテック企業が次世代ウェアラブルプラットフォーム主導権競争に本格参入

GoogleのAndroid XR、AppleのVision OS、Metaのスマートグラスの比較(soraで作成)

Google・Apple・MetaのXRプラットフォーム競争(soraで作成)

グローバルビッグテック企業が次世代ウェアラブルデバイス市場で全面的な競争構図を形成している。サムスン電子が「プロジェクト無限(Project Moohan)」ギャラクシーXRヘッドセットを今月中に公開する予定である。サムスンのギャラクシーXRは、グーグルアンドロイドXRプラットフォームをベースにした高性能ヘッドセットで、4KマイクロOLEDディスプレイ(4,032 PPI、2900万画素)とクアルコムスナップドラゴンXR2+ Gen 2プロセッサーを搭載した。545gの軽量化されたデザインと一緒にハンドトラッキング、アイトラッキング、音声認識を統合したマルチモーダルインターフェースを提供する。

特に、Apple Vision Pro(2300万画素)よりも高い解像度とメタクエスト3に比べて優れたディスプレイ品質を前面に押し出し、プレミアム市場攻略に乗り出す。バッテリー持続時間は一般使用2時間、動画再生2.5時間で競合製品と似たようなレベルであり、価格は1,800ドル(約250万ウォン)水準で予想される。

サムスンはグーグルとのパートナーシップを通じてワンUI XRインターフェースを構築し、クロム、ユーチューブ、ネットフリックスなどの主要アプリ生態系を確保した。初期生産量は10万台規模で市場の反応をテストした後、本格的な量産体制に突入する計画だ。

アップルは廉価型「N100(ビジョンエア)」ヘッドセットの開発を暫定中断し、関連人材をAIスマートメガネプロジェクトに全面再配置した。 これはメタの「レイバンメタ」の成功とAI基盤のスマートメガネ市場の急成長に対応した戦略的判断と分析される。

アップルが開発中のスマートメガネは2つのモデルに分けられる。コード名「N50」の第1世代モデルは、ディスプレイなしでiPhone連動で動作するオーディオ中心のAIウェアラブルで、2027年の発売を目指す。第2世代モデルはディスプレイを搭載し、メタレイバンと直接競争し、当初の2028年の計画を前倒しして開発を加速している。

アップルのスマートグラスは「ビジョンOS」を基盤とし、カメラ、マイク、健康追跡機能とともに、次世代シリ(Siri)AIを通じた音声コマンドインターフェースを中核とする。様々なフレームオプションと色を提供し、ファッションアクセサリーとしてのポジショニングも強化する予定だ。

現在、スマートメガネ市場はメタが圧倒的にリードしている。メタ-レイバンシリーズは累積350万台以上販売され、AIスマートメガネのシェア80%水準に達している。最近発表した「レイバンディスプレイ」モデルは、フルカラーの高解像度ディスプレイを搭載し、メッセージ、写真、各種情報表示が可能だ。

これに対し、グーグルは「アンドロイドXR」プラットフォームと「ジェミニ(Gemini)」AIを前面に出し、サムスンとの協力を強化している。サムスンは来年初め、グーグル、ジェントルモンスターと協業した’プロジェクトコースト’スマート眼鏡も発売する予定で、ヘッドセットとスマート眼鏡のツートラック戦略を展開する。

今後、XR/スマートメガネ市場は、アンドロイドXRプラットフォームとアップルのビジョンOS XRプラットフォーム及びメタの先発ランナー優位性が対決する三つ巴戦の様相で展開される見通しだ。各企業の生態系構築能力とユーザー体験の差別化が市場主導権を分ける重要な変数になると予想される。

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶ UBIリサーチのマイクロディスプレイレポート

AI AR smart glasses Meta Ray-Ban Display showing growth of the global AR wearable market

AI/ARスマートグラスの競争とサプライチェーンのエコシステムにおける中国勢の躍進

Metaは先月18日(米国時間17日)、Meta Connect 2025で新製品を正式発表した。米国で9月末に発売を開始した。ディスプレイを搭載した初の消費者向け「Meta Rayban Display Smart Glasses」である。同社は、AI/ARメガネについて継続的に席巻する戦略を継続している。MetaのCTOであるアンドリュー・ボスワース(Andrew Bosworth)が今月10月2日にThreadsに投稿した文章によると、Meta Ray-Banディスプレイスマートグラスは実店舗でほぼ完売、11月の予約もほぼ終了したと明らかにした。製品の市場反応が予想以上に強く、同社は対応に追われていると述べた。

Meta Ray-Ban Display スマートグラス、AIとAR技術を融合した次世代ウェアラブル(出典: Meta)

Meta Ray-Ban Display スマートグラス(出典: Meta)

一方、発売から1年以上経った後、Vision Proは徐々に落ち着きを見せている。報道によると、昨年のVision Proの総販売台数は100万台未満で、市場の期待を大きく下回った。 また、Appleは低コストのVision Proの開発を中止し、戦略的な焦点をスマートグラスに完全に転換し、Meta Ray-banのスマートグラスと直接競争できる製品の発売を目指しており、最初のスマートグラスの発売目標時期も2026年に前倒しされたという噂もある。この転換は、Appleが『AI+AR』機器が次世代モバイル端末としての展望を認めていることを意味する。

サムスンもGoogleと協業してProject Moohan XRヘッドセット開発中であり、スマートグラスHaeanも今年同時に公開される可能性がある。中国のアリババ社も「Quark AI Glasses」を発表し、2025年末に発売予定と報道された。Xiaomi、Baiduなどの企業も相次いで市場に参入し、市場の熱気を引き上げている。また、XREAL、RayNeo、Rokid、INMOなど中国国内のARメガネブランドの台頭と市場占有率が拡大している。

スマートグラスのサプライチェーンの観点から見ると、AIとAR技術の相互浸透が産業エコシステムを形成している。このエコシステムにおける中国企業の役割も変化しつつあり、高度な中核技術分野では依然として格差が存在するが、企業内の垂直統合や外部との技術協力などを通じて、過去のサプライチェーンの段階からエコシステムの参加者として浮上している。つまり、新産業の主要な推進力となりつつあるのだ。。実際、今回のMeta Ray-Banスマートグラスでは、中国企業であるGoertek社が製造を行い、内部部品にはLCoSディスプレイ、バッテリー、カメラモジュールなど多くの中国部品メーカーが含まれている。実際、今回の中国深センで開催された光電子展示会「CIOE 2025」でも、次世代用ARグラス製品に適用されるLEDoSパネル、光学Waveguide部品でも、JBDやGoeroptics、Sunny Opticalなど大半の中国メーカーの躍進が目立っていた。

要約すると、Apple、Meta、Samsungなどの大手技術企業が最近、AI/ARグラス分野で活発な動きを見せており、AI+ARグラスが高い関心を受ける分野としての影響力をさらに強化している。したがって、産業エコシステムも成長期に入りつつある重要な転換期であり、産業サプライチェーンの各企業も技術的な突破力とエコシステムの構築を積極的に推進するとともに、競争も激化する見通しだ。中国企業が中国政府の戦略産業支援とAR/XRがデジタル経済の核心として浮上する政策の流れの下、中国国内の光学・ディスプレイ・部品素材を担う企業がAR/XRグラスの生態系に積極的に参加し、躍進が目立っている。

Namdeog Kim, Senior Analyst at UBI Research(ndkim@ubiresearch.com)

▶2025年Micro-LED ディスプレイ産業 および技術動向

Hyundai Mobis rollable OLED display technology for Genesis GV90

GV90、ローラブルOLEDで進化する車載用HMI

高級車市場がディスプレイ革新の新たな舞台として浮上している。ローラブルOLEDディスプレイは、車内空間におけるミニマリズムと先進的な感性を両立させる基幹技術として注目を集めており、現代モービスとForviaなどといった主要企業が高級車にこの技術を応用するため競っている。

中国ではすでに現実化が始まっている。Hongqiの超豪華セダンGuoya(グオヤ、別名Hongqi L1)モデルにVisionoxが開発した14.2インチのローラブルOLEDが搭載された。このディスプレイは、ダッシュボード内部に収納され、必要なときに上に展開される構造で、電源がオフのときは完全に隠れるため、インテリアの一体感を最大化する。走行中は限られた情報のみを表示し、停車時にはナビゲーション・エンターテイメント機能を全画面で拡張する形で作動する。紅旗Guoyaは約140万~186万元(約2億5千万ウォン)の超高級セダンで、メルセデス・マイバッハやベントレー・フライングスパーと競合する中国型フラッグシップモデルだ。この車両にローラブルOLEDが搭載されたのは、単なる高級化戦略を超え、中国自動車ブランドが先端ディスプレイ技術を通じてプレミアム市場で技術的主導権を確保しようとする試みと解釈される。

韓国でも同様の動きが見られる。Hyundai Mobisは2021年に「車両用ローラブルディスプレイ」に関する特許(US12422892B2)を出願し、これはハウジング内部の回転ローラーにOLEDパネルを巻いたり広げたりできる構造になっている。特許の内容によると、ディスプレイパネルの背面には横・縦方向の支持体が配置され、走行中の振動やタッチ圧力によるパネルの変形を防止する。 また、画面を広げたときにパネル全体が平坦に保たれるようにする翼型支持構造を含んでいる。 つまり、単に巻き取る「ローラブル」技術ではなく、車両走行環境でも安定した視認性と剛性を確保するための構造設計だ。

US12422892B2に基づく車載用ロール式OLEDディスプレイ構造図

US12422892B2に基づく車載用ロール式OLEDディスプレイ構造図(出典: 現代モービス特許)

同社はこの特許技術を基に、CES 2024で実際のローラブルOLEDの試作品を公開した。この製品は最大30インチまで拡張可能で、1/3、2/3、フルモードで画面を調節することができる。起動がオフになる時は完全に巻いてダッシュボード内部に消え、必要な時だけ表示される構造で、「見えない時こそ最高級のディスプレイ」というコンセプトを提示した。設置スペースは約12cmに過ぎず、インテリア設計の自由度が高く、車両用QHD(2,560×1,440)の画質を実現。同社は量産化の準備を進めており、サムスンディスプレイとLGディスプレイがパネル供給を競っていると伝えられている。

現代モービスが公開した車載用ロール式OLED試作品

現代モービスが公開した車載用ロール式OLED試作品(出典: 現代モービス)

ジェネシスGV90がこの技術の適用候補として挙げられている。Hyundai自動車グループの電気SUVフラッグシップであるGV90は、ローラブルOLEDディスプレイを搭載する可能性が高いモデルとして業界の注目を集めている。ジェネシスがローラブルディスプレイを検討する理由は明確だ。第一に、デジタル化された運転情報を必要な瞬間だけ表示させ、ミニマルで高級感のあるインテリアを実現するためだ。第二に、大型スクリーンが走行中にドライバーの視界を妨げないように表示領域を調節可能である。第三に、グローバルな高級ブランドと競争するための技術的差別化が期待できる。世界初の「ローラブルOLED搭載高級SUV」というタイトルは、ジェネシスがベンツEQS SUVやBMW iXのような高級電動化モデルとの格差を縮めることに貢献できる。

業界の専門家たちは、このような流れを単純なデザインの変化と見なしていない。UBIリサーチのハン・ハンウク副社長は、「ローラブルOLEDの車両適用は、単純なディスプレイの革新を超え、空間設計とユーザーインターフェース(UI)のパラダイムを再編する技術的進化」とし、「大型固定型スクリーン中心から可変型ディスプレイへの転換は、今後、プレミアム車両のインテリアで重要な選択肢として浮上するだろう」と分析した。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

Featured image of Xiaomi 17 Pro Max highlighting TCL CSOT OLED panel supply

Xiaomi、フラッグシップ17 Pro Maxを発表…TCL CSOTがReal RGB OLEDパネル供給とRed Hostの供給先を変更

シャオミ17 Pro Max、TCL CSOT Real RGB OLEDパネル採用スマートフォン

シャオミ17 Pro Max発表、TCL CSOT Real RGB OLEDパネル採用 (出典: シャオミ)

Xiaomiは9月25日、新型スマートフォン「Xiaomi 17シリーズ」3機種(一般、プロ、プロマックス)を発表した。TCL CSOTがXiaomi 17 Proと17 Pro Maxのすべてのディスプレイ(前面+背面)を独占供給すると発表した。Pro Maxのメインディスプレイは、6.9インチ1200×2608の高解像度と120Hzのリフレッシュレート、そして3,500ニット(nits)に達する明るさを誇るLTPO AMOLEDパネルです。背面にも2.9インチ596×976解像度のLTPO AMOLEDが搭載される。

TCL CSOTは長い間、インクジェット印刷技術を利用したReal RGB構造の開発に力を注いできたため、一部では今回のXiaomi 17 Pro Maxにもこの技術が適用されると予想する声もあった。しかし、実際には、FMM(Fine Metal Mask)プロセスを通じてReal RGB構造が実現された。これは、各ピクセルが独立した赤(R)、緑(G)、青(B)のサブピクセルで構成されており、解像度を損なうことなく、優れた鮮明さと正確な色を実現する方式である。

サムスンディスプレイが主に使用するダイヤモンドピクセル構造は、発光効率が高く、バーンイン(Burn-in)現象に強く、物理的なピクセル数を減らしながらも体感解像度を高め、費用対効果の高い高解像度の実現に有利という利点がある。また、これに関連する強力な特許を保有しており、他の企業の参入障壁の役割も果たした。しかし、ダイヤモンドピクセル構造はR、G、Bサブピクセルの数が同じではないため、特に小さなテキストや複雑なグラフィックスで微細な読みやすさの低下や色のにじみが発生する可能性があるという指摘があった。

TCL CSOTのReal RGB構造は、色精度、テキストの可読性など視覚的な品質の向上と、サムスンの特許回避という戦略的な側面があるようだ。TCL CSOTがインクジェット印刷Real RGB技術への投資を継続しながら、Xiaomi 17 Pro Maxなどの主要製品にFMMベースのReal RGBを供給していることは、TCL CSOTが両方の技術パスを積極的に模索していることを示している。インクジェット印刷は、長期的には大型OLEDとコスト効率の面で大きな可能性を秘めているが、小型の高解像度製品に適用するには、技術的な難易度、量産性、信頼性などの課題が残っている。

TCL CSOTの新規パネルには、最新の発光層スタック構造であるC10セットが適用され、発光効率と安定性を改善した。特に注目すべき点は、核心発光素材のうち、Red Host(赤色ホスト)に従来適用されていたDupont社の製品の代わりに、中国企業であるLumilanの素材が適用されたことだ。Lumilanは2017年に設立された中国のOLED素材専門企業で、中国の激智科技(Jizhi Technology)とXiaomi Changjiang Industrial Fundの投資を受けて成長した。浙江省寧波市に工場を置き、OLED発光材料の研究開発、生産、販売に注力しており、2022年にはXiaomiと共同研究所を設立するなど、戦略的パートナーシップを強化してきた。今回のXiaomi 17 Pro Maxへの適用は、その協力の結実と評価される。主要核心発光材料の一つが中国メーカーの製品に置き換えられたという点は、グローバルディスプレイ産業のサプライチェーンに新たな変化を予感させる。

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

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▶AMOLED Emitting Material Market Tracker Sample

Micro-LED smartwatch market forecast, 2023–2030 (Source: UBI Research)

マイクロLEDスマートウォッチ市場が本格開花…2030年には12億ドル規模へ成長見込み

世界初のMicro-LEDスマートウォッチが登場し、ウェアラブルディスプレイ市場に新たな変化の波が起きている。ガーミン(Garmin)が公開したFenix 8 Micro-LEDはウェアラブルディスプレイ技術の新たなマイルストーンと評価されるが、市場の本格的な転換には依然として時間が必要だという分析が出ている。

Micro-LEDスマートウォッチ市場予測グラフ(2023~2030)(出典:UBIリサーチ)

Micro-LEDスマートウォッチ市場見通し(2023~2030)(出典:UBIリサーチ)

ミンの挑:成果と限界

Garmin Fenix 8 Micro-LEDは1.4インチディスプレイ、最大4,500ニットの輝度を実現し、アウトドア環境において既存のOLEDスマートウォッチと比較して圧倒的な視認性を提供する。さらに衛星メッセージ機能までサポートし、僻地環境での接続性問題も解決した。こうした点からアウトドア特化市場では十分な価値が認められた。しかしバッテリー使用時間では既存のOLEDスマートウォッチより不利である。

UBIリサーチのキム・ジュハンアナリストはその理由を、小型化されたMicro-LEDチップで発生するEQE(外部量子効率)の低下、まだ最適化されていない駆動回路設計、チップ間の性能ばらつきによる電力効率の低下に見出している。彼はMicro-LEDが本格的に普及するためには、こうした技術的限界の解決が不可欠だと 指摘した。

プレミアム市場の大:TAG Heuerとサムスンディスプレイ

TAG Heuerは高価格市場での受容力を持つラグジュアリー時計ブランドとして、 Micro-LEDスマートウォッチの発売を準備中である。UBIリサーチはTAG Heuerの参入がMicro-LEDのプレミアムイメージを確固たるものにする契機と なると分析する。

また、サムスンディスプレイはK-Display 2025で6,000ニット級のウォッチ型 Micro-LEDディスプレイを披露し、技術力を誇示した。 30μm以下のRGBチップ 約70万個を精密転写して実現したこのパネルは326PPIの解像度を達成し、4,000ニット級のフレキシブル構造により多様なデザインの可能性を開いた。特に視野角による輝度・色変化がほとんどない無機発光構造の特性により、高輝度・低消費電力・高い信頼性を同時に確保したと評価されている。

最大の変数:アップルの入時期

Apple Watchは年間4,000万台以上が出荷される世界最大規模のスマートウォッチ プラットフォームである。UBIリサーチは2027~2028年にApple Watch Ultra シリーズでMicro-LEDの採用可能性が高いと予測している。 アップルが本格参入した場合、これはサプライチェーン投資及び大規模量産体制構築につながり、Micro-LEDを主流技術へと押し上げる決定的な契機となり得る。

市場見通しとサプライチェンへの影響

短期的には高価格と低生産能力という障壁が存在する。Garmin Fenix 8の 1,999ドルという価格はAMOLEDモデルより約700ドル高く、一般消費者よりもプレミアム市場に焦点が当てられている。

しかしTAG Heuerとサムスンディスプレイ、アップルの参入はMicro-LED サプライチェーン全体に大規模な投資と技術高度化を促すと見込まれる。この過程でチップメーカー、転写装置メーカー、駆動IC企業、後工程パッケージング・モジュール化企業などディスプレイバリューチェーン全体に波及効果が広がるものと予想される。

UBIリサーチのキム・ジュハンアナリストは、マイクロLEDスマートウォッチ市場は2030年に約12億ドル規模に成長すると予測している。これは単なるニッチ市場を超え、OLED中心の現状の構図を揺るがし、プレミアムウェアラブルの新たな標準として定着する可能性を示している。

マイクロLEDスマートウォッチはまさに第一歩を踏み出したばかりだ。ガーミンの先導的挑戦、タグ・ホイヤーの象徴的参入、サムスンディスプレイの技術競争力、アップルの潜在的影響力が相まって、市場は本格的な成長軌道に乗るだろう。

UBIリサーチは今後5年間、マイクロLEDの技術的課題解決とサプライチェーン再編の速度がウェアラブル市場の勢力図を決定づける核心要因だと強調している。

Joohan Kim, Senior Analyst at UBI Research (joohanus@ubiresearch.com)

▶2025年Micro-LED ディスプレイ産業 および技術動向 レポート

Meta unveils Ray-Ban Display LCoS smart glasses and presents PIC-based LCoS research at SID 2025

Meta、LCoSを採用したスマートグラス「Ray-Ban Display」発売…SID 2025ではPIC(photonic integrated circuit)ベースのLCoS発表

 2025年9月18日(現地17日)に開催されたMeta Connect 2025で、Metaは初のディスプレイを搭載した消費者向けスマートグラス「Meta Ray-Ban Display」を発表した。この製品は、既存のRay-Ban AIメガネと昨年発表されたOrion(Orion)ARメガネの中間段階の性格を持ち、米国市場に今月末に正式に発売される予定だ。

新型メガネの特徴は、右側のレンズ下部の単眼ディスプレイで、価格とバッテリー持続時間など現実的な要素を考慮した設計と分析される。このディスプレイはOmniVisionの単一パネルフルカラーLCoSが採用され、600×600解像度、42 PPD、単眼基準20°視野角、最大5,000ニットの明るさを実現する。Lumusのウェーブガイドと組み合わせることで、屋外でも鮮明な視覚体験を提供する。これらの仕様は、情報表示型ARデバイスの要件(20~35°FoV、高輝度、低消費電力)を満たし、特に屋外での使用環境で優れた視認性を提供します。MetaがグリーンLEDoSの代わりにLCoSを選択したのは、技術の成熟度、電力効率、フルカラーを実現する能力を考慮した戦略的な決定だ。

Meta Reality Labsは、SID 2025でフォトニック集積回路(PIC)ベースの超小型レーザーマイクロディスプレイの研究成果も発表した。この技術は、ARライトエンジンを1㎤以下に縮小できる可能性を示し、50度の視野角と高い色均一性を実証した。LCoSは成熟した技術と価格競争力という利点にもかかわらず、かさばる光学モジュールを必要とするという限界があった。PICは、光の集光、色分離、偏光制御などの核心的な光学機能をチップ上で実現することで、従来の偏光ビームスプリッター(PBS)や集光レンズ、ダイクロイックミラーなどを置き換える。PICベースのレーザー照明は、次世代ディスプレイ技術のプラットフォームとして拡張可能性が大きい。Meta Ray-Ban DisplayにPIC(Photonic Integrated Circuit)が適用されたかどうかは確認が必要だ。

LEDoSが本格的な競争力を持つ時期は2028年以降と予想され、それまではフルカラーLCoSがARガラス市場のコアソリューションとして位置づけられると思われる。OmniVisionだけでなく、Himax DisplayやAvegant、Raontechなども高輝度・高コントラストの次世代LCoSエンジン開発に拍車をかけており、短期間で競争力がさらに強化される見通しだ。

今回の発表は、メタが商用製品ではOmniVision LCoSを、研究成果ではPICベースの超小型レーザーマイクロディスプレイを同時に公開したという点で大きな意味がある。これは、次世代ARディスプレイが小型化-高効率-高品質という3つの軸を中心に急速に進化していることを示しており、AR産業生態系の成長を加速させるものと評価される。

SID 2025で発表された従来型LCoSプロジェクターとPICベースLCoSの比較図 (出典: SID 2025 Digest)

従来型LCoSとPICベースLCoS構造の比較 (出典: SID 2025 Digest)

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶ UBIリサーチのマイクロディスプレイレポート

BOE unveiled a 10.18-inch triple fold OLED panel exclusively for Huawei at IPC 2025 (Source: UBI Research)

BOE社、IPC2025で三つ折りパネルを公開…Huawei社への独占供給で市場戦略を強化

BOEがIPC 2025で展示した10.18インチ トリプルフォールドOLEDパネル (出典: UBI Research)

BOE IPC 2025で公開されたトリプルフォールドOLEDパネル (出典: UBI Research)

BOEが自社のIPC(International Partner Conference)会議2025において、10.18インチ三つ折りフォルダブルフォン用パネルを披露した。このパネルは既にHuaweiの『Mate XT Ultimate』に採用されており、9月末に発売予定の次期モデル『Mate XTs Ultimate』への採用も確定している。

今年8月初旬に中国で開催されたDIC 2025(Display Innovation China)で、BOEは三つ折りパネルを展示しなかった。業界最新のディスプレイ技術を展示する公開イベントであるDICでパネルを公開せず、代わりに自社主催のイベントであるIPC 2025で独占的に披露したBOEの判断は、戦略的な選択であると解釈できる。DICは業界全般の最新ディスプレイ技術を紹介する技術共有の場であるのに対し、IPCはBOEがグローバルパートナーと顧客を対象に自社の差別化された技術力とロードマップをアピールする場である。 したがって、自社イベントで三つ折りパネルを選択的に公開することで、BOEは独自のブランドイメージの強化と市場におけるリーダーシップの強調を図った。

BOEが展示した三つ折りパネルは解像度2,232×3,184を実現し、1~90Hzの範囲の可変リフレッシュレートに対応。構造的には、外側の折り曲げ半径R3.8mm、内側の折り曲げ半径R1.5mmを実現し、三回折り畳める設計を実現した。

信頼性試験では、常温環境下で10万回以上、低温環境下で2万回以上、高温高湿環境下で10万回以上の耐久性を確認済。 さらに同社は、機械的強度と透過率のバランスを取るため、10インチ級UTG (Ultra Thin Glass)を採用し、折り曲げ領域の端部に接着剤を配置する「Bamboo Book構造」を通じて耐久性を強化した。

BOEは今回の展示を通じて、自社のフォルダブルディスプレイ技術を実証し、VisionoxやTianmaなどの中国OLEDパネルメーカーとの差別化を図っている。特に、三つ折りパネルは、構造設計、信頼性の確保、先端材料など複合的な技術力が要求される分野であり、商業化の可能性を強調できる象徴的な事例といえる。これらの動きにより、BOEは中国のディスプレイ産業内で技術競争力を強化するだけでなく、グローバル市場でも自社の技術独立性と主導権を強固たるものとしている。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶ China Trends Report Inquiry

Meta Ray-Ban Display AI/AR Glasses at Connect 2025

Meta社が新製品を発表:MetaのRay-Ban Display AI/ARグラス、初代AIグラスを超えた進化を遂げる

Metaは2025年18日(米国時間17日)、Meta Connect 2025イベントを開催し、複数の新製品を正式に発表した。同社はスマートグラスの到来を示唆し、ディスプレイを搭載した初の消費者向けスマートメガネを今月末に米国で発売する。「Meta Ray-Ban Display(Meta Ray-Ban Display)」と名付けられたこの製品は、従来のRay-Ban AIメガネと昨年のConnectカンファレンスで公開されたMetaのOrion ARグラスの中間的な位置づけとなる。右側のレンズ下部右隅に位置する「単眼パネル」が特徴だ。コスト、装着時間などの問題で単一単眼ディスプレイを選択したとみられ、スマートフォンアプリとの連携が必要となる。

メタが発表したRay-Ban Display AI/ARスマートグラス (出典: Meta)

メタ Ray-Ban Display AI/ARスマートグラス (出典: Meta)

このグラスには、カメラ、複数のマイク、スピーカーが搭載されており、ユーザーはMeta AI音声アシスタントに写真撮影、ビデオ録画、音楽再生などを指示できる。小型ディスプレイは、通知、ターンバイターンナビゲーション、リアルタイム翻訳などの機能を提供する。コアディスプレイ部品には、LCoSシングルチップのフルカラーマイクロディスプレイを採用している。光導波路では、Lumusがライセンスを付与したAWG(Arrayed Waveguide Grating)技術を適用したことが判明している。sEMG(surface electromyography)技術をベースにした筋電図リストバンドは、消費者市場向けとしては業界初の製品となる。sEMG技術は、リストバンドに内蔵された複数の電極を介して手首部分の生体電気信号を収集した後、アルゴリズムを用いてこれらの信号を認識し、対応するジェスチャーコマンドに変換する。「高解像度ディスプレイとMetaのsEMGリストバンドを統合しつつ、Ray-Banの象徴的なデザインを維持した初のスマートグラスだ」と同社は強調する。Metaはこのリストバンドを単独では販売せず、Ray-Ban Meta Displayとセットで販売する。Metaが今回発表したARグラスとsEMGリストバンドのセット価格は799ドル。

Metaは今回のイベントで、5種類のコアハードウェア新製品を正式に発表した。これにはMeta初のARグラス1機種、ディスプレイ非搭載のAIグラス3機種、そしてsEMG技術をベースにしたsEMGリストバンド1機種が含まれる。

Meta Connect 2025で発表されたRay-Ban Display、AIグラス、ARグラス、sEMGリストバンド (出典: Meta)

Meta Connect 2025で発表された新製品ラインナップ (出典: Meta)

MetaはAIグラス市場について楽観的な見通しで市場を支配する戦略を継続している。ソーシャルメディア企業は、スマートフォンに続く次世代コア技術としてAI搭載ウェアラブルデバイスの普及をを引き続き打ち出している状況で、今後、メーカー間の競争はさらに激化するとみられる。

Namdeog Kim, Senior Analyst at UBI Research(ndkim@ubiresearch.com)

▶2025年Micro-LED ディスプレイ産業 および技術動向

BOE OLEDoS AR/VR Microdisplay at IPC 2025

BOE、北京でマイクロディスプレイ開発インフラを構築…2025年のBOE IPCで様々なAR/VR製品とロードマップを披露

BOE IPC 2025で展示された0.49インチ4496ppi OLEDoS搭載ARグラス (出典: BOE)

2025年BOE IPCで公開された0.49インチ4496ppi OLEDoS ARグラス (出典: BOE)

BOEが北京市に位置する第5世代B1 LCDラインのクリーンルームを転換し、OLEDoS(シリコンベースOLED)生産インフラを構築する。投資財源は北京B20拠点から調達し、既存の設備とインフラを活用して工程検証と歩留まりランプアップ期間を短縮することが目的である。これは単純な増設ではなく、北京中心のシリコンマイクロディスプレイの内在化を通じて早期量産体制を確保しようとする戦略と解釈される。

BOEは、2025年国際パートナー会議(IPC)および連携イベントでマイクロディスプレイのロードマップと新製品を公開した。展示は、高解像度AR/VR機器など次世代アプリケーションを狙った技術力と商用化意志を示す場であり、BOEは2,000 ppi以上の高解像度LCDとLEDoSおよびOLEDoSに研究開発と投資を集中すると明らかにした。また、北京に新しいマイクロディスプレイ生産基地を設け、外部デザインハウスに依存していたシリコン(Si)バックプレーン技術を自社開発に転換し、技術の独立性を確保する方針だ。

BOEは市場セグメント別のポートフォリオも再整備した。プレミアム市場はLEDoSとOLEDoSで対応し、中級市場は重慶拠点でVR用AMOLEDパネルを開発・生産する。普及型市場は、北京B20で2,000 ppi級LTPS-LCDマイクロディスプレイラインを稼動し、コスト競争力と数量対応力を強化する。これとは別に、オードスB6ラインではMLEDバックプレーンの転換が進行中だ。5.5世代資産を活用し、スパッタリングベースの金属-電極薄膜形成など核心工程の均一性と信頼性を高め、大面積駆動に必要な低抵抗配線と接触特性の最適化を通じて工程成熟度を高める方針だ。

BOEの今回の措置は、AR/VR市場でソニー、サムスンディスプレイなどとの競争構図に変化をもたらす要因とみられる。シリコンバックプレーン自体の開発が本格化すれば、設計変更と性能改善、電力最適化に対するフィードバックループが短くなり、製品発売のスピードが速くなると予想される。

北京を中心としたインフラの転換は、サプライチェーンの安定性とカスタマイズ対応力も強化すると観測される。北京内に設計、光学、ソフトウェア、ソリューションの能力を集積し、顧客カスタマイズ仕様への対応と製品世代切り替えのリードタイムを短縮するという構想だ。

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶ UBIリサーチのマイクロディスプレイレポート

OLED emitting material market share by nation, Korea leading overall while China rises in smartphones

OLED発光材料市場も変化…韓国が「全体優勢」の中、中国はスマートフォンで躍進

OLED発光材料市場の国別シェア変化グラフ、韓国と中国の購入比率 (出典: UBIリサーチ)

国別OLED発光材料購入シェアの推移 (出典: UBIリサーチ)

 UBIリサーチが最近発行した「第3四半期の発光材料マーケットトラッカー」によると、2025年上半期のOLED発光材料購入量で韓国パネルメーカーが中国を上回った。韓国パネルメーカーの上半期の購入量は約36.7トンで、全体の59.9%を占め、中国は24.6トンで40.1%を記録した。四半期別では、2025年第1四半期に韓国が18.6トン、中国が12.8トン、第2四半期も韓国18.1トン、中国11.8トンで韓国が安定的な優位を維持した。

OLED発光材料全体市場では韓国が先行しているが、スマートフォン用発光材料市場では別の様相を見せた。2025年に入り、中国のパネルメーカーが四半期ごとに50%を超えるシェアを記録し、上半期全体基準でも韓国を上回り始めた。これは、韓国が依然としてOLED発光材料市場全体では優位性を維持しているにもかかわらず、スマートフォンという核心的な応用先では、中国の割合が徐々に拡大していることを示している。特に、中国メーカーが内需市場を基盤に出荷量を急速に増やしているため、中長期的には韓国とのバランスが徐々に変化していく様子が感じられる。

メーカー別に見ると、OLED発光材料市場全体では、サムスンディスプレイが約40%を占めて最大規模を記録し、続いてLGディスプレイ、BOE、Tianmaの順となった。一方、スマートフォン用発光材料市場では、BOEがサムスンディスプレイの後を追ってシェアを拡大しており、Tianma、TCL CSOT、LGディスプレイがその後に続いている。このように、市場全体では韓国企業が依然として確固たる存在感を示す中、詳細市場であるスマートフォン部門では中国企業の躍進が目立った。

 UBIリサーチのノ・チャンホアナリストは、「スマートフォン用OLED発光材料市場で中国に追い抜かれたものの、OLED全体市場では、IT向けとQD-OLED、WOLEDを供給するサムスンディスプレイとLGディスプレイが依然として中国をリードしている」としながらも、「しかし、中国のパネルメーカーのスマートフォンやフォルダブルフォンの出荷量増加に加え、IT向けOLEDの出荷量まで拡大され、韓国と中国間の発光材料市場の差は急速に縮まっている」と分析した。

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶AMOLED Emitting Material Market Tracker Sample

Samsung Display unveils new automotive OLED brand DRIVE™ with digital cockpit at IAA Mobility 2025

サムスンディスプレイ、IAAモビリティ2025で車載用OLEDの新ブランド「DRIVE™」を披露

サムスンディスプレイがIAAモビリティ2025で公開したOLEDデジタルコックピットコンセプト (出典: サムスンディスプレイ)

サムスンディスプレイがIAAモビリティ2025で披露した未来車用デジタルコックピット (出典: サムスンディスプレイ)

サムスンディスプレイがドイツ・ミュンヘンで開催された世界最大のモビリティ展示会『IAAモビリティ2025』で、次世代車載用OLED技術と新しい車載用OLEDブランド『DRIVE™』を公開した。グローバルパネルメーカーの中で唯一参加したサムスンディスプレイは、今回の展示を通じて、車載用OLEDのデザインの柔軟性と差別化された画質性能を前面に打ち出し、自動車ディスプレイ市場の拡大戦略を本格化する。

同社は、運転席と助手席のすべてのタッチポイントにOLEDを適用したデジタルコックピットを公開。運転席には10.25インチのムービングクラスターOLEDが適用され、走行時には計器盤の役割を果たし、駐車時にはダッシュボードの下に隠れる革新的なデザインを実現した。助手席前には34インチの大型OLEDディスプレイを配置。14.5インチと13.8インチのOLEDパネルをマルチラミネーション技術で組み合わせ、一つの大画面または独立した2つの画面として活用可能。サムスンディスプレイの「フレックスマジックピクセル(Flex Magic Pixel)」技術により、助手席のコンテンツが運転席から見えないように遮断して走行安全性を向上させた。センターフェイシアには14.4インチのL字型フレキシブルOLEDを搭載、車両設定や空調システムの直感的な操作を可能とした。後部座席向けの9.4インチの円形OLEDと30インチのルーフトップディスプレイも公開され、車両全体カバーするOLEDソリューションを提案した。

サムスンディスプレイは、今回の展示会で初めてリジッドOLEDベースのOTS(Off-The-Shelf)ソリューションを発表した。7インチから17インチまで計7種類の標準化された製品群を用意し、顧客が希望するサイズを迅速に実装できるようにし、これにより開発コストと期間を削減すると同時に、価格競争力を確保することを目指している。 また、複数のOLEDパネルを組み合わせて一つの大型画面のように実装するマルチラミネーション技術をデモし、自動車内の大画面ディスプレイ需要への対応能力をアピールした。また、同社は「Upgrade to OLED」というテーマで、ミニLEDに比べてOLEDの利点を強調した。長方形のミニLEDクラスター、曲線で成形可能なOLEDクラスター、没入感を最大化した曲面OLEDクラスターを並べて展示し、デザインの自由度を強調した。来場者は真の黒表現、高コントラスト比、優れた屋外視認性などといった、ディスプレイの画質優位性を体験できた。これらは安全運行に不可欠な要素である。

サムスンディスプレイはまた、フランス出身のデザイナー、アルヴァン・ルハイエとの共同開発による未来の車両コンセプトデザインも公開した。ローラーブル、フォルダブル、ストレッチ可能なOLEDを採用し、V字型アウトフォールディングルーフディスプレイ、エクステンダブルCID、フレキシブルL型パネルなどを提案。OLEDの無限の拡張可能性を強調した。

今回の展示のハイライトは、新しい車載用OLEDブランド「DRIVE™」の初披露。サムスンディスプレイは5つのコア価値・・デザイン差別化、堅牢な信頼性、インテリジェントな安全性、卓越した視覚性、拡張可能性を体現している。サムスンディスプレイのイ・ジュヒョン中小型事業部長(副社長)は、「OLEDはSDV(Software Defined Vehicle)時代のデジタルプラットフォームに最適化されたディスプレイである」とし、「グローバル顧客と共にDRIVE™ブランドを通じて、車載用OLEDの差別化された価値を伝え、市場におけるリーダーシップを強化していきたい」と述べた。

サムスンディスプレイは最近、メルセデス・ベンツと2028年型マイバッハSクラス向けAMOLEDの独占供給契約を締結した。テスラやBYDなどのグローバルEV自動車メーカーとの交渉も進行中と報じられている。同社の2025年上半期における車載用OLEDの出荷量は約117万台に達する見込みで、今回のIAAモビリティ2025の展示を起点に、グローバル市場シェア拡大にさらに拍車をかける見通しだ。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

SIDTEK to build Micro-OLED production site in Nanchong with mass production set for 2027

SIDTEK社、中国・南充にMicro-OLED生産拠点を設立…2027年に本格量産へ

K-Display Business Forum 2025で発表されたSIDTEKのマイクロOLED投資ロードマップ (出典: UBI Research)

K-Display Business Forum 2025でSIDTEKが発表したマイクロOLED投資ロードマップ (出典: UBI Research)

中国のMicro-OLED専門企業であるSIDTEKは、四川省南充市に新たな生産拠点の投資を進めている。同社は、2025年末までにメイン生産棟の完成、2026年末までにはパイロット生産の開始、2027年の本格的な量産開始を目標としている。

今回のプロジェクトは、四川省政府による1億5千万元規模の投資支援に基づいて推進されている。SIDTEKは既に安徽省蕪湖(Wuhu)の8インチおよび12インチMicro-OLED生産ラインを稼働しており、今回の南充工場の追加により、製造拠点の多様化を図るとともに、拡大する世界的な需要に対応する強固な基盤を構築する。

SIDTEKは、特にAR-VRおよび次世代XRデバイス用の超高解像度OLEDoS(OLED on Silicon)ディスプレイの開発を中核事業としている。今年初頭、同社はK-Display 2025ビジネスフォーラムにおいて、OLEDoS量産ロードマップと垂直統合型製造プロセスを公開し、技術競争力を強調した。

南充新工場はSIDTEKの3番目の主要生産拠点となり、本格稼働後はMicro-OLEDのグローバルサプライチェーンにおける中国の地位を強化する転換点になると評価される。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶ China Trends Report Inquiry

Apple iPhone Fold to feature 24MP under-display camera (UDC) for full-screen design

アップル、iPhoneフォールドに2400万画素UDC搭載…技術の完成度を高める

アンダーパネルカメラ(UPC)とピクセル構造の図解 (出典: サムスンディスプレイニュースルーム)

アンダーパネルカメラ(UPC)の構造とピクセル配列 (出典: サムスンディスプレイニュースルーム)

JPモルガンのレポートによると、Appleは来年発売予定のiPhone Foldに2400万画素のアンダーディスプレイカメラ(UDC)を搭載し、ダイナミックアイランドやノッチなしで完全なオールスクリーンデザインを実現する可能性が提起された。このようなデザイン革新は、消費者の間で強い期待感を呼び起こしており、今後、高価なコストを伴うUDC技術がプレミアムスマートフォン市場でどれほど早く普及するかについての重要な指標となる見通しだ。

サムスンは2021年のGalaxy Z Fold 3で世界初のUDCを導入した後、Z Fold 6まで内部画面に400万画素級カメラを維持してきた。しかし、画質低下の問題と費用対効果不足で消費者の満足度が高くなく、中国BOEが今年5月と7月、2回にわたって米国テキサス州東部連邦裁判所にサムスンディスプレイを相手にUDC特許侵害訴訟を提起したことがある。結局、サムスンは最新のGalaxy Z Fold 7でUDCの適用を保留し、パンチホール方式を維持し、業界ではこれを法的・技術的リスクを考慮した戦略的選択と評価している。

 アップルは高透過率新素材、高画素センサー、AI基盤の画質復元技術を組み合わせ、高解像度写真撮影とタッチIDを並行して完全なオールスクリーンフォームファクターレベルを目指した。この過程で、複雑なパネル工程と歩留まり低下及びチップセットの演算資源増大などでコスト上昇は避けられないが、「完全なフルスクリーン体験」を通じて差別化を図るという構想だ。

 UDC技術はフルスクリーンを実現する核心要素で、ディスプレイの上にカメラを配置しないため、美しい外観を実現できる。しかし、光が複数のディスプレイ層を通過する際に回折、散乱、減衰が発生し、ノイズ、ぼかし、フレア、透過率低下などが発生し、これにより写真撮影の品質低下や顔認識の失敗など、現実的な問題に繋がっている。

サムスンディスプレイは、このような問題を解決するため、AI基盤の画像復元技術を利用して、ディスプレイ下部のカメラで発生するノイズ補正と顔認識精度の向上など、実使用環境での性能検証を進めており、SID 2025で関連論文を発表した。

SID 2025でTCLチャイナスターオプトエレクトロニクス(CSOT)は、4K Real RGB OLED中型パネルにカメラアンダーパネル(CUP, Camera Under Panel)技術を適用した設計技術を発表した。CUP技術は、ピクセル回路をカメラ領域の外側であるベゼル部分に再配置することで、カメラ開口率85.8%、550nm基準透過率13.8%、CUPと一般画素間の輝度均一性1:1レベルを達成した。今後は、Colorless PI基板およびCOE構造の適用を通じて透過率を22%以上まで高め、反射率を下げるための技術も並行する計画だ。

ソフトウェアとハードウェアの設計最適化を通じてUDC技術の完成度が高まるにつれて、UDC技術は折り畳み式携帯電話中心から、今後モバイルを超え、タブレットやノートパソコンなどの中型ディスプレイに拡散すると予想される。完全なフルスクリーン体験のための’見えないカメラ’の時代が近い。

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶2025年OLED部品素材レポート

Entrance of the 26th China International Optoelectronic Expo highlighting Micro LED AR showcases

中国CIOE光電子展示会、JBD社、Goeroptics社などMicroLEDを適用した新たなAR製品を公開

第26回中国国際光電子博覧会(CIOE)が2025年9月10日、中国・深セン国際コンベンションセンターで開催された。世界最大規模のこの展示会には3,800社以上の企業が出展。展示の焦点は「IC設計と応用」、「IC製造とサプライチェーン」、「化合物半導体」、半導体材料、先端プロセス、パッケージングテスト、光電子チップなどの主要分野の企業が参加した。

第26回中国国際光電博覧会(CIOE)会場入口 (出典: UBI Research)

第26回中国国際光電博覧会(CIOE)の会場風景 (出典: UBI Research)

本展示会では、JBDやGoeropticsなどからMicroLEDを用いたAR向け新製品が発表された。

JBDの0.1インチ マイクロLED光エンジン新製品 (出典: UBI Research)

JBDが展示した新製品、0.1インチ マイクロLED光エンジン (出典: UBI Research)

JBDは0.1インチMicro-LEDマイクロディスプレイやHummingbird IIカラー光エンジンなど最新製品を展示。X-Cube構造により0.2ccの超小型化と0.5gの超軽量化を実現。Goeropticsは、Micro-LEDフルカラー(X-cube)と炭化ケイ素エッチング光導波路技術を活用した製品を展示し、30°の視野角と4gの重量を実現した。

各社は三色合成、色変換、垂直積層など様々な技術でブレークスルーを達成した。軽量化設計の潮流の中で、「MicroLED+光導波路」ソリューションは比較的主流技術となっている。展示製品はMicroLED光エンジンのサイズが0.13インチから0.1インチ、さらには0.06インチへと縮小傾向にあることを示し、小型化・高輝度化に向け技術が急速に進歩していることを物語っている。

Namdeog Kim, Senior Analyst at UBI Research(ndkim@ubiresearch.com)

▶2025年Micro-LED ディスプレイ産業 および技術動向

Foldable and Rollable Cover Window Market Projection Chart 2025–2029

UTGの拡大、CPIは縮小… フォールダブル·ローラブル用のカバーウィンドウ市場、2029年までに7億ドルを突破へ

2025〜2029年 変形ディスプレイカバーウィンドウ市場予測 (出典: UBI Research)

2025〜2029年 変形ディスプレイカバーウィンドウ市場予測 (出典: UBI Research)

UBIリサーチが最近発行した『2025年OLED部品素材レポート』によると、フォルダブル·ローラブルOLED用のカバーウィンドウ市場が2029年までに7億ドル市場を突破すると予想されている。

同レポートでは、OLED部品・素材市全体が2025年の約172億ドル規模から年平均成長率(CAGR)4%で推移し、2029年までに約202億ドルに達すると予測。このうち、モバイル機器用部品・素材市場は同期間162億ドルから187億ドルに成長し、市場全体をけん引し続ける見込み。一方、TV用OLED部品・材料市場は年平均10.5%で成長し、2029年には15億ドル規模に達すると予想されている。

これらのセグメントの中でも、フォルダブル及びローラブル機器に適用されるカバーウィンドウ市場の成長が特に顕著である。当該市場は使用量基準で2025年約3,030万個から2029年約7,070万個に拡大すると見込まれている。収益ベースでは、同期間、市場規模は約3億2,000万ドルから7億2,600万ドル規模まで成長すると予想される。特に、これらの機器用カバーウィンドウにはUTG(Ultra Thin Glass)とCPI(Color-less PI)が主流であり、UTGの需要は徐々に拡大する一方で、CPIは徐々に縮小の傾向にある。

UBIリサーチのノ・チャンホアナリストは次のように述べた:「Apple社のフォルダブルフォン発売が目前に迫る中、フォルダブルフォン市場が急速に拡大している。Slidable、Rollable、Tri-Foldなど新しいフォームファクターが続々と登場しており、これらがフォルダブル及びローラブルデバイス用の部品・素材市場の成長を更に加速させるだろう。」

UBIリサーチは、今回のレポートがOLED部品・素材産業の超高機能化、スリム化、フォームファクターの多様化、内部化、新製造プロセスというキーワードを中心に、今後のグローバルディスプレイ産業の戦略を形作る上で極めて重要な資料になると強調した。

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶2025年OLED部品素材レポート

OLED Components and Materials Market Forecast 2025–2029

OLED部品・素材市場、2029年202億ドル規模に成長する見通し

LED主要20部品・材料市場予測グラフ (出典: UBI Research)

OLED主要20部品・材料市場予測 (出典: UBI Research)

 UBIリサーチは「2025 OLED部品・素材レポート」を発刊した。本レポートは、スマートフォン、折りたたみ式スマートフォン、タブレット、ノートパソコン、テレビ、車載ディスプレイなどへ拡大するOLED需要に対応し、核心部品・素材技術と市場を総合的に分析したものである。

本報告書は、2025年から2029年までのOLED出荷量及び20種類の主要部品・素材(基板、TFT、封止材、タッチセンサー、偏光板、接着剤、カバーウィンドウ、ドライバーIC&COF、複合シート、プロセス用フィルムなど)の市場規模と使用量を体系的に予測した。また、MLA、COE、LTPO、酸化物TFT、超薄型ガラス、TFEなど現在商用化された技術から、次世代XR・ARおよびストレッチ可能なデバイスに対応する次世代素材・超高機能ディスプレイ素材まで、進化するロードマップを提示した。

報告書によると、2025年のOLED部品・素材市場は約172億ドル規模と予想され、年平均4%成長し2029年には約202億ドル規模に達する見込みである。特にモバイル機器用部品・素材市場は2025年162億ドルから2029年187億ドル規模へ成長し、全体市場を牽引すると見られた。TV用OLED部品・素材市場は年平均10.5%成長し、2029年には15億ドル規模に達すると分析された。

特に本報告書では、OLEDパネル構造をはじめ、折りたたみ式・巻き取り式デバイス用部品素材、COE(Color Filter on Encapsulation)とUTG(Ultra-Thin Glass)、内外装ヒンジ(CFRP、金属板、GMF)、保護フィルム、Shear Thickening Fluid(STF)、光効率向上素材(Micro Lens Array)、 封止技術、QDおよび酸化物TFT、接着・放熱材料、基板およびメタルマスクなど、OLED部品材料の主要な開発状況を詳細に分析した。

本報告書は、OLED部品・材料産業における「超高機能化、スリム化、フォームファクターの多様化、内製化、新プロセス」というキーワードを中心に、グローバルパネルおよびセットメーカーの投資方向とサプライチェーン戦略を理解する上で重要な資料となる見込みである。

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶ 2025 OLED部品・素材レポート

Automotive Mini LED display adoption expanding with OLED competition

車載用ディスプレイにMini LEDを適用、車載用ディスプレイ領域を拡大

車載用ディスプレイ市場は近年急速に変化しており、その変革の中心にはMini LED技術がある。一部のプレミアムブランドがデザインの自由度と黒の表現力を武器にOLEDを採用しているが、全体的なトレンドは価格競争力、耐久性、高輝度が強みであるMini LEDに傾いている。自動車環境は直射日光の下でも視認性を確保しなければならず、長時間の使用や高温条件での安定性が不可欠であるが、Mini LEDの長寿命と高い信頼性はメーカーが量産モデルに適用するのに適している。

車載ディスプレイ出荷予測技術別 – Mini LEDとOLEDの比較 (出典: UBI Research)

車載ディスプレイ技術別出荷予測グラフ (出典: UBI Research)

UBIリサーチが今年発表した「車載用ディスプレイ技術と業界動向分析レポート」によると、車載用Mini LEDディスプレイの出荷量は、2023年の約150万台から2030年には1,600万台以上に急成長すると見込まれている。同期間において、OLEDは安定的な成長を続け、特にプレミアムブランドを中心に差別化された価値を提供すると予想される。これは、OLEDがプレミアムブランド差別化・ハイエンドイメージ用として定着する一方、Mini LEDは安定性とコスト効率を武器に中上位級以上の大量モデルまで普及していくことを示している。

Mini LED技術を搭載した車両用ディスプレイモデル一覧 (出典: UBI Research)

車両別Mini LEDディスプレイ適用事例 (出典: UBI Research)

例えば、実際の事例として、キャデラックは2022年の電気SUV「Lyriq」に33インチのMini LEDを搭載し、リンカーンは2023年の新型ナビゲーターに48インチパノラマ構造(23.6インチデュアル4K UHD Mini LED)を採用した。2024年、Xiami SU7は16.1インチMini LED CIDを導入し、2026年発売予定のソニーとホンダの合弁会社Afeelaは45インチパノラマと55インチの補助ディスプレイを搭載。次世代電気自動車インテリアの方向性を示唆している。

UBIリサーチのハン・ハンウク副社長は、「車載用ディスプレイ市場では、Mini LEDとOLEDが一部領域で競争を続ける一方、Mini LEDは一般消費者向けへの応用を拡大し、OLEDはプレミアムセグメントで差別化された価値を維持するだろう」と述べた。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

TCL CSOT announces 8th generation inkjet OLED investment plan at K-Display 2025, highlighting Panasonic printing equipment

TCL CSOT、8世代OLEDインクジェット生産ラインへの投資を発表予定_インクジェット印刷設備はパナソニック製設備の予想

TCL CSOTがK-Display 2025で発表した第8世代インクジェットOLED技術と最新成果

K-Display 2025におけるTCL CSOTの最新インクジェットOLED技術発表 (出典: TCL CSOT)

8月6日から9日に開催されたK-Display 2025のビジネスフォーラムで、中国のTCL CSOT(华星光电)は、第8世代インクジェットOLED生産ラインへの投資計画を発表する予定であることを明らかにした。このプロジェクトは「T8プロジェクト」と呼ばれ、2026年9月の設備搬入を目指し、2027年6月から試作を開始する計画である。初期生産能力は1段階として月1万5千枚規模になると予想される。この投資は、大型OLEDパネル市場で韓国企業の独占的な地位に挑戦する重要な動きと評価される。

 TCL CSOTが採用したインクジェット 印刷方式は、現在、大型OLED 生産に主に使用されている真空蒸着(Vacuum Deposition)方式に比べ、様々な利点がある。

  • コストとエネルギー効率: 低真空環境でプロセスを完了することができ、装置コストとエネルギー消費を大幅に削減することができる。
  • 材料の活用性: 有機材料を直接基板に「印刷」する方式であるため、材料の無駄が少なく、材料の利用率が高い。
  • 大型基板の生産効率:65インチ、77インチのような大型TVパネルの生産に特に経済的である。

インクジェットOLEDの主な技術的課題の1つは、青色OLEDの寿命でしたが、TCL CSOTはこの問題を大幅に改善した。同社は、2020年に40時間だった青色寿命が、現在400時間になり、10倍向上したと発表した。さらに、解像度は350 PPIを突破し、高性能タブレットやノートブックの需要を満たすことができ、開口率は従来のFMM(Fine Metal Mask)OLEDの3倍となり、消費電力を削減した。 また、青色サブピクセルのサイズが赤色や緑色と同様に小さくなり、ディスプレイ品質を向上させた。

一方、第8世代OLEDインクジェットラインに導入される印刷装置は、Panasonic Production Engineering社の製品が有力視されている。Panasonic Production Engineeringは、SID 2025で1pL レベルの インクジェットヘッドと 350ppi 解像度の 8. 5世代装置を開発したと発表した。この装置は、5.8µmの目標精度を上回る4.6µmの精度を達成し、大型基板の安定した量産可能性を実証した。 予想される装置構成は、Hole Injection Layer、Hole Transport Layerおよび RGB画素印刷のための印刷装置 とタンデムOLED用装置で構成されるものと思われる。 パナソニック社の機器は、インクジェット工程の生産性向上のための核心技術である高周波噴射(20kHz)と1.0pLの微細な液滴量制御により、高解像度ディスプレイの生産を可能にする。 また、熱変形や微細位置合わせ誤差を補正する精巧なシステムにより、生産の安定性を高めたと報告した。

インクジェットOLED技術は、まだ越えなければならない課題が多く残っている。現在の技術は素子寿命の改善を達成したが、商用化に必要な十分な寿命を確保したかどうかについては議論が続いている。また、高輝度と低消費電力のためのタンデム構造の実現が難しいという限界も指摘されている。これらの課題は生産ラインの歩留まりに直結する問題であり、インクジェット方式の量産を成功させるためには継続的な技術開発が必要である。それにもかかわらず、TCL CSOTの技術進歩は、インクジェットOLEDが現実に近づいていることを示している。

TCL CSOTの第8世代インクジェットOLEDへの投資が実現すれば、韓国のサムスンディスプレイとLGディスプレイが主導する中・大型OLED市場への直接的な挑戦となる。現在、両社は高コストの真空蒸着プロセスに依存しているため、OLEDテレビの価格が高い。インクジェット方式の量産は、OLED TVの価格を大幅に下げ、市場浸透率を高めるコスト競争力をもたらす可能性がある。さらに、この技術はテレビ市場だけでなく、ノートパソコン、タブレット、業務用モニター市場にも影響を与えると予想される。インクジェット技術は、中国のディスプレイ産業がLCDに続き、OLED分野でも技術リーダーシップを確保するための重要な足掛かりとなる可能性がある。

Changho Noh, Senior Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶ China Trends Report Inquiry

SIDTEK presenting the current status and challenges of China OLEDoS industry at K-Display 2025

SIDTEK、K-Display 2025で OLEDoSの量産と製造工程の垂直統合戦略公開

SIDTEKがK-Display 2025で中国OLEDoS産業の現状と課題を発表する様子

SIDTEK、K-Display 2025で中国OLEDoS産業の現状と課題を発表 (出典: SIDTEK)

去る8月6日から9日の間に開催されたK-Display 2025のビジネスフォーラムで、中国のSIDTEKはOLEDoSの量産状況と今後の拡大戦略を公開した。SIDTEKは、中国武湖拠点の量産稼働の事実と一緒に追加工場の起工を終え、第3の拠点も準備中であると明らかにした。OLEDoS量産工場建設のための地方政府の積極的な誘致競争の中で、中国の事業進行は「契約」発表より「着工と装備搬入」を基準にすべきだという立場を明らかにし、SIDTEKは多拠点運営で生産基盤を迅速に拡大する計画である。

中国エコシステムの拡大速度も加速している。SIDTEKはBOEとSEEYAとともに「3社同時量産」の構図が形成されたと説明した。セット企業であるGoertekもVR原価の核心であるディスプレイを直接制御するため、蒸着工程投資の可能性を検討しているという。このような動きが組み合わされる場合、中期的には12インチ基準で月数万枚規模の生産能力シナリオも可能だという見通しが出る。規模の力で原価を下げ、 開発能力を上げようという戦略である。

発表者は”OLEDoSは良い技術なのに、なぜ周りに 購入者がいないのか”という疑問を提示した。大規模な設備投資は結局、「携帯電話のように売れるか」という生産量基準で判断しなければならないとし、製造業の観点から需要検証と収益性の確保が優先であるという現実主義を強調した。

生産価格を左右する低収量の核心的な解決策として、「バックプレーン半導体のインハウス設計」が提示された。Micro-OLEDの歩留まり低下要因が技術難易度だけでなく、バックプレーン(半導体)とパネルが分離された構造で発生する不良の責任所在の不明確と改善の遅れにあると診断した。SIDTEKは「半導体を内部に引き込み、欠陥分析・改善の閉ループを回さなければならない」と強調した。中国ではSEEYAがウェハー段階まで投資して統合最適化を推進し、BOEも既存のライン余力を活用した本格的な参入を準備するなど、垂直統合が業界全般に広がっている。

製品と市場戦略は短期的に「軽量AR」に焦点を当てた。 発表者 は「メガネでフルスクリーンを常時視聴する」シナリオには懐疑的で、ナビゲーションや通知など簡単な情報を自然に表示する用途のARが先に普及すると予想した。これにより、超高解像度競争よりも消費電力と視認性及び均一性中心のBPIC(バックプレーンチップ)及び光学の最適化が当面の課題として提示された。現実的な価格帯と使いやすさのバランスが初期普及の鍵であるという説明である。

ディスプレイ技術軸に対する判断も共有された。VRでは、ファストLCD、ガラスベースOLED、OLEDoSが競合中で、サイズ拡張性と光学簡素化の利点があるガラスベースOLEDが低価格と普及型領域で浮上し、ハイエンドではOLEDoSが役割を分担する可能性が大きいという分析である。ARではLCoSとOLEDoSおよびLEDoSが共存するが、超高解像度が必須でなければLEDoSへの転換の可能性もあり、OLEDoSのポジションの変動性に留意する必要があるという見解が示された。

現場討論では、「軽量化と利便性が確保されれば、VR機器が普及する可能性がある」とし、AIベースの画像処理とインタラクションの組み合わせが促進剤を提供するだろうという展望が示された。

SIDTEKの今回の発表は、「実際に量産する工場」と「収益性の確保」を軸とした現実主義戦略を再確認させた。多拠点量産で信頼を築き、バックプレーン半導体のインハウス設計で生産歩留まりと不良改善のための学習スピードを上げ、短期的な需要が集まる軽量のAR分野に合わせた設計とプロセスの最適化で市場を開く計画である。 中国内の需要の不確実性にもかかわらず、政府主導の投資と企業間の垂直統合が相まって「規模のゲーム」が本格化する中、SIDTEKは実行力中心の保守的な拡張基調で対応に乗り出した様子である。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶ UBIリサーチのマイクロディスプレイレポート

Micro-LED市場、2030年13億ドル規模に成長する見込み

UBIリサーチは、Micro-LED市場が2030年に13.42億ドル規模に成長し、年間テレビ生産能力が5万台から600万台に拡大すると予測

UBIリサーチは、Micro-LED市場が2030年までに約13.42億ドルに成長し、プレミアムテレビ市場の構図を変えると見込んでいる。出典:UBIリサーチ

– 年間TV生産キャパ5万台→600万台、プレミアムTV市場におけるゲームチェンジを加速

UBIリサーチが最近発刊した「2025年Micro-LED ディスプレイ産業 および技術動向」によると、次世代ディスプレイ市場で「ゲームチェンジャー」として注目されているMicro-LEDが本格的な成長軌道に乗り出している。グローバルMicro-LED TVの生産キャパは2023年の年間5万台水準から2030年には約600万台に拡大し、Micro-LED市場規模は約13億ドル(US$ 1.342 billion)に達すると予想される。

Micro-LEDは、OLEDに比べて高輝度、長寿命、優れた耐久性を備えた自発光フラットパネルディスプレイ技術で、プレミアムテレビと次世代ウェアラブル機器市場で次世代候補として浮上した。特に、バーンイン(burn-in)の心配がなく、色再現力と視認性に優れているため、大型ディスプレイから超小型AR-VR機器まで適用範囲が広い。

UBIリサーチは、生産効率の向上と製造コスト削減が相まって、2027年以降、本格的な商用化が始まり、2028年以降は年平均50%以上の高成長が続くと分析している。

市場拡大を牽引する主な要因は以下の通りだ。

  • プレミアムテレビ需要の増加:超大型・高解像度製品に対する消費者の嗜好の拡大
  • 生産インフラの拡充:主要メーカーの大規模な量産ライン投資と工程改善
  • 応用分野の多様化:TVのほか、透明ディスプレイ、スマートグラス、ウェアラブル機器など新規市場への進出
  • 価格競争力の強化: 量産の安定化とコスト削減により、消費者接近性の拡大

UBIリサーチの キム・ジュハン アナリストは「Micro-LED普及の鍵は、epiウェーハの安定供給」と指摘した。彼は「2026年以降、大規模なMOCVD発注が続くと予想され、2030年までにウェーハ生産量は現在の10倍水準に拡大される見通し」とし、「このような素材供給の安定化は、Micro-LEDの大量生産体制を支え、価格競争力の強化と市場拡大を加速させるだろう」と付け加えた。

また、 キム・ジュハン アナリストは 「2030年までにMicro-LED TV市場は、プレミアムTV 市場の競争構図を変化させるだけでなく、前方産業全般の収益構造にも影響を与えるだろう」とし、 「特に、バリューチェーン全般で新たな成長機会が創出されるだろう」と展望した。

より具体的な市場展望と産業別波及効果は、9月5日に開催される「2026年準備のためのディスプレイ戦略セミナー」で公開される予定だ。

Joohan Kim, Senior Analys at UBI Research (joohanus@ubiresearch.com)

▶2025年Micro-LED ディスプレイ産業 および技術動向 レポート

サムスンディスプレイ、K-Display 2025でプレミアムウォッチ用Micro-LEDで 注目されている。

サムスンディスプレイがK-Display 2025で公開した6,000ニット級Micro-LEDスマートウォッチディスプレイ

サムスンディスプレイ、K-Display 2025でMicro-LEDスマートウォッチを公開, 出典:サムスンディスプレイ

サムスンディスプレイ、K-Display 2025で披露されたフレキシブルMicro-LEDディスプレイ

サムスンディスプレイ、フレキシブルMicro-LEDディスプレイを公開, 出典:サムスンディスプレイ

サムスンディスプレイがK-Display 2025展示会で、 次世代 スマートウォッチ 市場の常識を変える革新的な製品を公開した。 今回発表した6,000ニット級の 腕時計型  Micro-LEDディスプレイは、 これまで 発表された 腕時計型 ディスプレイの中で 最高レベルの明るさを誇る。解像度は326PPIで、30マイクロメートル(μm)以下のサイズの赤・緑・青(RGB)LEDチップ約70万個を精密転写して実現した。自由に曲げることができる4,000ニット級のフレキシブル構造を採用したMicro-LEDディスプレイも 披露し、多様なデザインの可能性を提示した。特に、画面を曲げても視野角による輝度と色の変化が全くなく、 高輝度 ・ 低消費電力 ・ 高信頼性を 同時に 備えた 無機発光 構造で、次世代ウェアラブルディスプレイの競争力を大きく引き上げたという評価だ。

サムスンディスプレイは 今回の 展示を 通じて、 フレキシブルデザインとMicro-LEDの 融合が持つ市場の可能性を一緒に提示しました。Flexibleディスプレイは、単純な曲面実装を超え、折りたたみ(Foldable)、巻き(Rollable)、伸縮(Stretchable)など多様なフォームファクターの設計を可能にし、スマートフォン、タブレット、ウェアラブル機器だけでなく、自動車や航空機のディスプレイなどに適用範囲を広げることができる。ガラスの代わりに薄くて軽いプラスチック基板を使用して厚みと重量を減らし、落下衝撃にも強い耐久性を確保した点も強みだ。

このような特性は、オンスセルタッチ、アンダーパネルカメラなどの部品統合設計にも有利で、生産効率とコスト削減効果を提供し、プレミアム製品市場でデザインの差別化とブランドイメージを強化する戦略的資産となる。サムスンディスプレイが今回発表したフレキシブルMicro-LEDディスプレイは、フレキシブルOLEDディスプレイのこの ような技術的・市場的価値を継承し、今後のウェアラブルディスプレイ市場で技術的優位性とプレミアムイメージを同時に牽引する核心動力として注目されている。

Joohan Kim, Senior Analys at UBI Research (joohanus@ubiresearch.com)

▶2025年Micro-LED ディスプレイ産業 および技術動向

サムスンディスプレイ、K-Display 2025で’Era of Smarter’宣言…AIでディスプレイのパラダイム転換加速

K-Display 2025で発表されたサムスンディスプレイの「Era of Smarter」とAIによるディスプレイパラダイム転換のコンセプト図

Display paradigm shift with AI, 出典:サムスンディスプレイ

先週8月6日から9日にかけて開催されたK-Display 2025のビジネスフォーラムで、サムスンディスプレイのチョ・ソンチャン副社長は「Display paradigm shift with AI」をテーマに、ディスプレイ産業がCRT-LCD-OLEDの技術進化を経て「BiggerからBetter、そして 次の段階である’Era of Smarter’に移行している」と発表した。チョ・ソンチャン副社長は、AIが素材設計からパネル構造、駆動・表示、そしてユーザーエクスペリエンスに至る全領域を加速させる核心的な原動力であることを強調した。  

趙副社長は、スマートフォン・タブレット・スマートモニターにつながった使用行動の変化と通信・クラウド基盤の高度化を背景に、”小さくして大きく見る”というトレンドが広がり、ディスプレイが次世代の人間-機械インターフェース(HMI)の中心に再定義されていると説明した。彼は、OLEDがコントラスト・応答・色再現など体感画質で大きな進歩を遂げ、今はインテリジェント最適化で電力・熱・光学・アルゴリズムを同時に改善する段階に跳躍しなければならないと明らかにした。  

特に、AI分野では3つの軸を明確に提示した。第一に、AI-designed OLED materialsで材料探索と特性予測を高度化し、寿命・効率・色純度などの核心指標をより迅速に改善する。第二に、パネル構造の最適化において、AIベースの設計・シミュレーションを通じて、光抽出・封止・カラー変換などの多変数トレードオフを短縮する。第三に、「AI on Display」では、使用コンテキストを認識し、健康(health)、セキュリティ(security)、節電(power saving)機能を動的に駆動する戦略を強調した。

電力の最適化とユーザー体感品質も重要なメッセージだった。同社は、オフピクセル比(OPR)制御と画面領域別周波数の最適化で不必要な消費電力を削減し、偏光損失の最小化など、光学損失を構造的に低減するアプローチを紹介した。同時に、同じ輝度でもコントラストと色の最適化が可読性と疲労度を左右するという「認知的画質」の観点に基づき、コントラスト・色精度・均一度を総合的に改善し、体感的な鮮明さを向上させると述べた。 

XR時代に向けたロードマップでも方向性を明らかにした。軽量光学(パンケーキなど)と結合可能な高密度・高輝度OLEDoSマイクロディスプレイ、超低遅延駆動、視野角・均一度の改善を通じて長時間の着用環境での疲労度を下げ、視線・ジェスチャー・音声などのマルチモーダル入力をオンデバイスAIで処理する実使用シナリオを提示した。これは、端末のバッテリー制約を前提に、電力・熱・光学・アルゴリズムを統合最適化する「スマートディスプレイ」の方向性と合致する。 健康・セキュリティ・節電中心の「AI on Display」の方向性も具体的に紹介された。健康面では、有機フォトダイオード(OPD)ベースのバイオ信号認識と目の疲れを軽減するための適応型明暗/色温度調節を、セキュリティ面では視線・存在感知ベースのスマートプライバシー表示と危険状況認識を、節電面ではコンテンツ・環境・ユーザーの状態を反映した動的駆動でバッテリー効率を最大化する戦略を提示した。 

エコ・安全(ESG)にも強い意志を示した。シリコン酸化物基盤の多層構造に使用されてきた有毒ガス・化学物質をより安全な物質に置き換え、PFASなど機能は優秀だが、環境負荷が大きい物質を段階的に除去・代替するロードマップを推進している。大型化・高集積化・ウェアラブルの普及過程でも、環境・安全基準を高める転換を並行して行う計画だ。 

展示ブースでは、このようなビジョンを具体化する展示物を披露した。XRのためのマイクロディスプレイエンジン/モジュールと軽量光学対応リファレンス、そして視線ベースのフォーカシング・可変解像度/明るさ駆動など「AI on Display」コンセプトのインタラクションデモを通じて、パネル・光学・アルゴリズムの統合最適化能力を強調した。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書 

[DIC EXPO 2025] EDO社、OLED技術力でグローバル市場拡大を視野に

中国・上海で開かれたDIC EXPO 2025において、中国を代表するAMOLED専門企業であるEverDisplay Optronics(EDO)が大規模なブースを設け、自社のOLED製品ポートフォリオを大々的に披露した。EDOは海外の主要ディスプレイ展示会に参加することが比較的少ない企業だが、今回のDIC EXPOでは最新の製品と技術力を前面に打ち出し、市場拡大の強い決意を示した。

2012年に設立されたEDOは、中国において比較的早い段階でAMOLEDの量産に成功したリーディングカンパニーの一つである。現在、rigid とflexible OLEDの両方を生産しており、最近では折り畳み式OLED、車載用OLEDなど、高付加価値市場への進出を広げている。特に、中・大型AMOLED(タブレット・ノートパソコンなど)分野において中国国内で首位を占め、タブレットとノートパソコンのディスプレイ市場で圧倒的な存在感を示している。

2024年、EDOのOLEDパネル出荷量は4,260万枚、売上高は4億6,230万ドルを記録し、中国OLEDパネルメーカーの中で5位にランクインした。この成果の要因は、戦略的なパートナーシップにあり、HONORやHuaweiなどの主要顧客へのタブレットパネル供給や、グローバルPCブランドであるAcerに14インチ2.8Kおよび1.9K OLEDパネルを提供するなどが挙げられる。

EDOは上海にG4.5世代とG6世代の両方のラインを保有している。G4.5ラインは主にウェアラブルとスマートフォン用のパネルを生産し、G6ラインはタブレット、ノートパソコン、自動車、モニター、航空機向けの大型パネルを生産している。月間生産能力は30K基板に達する。航空分野では、Panasonicを通じて15.6インチ、21.6インチ、27インチのAMOLEDパネルをグローバル航空会社に供給しており、車載用OLEDは吉利自動車(Geely)などに対し13インチおよび15.1インチのTandem OLEDを供給している。

DIC EXPO 2025で展示されたEDOの11.3インチLTPO OLEDタブレットディスプレイ

11.3-inch LTPO OLED, 出典:EDO

DIC EXPO 2025で展示されたEDOの14.2インチハイブリッド・タンデムOLEDタブレットディスプレイ

14.2-inch Hybrid, Tandem OLED, 出典:EDO

今回の展示では、Hybrid OLEDとTandem OLED技術を適用したタブレット製品が来場者の注目を集めた。EDOは2024年に中国で初めてHybrid OLEDとTandem OLEDを適用したタブレットを量産した経緯があり、27インチ4K AMOLEDモニターパネルの量産にも成功した。低消費電力を実現するためのLTPO TFT技術も時計、タブレットに幅広く適用し、エネルギー効率を高めている。

21.6-inch, 27-inch OLED Monitors

DIC EXPO 2025で展示されたEDOの21.6インチと27インチOLEDモニターパネル

EDOの関係者は、「DIC EXPOは中国内のディスプレイ産業の革新を共有する重要な場であり、当社の技術力と製品力を集中的に知らせる機会」とし、「今後、中・大型OLED市場だけでなく、車両、航空、産業用ディスプレイ分野でもグローバル市場シェアを拡大していく」と述べた。

今回の展示を通じ、EDOは単純なパネルメーカーを超え、多様な応用分野で競争力を備えた総合OLEDソリューションサプライヤーとしての地位を改めて確認した。中国国内で培ってきた強固な顧客ネットワークと蓄積された量産経験を基に、今後のグローバル市場での行方が注目される。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書 

Visionox社、DIC 2025でViP(Visionox intelligent Pixelization)製品を発表…小型ディスプレイの歩留まり90%以上を達成

DIC 2025で公開されたVisionoxのViP蒸着方式による円形OLEDスマートウォッチパネル

Visionox社が公開したViP蒸着方式が適用されたスマートウォッチ用OLEDパネル

中国のディスプレイ専門企業Visionox社が2025年8月に開かれたDIC 2025(Display Innovation China)展示会でViP(Visionox intelligent Pixelization)方式で生産された製品を公開した。ViPは、超高解像度の実現と素子寿命の向上、高輝度など多方面の性能向上が可能なVisionoxの次世代コア技術である。

ViP蒸着方式で製造されたパネルは、最大1700ppiの解像度、69%の開口率、従来比6倍のデバイス寿命、輝度4倍向上を実現し、AR/VR用マイクロディスプレイからスマートフォン、車載用ディスプレイ、大型TVパネルまで幅広い応用が可能だと明らかにした。

Visionoxの関係者は、「V3ラインで試験生産しているViP蒸着方式のパネルのうち、スマートウォッチのような小型ディスプレイパネルの場合、約90%以上の歩留まりを確保している。 また、スマートフォンのような中型ディスプレイパネルの歩留まりも約60%水準まで引き上げられた」と述べた。

ただし、ViP蒸着方式は8.6世代の中・大型OLED生産ラインに適用されるため、基板サイズが大きくなるにつれて歩留まり確保に対する技術的難易度が高くなることは避けられず、したがって今後も歩留まりの安定化を継続的に見守る必要がある。

ViP蒸着方式は、規則的・不規則なパネル構造の両方に適合し、最小ロット制限が低く、pol-less/透明ディスプレイ技術とも互換性がある。そのため、多品目・少量ロット生産やカスタマイズ市場に適しているとされている。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶ China Trends Report Inquiry

サンアンオプトエレクトロニクス、オランダのルミレスを2億3,900万ドルで買収

自動車用LED3位メーカー買収でグローバル自動車・マイクロLED市場攻略を加速

中国最大のLEDエピタキシャルウェーハおよびチップメーカーであるSan’an Optoelectronicsは、オランダのLED専門企業であるLumiledsを2億3,900万ドルの現金で買収すると発表した。

LumiledsはもともとPhilipsとAgilentの合弁会社として設立され、自動車照明と建築用照明の分野で世界的なLEDソリューションサプライヤーとして成長してきました。現在、自動車用LED市場で世界3位(1位ams OSRAM、2位Nichia)を占めており、2024年の売上高は約6億ドルを記録した。

マイクロLED分野でも、ルミレスは積極的な技術開発を進めている。2024年にはXDCと協力し、13× 20 μm LEDチップ基盤の140PPI micro-IC駆動マイクロLEDディスプレイを実証し、商用化の可能性を実証した。

サンアンオプトエレクトロニクスは中国のLEDウェーハ生産量の約60%を占め、年間2,400万枚以上のウェーハを生産している。マイクロLED分野では、サムスン、TCL CSOTなどのグローバルディスプレイメーカーと協力しており、2019年には中国湖北省に18億ドル規模のMini-LEDおよびMicro-LED生産センター建設計画を発表した。2025年には月1,400枚規模の6インチマイクロLEDウェーハ生産能力を確保した。

今回の買収は、山安の自動車用LED市場シェア拡大とマイクロLED技術ポートフォリオの強化という2つの戦略的目標の達成に貢献する見通しだ。中国は車両用Micro-LEDから’チップ→ 、モジュール→ 、完成車への適用’まで一貫体制を整えることになる。特に、ルミレッズの高信頼性自動車照明技術とマイクロLED素子設計能力が結合されれば、車両ディスプレイ、AR HUD、スマート照明など次世代応用市場での競争力が大幅に強化されることが期待される。もしSan’anがLumiledsのグローバルOEMネットワークをそのまま維持すれば、ヨーロッパ・アメリカの高級車市場への参入速度も非常に速くなる可能性がある。

その理由を段階的に見ると以下の通りである。

1.買収前-買収後のSan’anのバリューチェーンの変化

2.車載用Micro-LED分野での意義

  • Lumiledsの強み
    • AEC-Q100/102/104など自動車用信頼性認証経験
    • ヘッドランプ、DRL、HUD用LEDモジュール設計能力
    • グローバル完成車との供給契約・ネットワーク保有
  • San’anの強み
    • Micro-LED用RGBチップの大量生産能力
    • コスト競争力 +  政府の支援(中国LED自立戦略)

相乗効果:San’anがチップを生産 OEM納品まで一社内で可能 →  完全な垂直系列化

3.中国の自動車用Micro-LED戦略に及ぼす影響

  1. 技術の内在化
    • Lumiledsの車両規格対応・光学設計技術を吸収し、中国国内で独自の車載用Micro-LEDモジュールを開発可能。
  2. サプライチェーンの自給自足
    • チップからモジュール、認証まで全て中国内で処理可能 →  海外依存度を低減。
  3. コスト・スピード競争力
    • 認証・量産転換期間の短縮 →  グローバルOEMとの交渉力強化。
  4. 競争圧力
    • AUO、PlayNitride、JBDなど台湾・韓国・米国企業にコスト・供給速度の面で圧迫可能。

4.今後3~5年のシナリオ

時期 変化予想
2025~2026年 Lumiledsの統合及び生産・認証ラインの中国化、初期車載用Micro-LEDモジュールの実演
2027年 中国完成車(Geely、BYDなど)のHUD・透明ディスプレイ・照明にMicro-LEDモジュールを本格適用
2028年以降 海外OEM供給拡大、グローバル車両用Micro-LED市場シェアを中国中心構造に再編可能

Joohan Kim, Analyst at UBI Research (joohanus@ubiresearch.com)

▶UBI Research’s Micro Display Report

センサーOLEDディスプレイ: スマートフォンがヘルスケアプラットフォームに進化

SID 2025で発表されたサムスンディスプレイのセンサーOLEDによる心血管ヘルスモニター技術の概念図

サムスンディスプレイはSID 2025で、1枚のOLEDディスプレイで生体認証と心血管データの測定を両立するセンサーOLED技術を発表した。 出典:サムスンディスプレイ、SID 2025 論文(Paper 80-1)

ディスプレイ技術が再び進化している。単に映像を出力する装置を超えて、生体信号を検知・分析し、ユーザーの健康状態まで診断できる段階に達している。サムスンディスプレイがSID 2025で発表した論文「Sensor OLED Display-Based Mobile Cardiovascular Health Monitor」(SID 2025 Digest, Paper 80-1)は、この変化を象徴する代表的な事例だ。この論文では、OLEDディスプレイに有機光ダイオード(OPD)を高解像度でピクセルレベルまで集積した「センサーOLED(Sensor OLED)」技術を紹介し、これにより、スマートフォンが心血管疾患モニターとデジタル治療プラットフォームに進化できる可能性を実証した。

従来は、生体データを測定するために別途のウェアラブル機器や独立型センサーを活用する必要があったが、センサーOLEDは、ディスプレイ自体が高解像度画像検出と光容積脈波(photoplethysmography、PPG)信号を同時に収集できるように設計されており、スマートフォンのディスプレイに指を置くだけの簡単な動作で様々な生体信号を迅速かつ正確に測定することができる。論文では、これにより左右の指のPPG信号を同時に測定し、脈波波形の特徴値を比較して90%の精度で心血管疾患を選別することができると明らかにした。この方式は、医療機関で使用するドップラーや血圧計と同様のレベルの精度を確保しながら、病院訪問や装備を着用せずに簡単に活用できるという点で高い利便性を提供する。

論文は特にカフレス(cuffless )血圧測定アルゴリズムに注目し、一つの指から得たPPG信号を活用するシングルポイント方式と、両手の指の信号を一緒に分析するダブルポイント方式を比較し、精度と安定性を同時に確保できることを実証した。120人を対象にした臨床試験と4週間の追跡観察を通じて、医療機器レベルの精度を達成し、信号損失率も大幅に減少したことが分かった。このように、センサーOLEDベースのスマートフォンは、血圧、心拍数、ストレス、呼吸数はもちろん、血管構造と血流の状態まで分析できるモバイルヘルスケアプラットフォームに拡大している。

センサーOLEDの最大の特徴は、インタラクティブなセンシング体験である。生体信号を測定している間、リアルタイムで信号品質を確認し、ユーザーが画面を見ながら指の位置や圧力を調整することができ、データの精度を高めることができる。論文ではこれを’User Interactive Sensing’と定義し、従来の複雑なバイオフィードバック装置に代わる端末ベースのソリューションとして発展の可能性を強調している。また、高解像度画像ベースの血流分析を通じて、指内の血管の構造や血流の流れを視覚化して測定することも可能になった。この技術は、従来の病院用血管ドップラー装置をスマートフォンに置き換えることができる基盤となる。

このように、センサーOLEDはディスプレイとセンサーを一つに統合することで、デバイスの厚みや複雑さを減らしながら測定性能を大幅に向上させることができるという点で、次世代のスマートフォンやウェアラブルデバイスの核心プラットフォームとして注目されている。特に、人工知能(AI)とモノのインターネット(IoT)技術との融合を通じて、カスタマイズされた健康モニタリング、早期疾患予測、遠隔診療など様々なデジタル治療薬(digital therapeutics、DTx)サービスと連携することができる。

研究チームは論文を通じて、当該技術が単に技術的な実験にとどまるのではなく、実際の臨床環境で医療機器レベルの信頼性を確保しており、大規模な臨床検証を通じて商用化の可能性も十分だと明らかにした。これにより、病院訪問が難しい環境や医療インフラが不足している地域でも基本的な健康管理が可能になると期待される。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

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車載ディスプレイの進化、プレミアム市場をリードするOLED

自動車産業におけるデジタル化が加速する中、車載ディスプレイの高級化が急速に進んでいる。特に、OLEDディスプレイは、優れた画質と柔軟な設計可能性により、プレミアム車を中心に急速に採用されている。

自動車におけるOLEDディスプレイの最初の応用例は、2016年型アウディTT RSとQ7の計器盤で、OLEDパネルはSamsung Displayが供給し、デジタルクラスターの早期商業化をリードした。その後、2017年型キャデラック・エスカラコンセプトカーでは、LG Displayの曲面OLEDが計器盤に適用され、プレミアム車におけるOLEDの可能性を示した。

OLEDが本格的に中央情報ディスプレイ(CID)に商用化されたのは、2021年型Mercedes-Benz S-Classからだ。 この車両には12.8インチ縦型OLEDタッチスクリーンが搭載され、ハプティックフィードバックとともにベンツの次世代インフォテインメントシステムである「MBUX 2nd Generation」と統合され、ユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させた。その後、2022年型EQSとEQS SUVでは「MBUXハイパースクリーン」が導入され、17.7インチの中央OLEDと12.3インチの助手席OLEDが曲面ガラスパネルの下に統合された。

Mercedes-Benz S-Class (12.8-inch OLED CID)

Mercedes-Benz S-Class (12.8-inch OLED CID)

MBUX Hyperscreen (17.7-inch OLED CID, 12.3-inch OLED CDD)

MBUX Hyperscreen (17.7-inch OLED CID, 12.3-inch OLED CDD)

このような流れの中で、LGディスプレイは車載用OLED分野で最も早く量産体制を構築した企業として、ベンツをはじめとする様々なブランドにOLEDパネルを安定的に供給している。 特に、LGDはMercedes-Benzの主要パートナーとして、EQS、EQEなど電気自動車ラインナップのプレミアムディスプレイ市場をリードしている。

一方、Samsung Displayは次世代車載用OLEDパネルの供給拡大を本格化している。具体的には、2028年型Mercedes-Maybach S-Class向けに今後CLA、SL、電気自動車ラインアップに適用される48インチ「Pillar-to-Pillar」OLEDディスプレイを供給する予定だ。このディスプレイは、車両の前面全体を覆う一体型構造で、没入感とデザイン性の両立を実現する技術として注目されている。

このように、OLEDはLCDに比べて高コストと限られた供給会社などの参入障壁にもかかわらず、ベンツ、BMW、ジェネシス、ルシード、BYDなどの高級ブランドを中心に差別化されたユーザーエクスペリエンスとブランドアイデンティティを強化する重要な要素として定着している。

UBIリサーチのハン・ハンウク副社長は、「2025年の車載用OLEDパネルの出荷量は約300万台に達し、2030年には600万台以上、金額ベースでは車両ディスプレイ市場全体の14.4%を占めると予想される。これは、車内ディスプレイが単純な情報伝達手段を超え、感性と没入感を提供するUXの中心的役割へと進化していることを証明するものだ」と述べた。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

中国WSMT、1,400万ドルの投資誘致…MicroLED市場でJBDとの技術競争が本格化

中国杭州に本社を置くWestlake Smokey Mountain Technology(WSMT)が最近、約1億元(米貨約1,400万ドル)規模のプレシリーズA投資誘致に成功した。今回の投資には、深センキャピタルグループ(Shenzhen Capital Group, SCGC)、アイビーキャピタル(Ivy Capital)、モガンシャンファンド(Moganshan Fund)、レノボキャピタル&インキュベーターグループ(Lenovo Capital & Incubator Group)などが参加し、WSMTが本格的なMicro-LED量産準備に入ったことを示唆している。

WSMTはウェストレイク大学(Westlake University)の技術を基に、RGB素子を垂直に積層した構造のMicro-LEDを開発している企業である。この技術は、従来のRGB分離型構造とは異なり、赤(R)、緑(G)、青(B)LEDを1つのチップに垂直に積み重ね、ピクセル整列精度の問題を根本的に解決し、高解像度小型ディスプレイの実現に有利な構造と評価されている。

同社は現在、浙江省湖州にMicro-LED用エピウエハー生産ラインを構築しており、2025年末までに生産を開始する予定です。WSMTは、この技術により、5,000dpi以上の超高解像度、10万時間以上の寿命、低電力(<50mW、10K nits基準)を実現でき、AR/VR用マイクロディスプレイだけでなく、8インチ以上の大面積ディスプレイの拡張性も確保できると強調している。

一方、同じ時期、中国の深センに位置するJade Bird Display(JBD)もRGB垂直積層方式の「Phoenixシリーズ」Micro-LEDマイクロディスプレイのサンプル出荷を開始した。JBDはすでに単色Micro-LEDディスプレイ(Hummingbirdシリーズ)を商用化した経験がある企業で、今回は0.22インチサイズ、2K解像度(ピクセルピッチ2.5㎛ )のRGB垂直積層パネルを発表した。JBDは2025年中に0.3インチ、4K解像度製品の量産も計画している。

JBDは最近までA4戦略投資ラウンドとA3ラウンドを通じて数千万ドル規模の資金を確保し、アリババ、サムスン、BYD、吉利自動車(Geely)などのグローバル大企業が主要投資家として参加している。特にBYDとは車両用Micro-LEDディスプレイの共同開発を進めている。現在、JBDは合肥に9,200万ドル規模の量産ラインを稼働中で、このラインの総生産能力は年間1.2億個規模の0.13インチパネルである。

WSMTとJBDは共通して垂直積層RGB構造をベースにMicro-LED技術を発展させているが、WSMTは研究中心の新興企業として技術の完成度と大面積展開の可能性を強調しているのに対し、JBDは商用化及び市場参入速度の面で優位性を確保している。

Micro-LED基盤のマイクロディスプレイは、次世代ARグラス、HUD、ウェアラブルデバイス、車両用ディスプレイなど、様々な応用分野で脚光を浴びている核心部品である。WSMTとJBD間の競争は、中国がグローバルMicroLEDエコシステムで技術主導権を確保しようとする戦略の一環として解釈され、今後、Apple、Meta、サムスン電子などの戦略的選択にも影響を与えると予想される。

Joohan Kim, Analyst at UBI Research (joohanus@ubiresearch.com)

▶UBI Research’s Micro Display Report

サムスンディスプレイ 『フレックス マジック ピクセル』とCoE技術を採用:プライバシー保護と最高画質を同時に実現

覗き見防止機能付き有機ELディスプレイ|サムスンディスプレイFMP OLED

MWC(モバイル・ワールド・コングレス)2024」で披露されたFlex Magic Pixel™

サムスンディスプレイが次期フラッグシップスマートデバイスに革新的な視野角調整技術である’Flex Magic Pixel™’を適用することにより、新しい次元のユーザープライバシー体験を提供すると予想される。 この技術は、サムスンディスプレイのコアOLED技術であるCoE(Color filter on Encapsulation)との相乗効果により、さらに強力な競争力を確保すると期待されている。

「フレックスマジックピクセル」は、去るMWC (Mobile World Congress) 2024展示会で初めて公開され、業界から大きな注目を集めた。この技術は、人工知能(AI)と結合し、ディスプレイの視野角を能動的に制御するサムスンディスプレイ独自の技術だ。ユーザーが銀行アプリなど機密情報を扱うアプリケーションを実行すると、AIがこれを認識し、自動的に画面が正面からのみ鮮明に見えるように調整し、横から見る視点では画面がぼやけたり見えなくなったりすることで、個人情報の漏洩を効果的に防止する。

従来のプライバシー保護のために使用されていたフィルムは、ディスプレイの上に貼り付ける方式だった。これは画面の明るさを低下させたり画質を損なったりする欠点があり、フィルムの厚みによりデザインの柔軟性が制限され、常に固定された視野角しか提供しないため、ユーザーの利便性の面でも限界が明確だった。一方、「フレックスマジックピクセル」は、このような従来のフィルムが抱える問題を根本的に解決する。『フレックスマジックピクセル』は、特定の角度から光を遮断する単なるフィルム技術を超え、OLEDピクセル自体の精密な制御を通じて視野角を調整する技術だ。これにより、ユーザーはプライバシーが保護されながらも、最高水準の画質を体験できるだろう。

さらに、「フレックスマジックピクセル」は、サムスンディスプレイのOLED CoE技術と結合することで、その相乗効果を最大限に引き出す。CoE技術は、従来のOLEDパネルの偏光板を除去し、カラーフィルターを封止層の上に直接形成することで、ディスプレイの厚みを画期的に削減し、光透過率を向上させ、圧倒的な明るさと優れた電力効率を実現する。

CoE技術で確保された高輝度と柔軟性が「フレックスマジックピクセル」の機能実装にプラスの影響を与えると考える。「フレックスマジックピクセル」の活性化時に発生する可能性のある微細な光の損失をCoE基盤の高輝度画面が相殺し、フォルダブル、ローラーブルなどの次世代フォームファクターにもプライバシー保護機能を完璧に実装できるようにする。

「フレックスマジックピクセル」とCoE技術の組み合わせは、ユーザーがいつでもどこでも安心してスマートデバイスを使用できるように支援し、同時に圧倒的な画質とデザインの柔軟性を提供し、車載用ディスプレイやIT機器など次世代ディスプレイに拡張適用される見通しだ。

「フレックスマジックピクセル」の採用は、ユーザーの利便性とセキュリティを同時に満たすサムスンディスプレイの技術的リーダーシップを改めて証明し、未来のディスプレイ市場の新たな方向性を示すものと期待される。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書 

HKC、スマホ用OLEDの試作開始…G6 eLEAPラインも推進

中国有数のディスプレイパネルメーカーであるHKCは中・小型OLED市場への進出を本格化している。従来の大型LCD中心の事業構造から脱却し、フレキシブルOLED基盤のスマートフォン及びIT用パネル市場に領域を拡大する一方、次世代OLEDのコア技術であるマスクレス工程への投資も積極的に推進するようだ。

HKCは、H6工場でスマートフォン用OLEDパネルの試作を2025年7月から開始する計画だ。第一フェーズ1の生産ラインは、過去にRoyoleが保有していた中古の5.5世代装置をベースに構築され、ガラス基板の上にフレキシブル封止工程を適用したハイブリッド構造が採用される。TFTバックプレーンの生産能力は月4,000枚レベルであり、蒸着工程は1/4カット方式で運用される。

第二フェーズでは、日本のSharpから移転された4.5世代EVEN装置を導入しており、2026年4月までに復旧・稼働開始が見込まれている。また同社は、現在復旧作業中のOLED専用ラインも保有しており、こちらも2025年9月までに復旧を完了する計画だ。

注目すべき点として、HKCはeLEAP技術専用のG6(第六世代)OLED量産ラインの建設を計画している。当初は昆山市が候補地として検討されたが、政策動向の変化と現地政府との連携強化を背景に、プロジェクトは四川省綿陽市への移転の可能性が高まっている。HKCは現在、eLEAP技術に基づく当該G6ラインについて中国政府に規制承認を申請中で、FMM方式も一緒に選択肢として検討しているが、FMM方式は規制上の制約から承認の可能性が低いと見込まれている。生産ライン構成は、日本のジャパンディスプレイの中古装備の活用と一緒に技術支援まで含める方向で検討されている。

このような動きは、中国のOLED産業が単純な生産規模の拡大から脱却し、次世代OLED製造工程技術におけるグローバルな競争力を確保しようとする戦略の一環と見られる。

一方で、Visionoxは中国・合肥にG8.6 OLEDライン(V5)の建設を進めている。同社は、日本のSELが保有する特許を基にしたフォトリソグラフィー技術を用いたマスクレスピクセル形成技術「ViP(Visionox Intelligent Pixelization)」を採用し、OLEDパネルの開発と量産準備を進めている。このアプローチは、従来のFMMプロセスに伴う解像度と歩留まりの向上を確保する狙いだ。

HKCのeLEAPへの投資もこのような技術の流れと連動している。日本のJDIが開発したeLEAPは、マスクなしで精密なピクセル形成を可能とし、開口率とパネルの寿命向上において優位性を発揮する。HKCは2023年にJDIとeLEAP共同開発に関するMOUを締結したことがあり、その後、両社間は共同OLED工場の計画を縮小したが、技術協力は継続中とされている。

HKCとVisionoxがそれぞれeLEAPとViP基盤のマスクレスOLED技術確保に注力していることは、中国が生産能力を超えて、次世代OLED製造技術においてもリーダーシップを確立する意向を示す象徴的な流れといえる。これは中国がグローバル市場での主導権確保を目指す野心的な戦略であり、今後、中・小型OLED産業の将来を再定義する可能性を秘めている。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

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Visionox、V5プロジェクトを本格化…SELとの特許契約締結により技術基盤を強化およびマスクレスOLED蒸着装置も発注完了

FMMとViP方式のOLED積層構造の比較 (Source: Visionox)

FMMとViP方式のOLED積層構造の比較 (Source: Visionox)

中国のVisionox社は、V5プロジェクトにおける主要インフラ工程が順調に進行しており、次世代OLED生産に向けた準備が本格化している。また、日本のSEL(Semiconductor Energy Laboratory)との戦略的特許ライセンス契約を締結し、コア技術の確保において重要な進展を遂げた。

安徽省合肥市に建設中のV5ラインは、従来のFMM(ファインメタルマスク)工程を脱却した mask-less OLED生産を主な目標としている。このために推進されているViP(Visionox intelligent Pixelization)技術は、正式に mask-less OLEDと名称を変更し、次世代高解像度OLED製造方式としての地位を確立している。

最近、VisionoxはV5工場の屋根工事を完了し、主要装置の設置に向けた基礎工程を終了した。主要工程装置である蒸着機はApplied Materialsの子会社AKTに発注が完了しており、露光装置(Nikon)、イオン注入装置(Nissin)、ELA装置などの発注も順次進行中である。V5ラインの最終投資確定に向けた技術委員会の審議も順調に進んでいる。

一方、Visionoxは最近、SELとのOLED関連のコア特許に関するライセンス契約を締結した。SELはLTPS(低温多結晶シリコン)および酸化物TFT、OLED駆動に関する多数の基本特許を保有しており、「メタルマスクレスリソグラフィ(MML)」方式のリソグラフィOLED工程を開発中である。今回の契約により、Visionoxは自社のmsak-less OLED技術および高解像度パネル設計におけるグローバルな特許リスクを軽減し、技術競争力を強化することが可能となった。VisionoxのMASK-LESS OLED技術は、Applied Materialsが開発したOLED Max(フォトリソグラフィ)技術を基盤としている。SELの技術がリソグラフィ工程の後にカソード工程を行うのに対し、OLED Max技術はカソードと封止を先に形成した後にリソグラフィ工程を行う点に違いがある。SELの技術はOLED材料の寿命低下の可能性が高いが、工程の歩留まりを向上させやすいという利点がある。SELとの提携は、Visionoxが推進中の次世代OLED技術の商用化において重要なマイルストーンになると見られている。

Visionoxは、今回のV5プロジェクトの進展およびグローバル技術提携の拡大を契機として、昆山に国家レベルの研究所を設立し、AMOLEDの応用多様化戦略や資産の効率化を通じて、技術中心の持続可能な成長とグローバルOLED市場におけるリーダーシップの強化を目指していく計画である。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

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LGディスプレイ、2025年下半期iPhone/iPad向けOLED出荷量が回復…業績に青信号

–  iPhone 17シリーズ量産で第3四半期OLED出荷量が約70%増加の見込み

2025 Panel Shipment Share For Apple

2025 Panel Shipment Share For Apple

韓国のLGディスプレイは、iPhone/iPad向けOLEDパネルの出荷を拡大することで下半期に業績が回復する見通し。市場調査会UBI Researchによると、Appleの新型iPhone 17シリーズとiPad Proが7月から本格的な量産体制に入ったことで、第3四半期のOLEDパネル出荷量は前四半期比で大幅に増加すると予想される。

同社の第2四半期のiPhone用パネル出荷比率は21.3%で、これは中国BOE(22.7%)に初めて後れを取った。一方、サムスンディスプレイは引き続き首位に立ち、iPhone向けパネル出荷量シェアの56%を占めた。

現在、LGディスプレイは中小型OLEDパネルをAppleに独占供給しており、主にiPhone Proのラインアップに採用されるLTPOパネルに注力している。これらのパネル価格は、BOEが供給する標準的なiPhone用LTPSパネルより単価が高いため、出荷量基準ではBOEよりシェアは低いものの、収益面ではLGディスプレイが依然としてリードしている。

第2四半期のLGディスプレイの出荷台数の減少傾向は一時的な後退と見られている。Appleの新型iPhoneシリーズは例年7月から本格的な量産に入るため、第3四半期から出荷量が急増すると見られる。実際、LGディスプレイの第3四半期のiPhone用パネル出荷量は約1,850万台で第2四半期比約70%増加が予想され、第4四半期には2,500万台以上を超えると予想されている。

iPhoneに加え、iPad用パネルの出荷量も第3四半期には回復すると予想されている。昨年は、小売価格の高騰により販売が低迷したiPad Proシリーズ新モデルの生産が7月から開始された。その結果、第3四半期のiPad用パネルの出荷量は80万台だった第2四半期に比べて約2倍増の160万台の出荷量に倍増する見込みだ。

UBIリサーチのハン・ハンウク副社長は、「iPhone 17シリーズと一緒にiPad Proの新しいOLEDモデルも7月から量産に突入しており、LGディスプレイの業績が第3四半期から明らかな業績回復を見せるだろう」と述べた。また、「年間ベースでは、LGディスプレイが全iPhone用OLEDパネル出荷総数の30%以上のシェアを確保すると予想される」と付け加えた。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶Medium & Large OLED Display Market Tracker

▶Small OLED Display Market Tracker

Seeya Technology、上海証券取引所のSTAR Marketへの上場を申請 – Micro-OLED生産の拡大を加速

2025年6月26日、Micro-OLEDの専門メーカーであるSeeya Technology(希显科技)は、上海証券取引所の科学技術革新委員会(科创板、STAR Market)に上場申請書を提出した。今回の上場を通じて同社は約20億1,500万人民元(約380億ウォン)の資金調達を目指しており、その資金は主に生産能力の拡大と研究開発の強化に充当される。

Seeyaは現在、12インチウェーハ基準で月9K規模の生産能力を確保しており、2025年5月から第二フェーズの設備設置を開始した。これにより、生産能力は更に9K枚が追加される。今後、市場の需要に応じて第三フェーズの投資も計画されており、全フェーズが完了すると、合計月27Kレベルの生産キャパに達することになる。

今回の上場は2024年末から準備が開始され、最近、主要な手続きを完了した。順調に進めば、2026年内に上場完了の見込み。同社はすでにXiaomi、DJI、XREAL、雷鳥科技(Thunderbird)などの主要顧客に製品を量産供給している。現在、MetaをめぐってBOEと競合しており、Appleとの戦略的パートナーシップも公式発表している。

今回の上場を機に、Seeyaは中国におけるMicro-OLED業界での地位をさらに強化し、グローバルなXR-ARデバイス市場での影響力も拡大すると見込まれる。

Seeya Technologyを含む中国のMicro-OLED産業の現況に関する詳細は、UBI Researchの「China Trends Report」で確認することができる。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶ China Trends Report Inquiry

超スリムな革新、折り畳み式携帯電話の進化:Galaxy Z Fold 7と2025年の市場競争

Galaxy Z Fold7 & Z Flip7 (Source: サムスン電子)

Galaxy Z Fold7 & Z Flip7 (Source: サムスン電子)

サムスン電子は7月9日、「Galaxy Z Fold 7」を発表し、7月末下旬にグローバル発売を開始すると予告した。新しいZ Fold 7は重量を215gに軽量化し、折りたたんだ状態では8.9mm、広げた状態では4.2mmの薄さを実現し、 Z Foldシリーズ史上最も薄くて軽いモデルとなった。前作であるFold 6と比較すると、厚さと重量で顕著な改善を実現している。折り畳んだ時の厚さは従来の12.1mmから8.9mmに減り、約3.2mm薄くなり、約26%の削減を達成した。広げた時の厚みも5.8mmから4.2mmに減少し、約28%薄くなっている。重量も239gから215gで24g軽くなった。 メインディスプレイは7.6インチから8.0インチに拡大され、カバーディスプレイも6.3インチから6.5インチに広がった。これにより、携帯性と視覚的な没入感を両立させるための設計である。新しい「Armor Flex Hinge」は、強化された素材と構造の革新により、両立させている。

2025年の折り畳み式携スマートフォン市場はスリム化競争が激化しており、サムスン以外にもVivo、Oppo、Honorなど主要メーカーが9mm以下級の製品を相次いで発売している。現在発売されている主な折り畳み式スマートフォンの中で最も薄い製品はHonor Magic V5 Whiteモデルで、折り畳んだ時の厚さは8.8mm、広げた時の厚さは4.1mmで、最も軽いモデルはGalaxy Z Fold 7で、重量はわずか215gに過ぎず、携帯性に優れている。バッテリー容量面ではVivo X-Fold 5が6,000mAhで最大容量を誇り、長時間の使用に有利である。カメラの解像度では、Galaxy Z Fold 7は200MPのメインカメラを搭載し、最高レベルの撮影性能を提供している。一方、メインディスプレイのサイズはOPPO Find N5が8.12インチで最も広く、コンテンツ鑑賞やマルチタスク環境に有利である。

Apple は現在、初のフォルダブルiPhoneを開発中で、早ければ2026年下半期に発売されると予想される。 Apple はサムスンディスプレイが供給する約7.8インチの内部ディスプレイと5.5インチの外部ディスプレイを採用したbook-typeフォームファクターを準備中で、厚さは広げたとき約4.5mm、折り畳んだとき約9~9.5mmレベルで、 Apple 製品の中で最も薄いデバイスになると予想される。このフォルダブルiPhoneには次世代A20またはA21 Proチップセットが搭載され、フォルダブル環境に最適化されたiOSカスタマイズUIが適用される予定である。Foxconnは2025年9~10月頃にフォルダブルiPhoneの 量産に突入する計画で、製品価格はiPhone 16 Pro Maxの約2倍水準になるとみられる。一方、Appleのフォルダブル参入は、フォルダブルフォン市場全体に大きな影響を与えると予想され、2025~2027年の間にグローバルメーカー間の競争が本格化する見通しである。 特にフォルダブル市場での競争ポイントは次第に明確になってきている。

超薄型デザインは、単なる設計革新ではなく、UTG(ultra thin glass)とヒンジ構造、バッテリーパック、高集積FPCBなど、核心部品及び素材の軽量化、スリム化技術が不可欠である。そのため、今後のフォルダブル競争は、デバイス自体の完成度だけでなく、部品・素材レベルの技術力確保が差別化の鍵となる見込みである。

バッテリー性能も重要な競争要素であり、Vivo X-Fold 5は6,000mAhの大容量バッテリーを搭載し、長時間の使用が可能である。一方、OPPO Find N5は80W有線充電と50Wワイヤレス高速充電をサポートする。

また、カメラ性能では、サムスンのFold 7は2億画素(200MP)のメインカメラを搭載し、折り畳み式携帯電話の中で最高レベルの画質を提供している。ソフトウェアとAIの最適化に関しては、サムスンはGoogle GeminiベースのGalaxy AIを積極的に適用しており、Appleは折り畳み式ディスプレイに合わせたマルチスクリーン対応iOSを準備している。

最後に、耐久性と防水性および高い価格は依然としてフォルダブルフォンの最大の弱点であり、今後の製品差別化の核心となる可能性が高い。

最終的に、今後の折り畳み式スマートフォン市場は「より薄く、より軽く、よりスマートな」の方向へ進化し、デザインの完成度、ソフトウェアの統合、バッテリー寿命、AIの活用が主な競争要因となるだろう。Appleの参入は、これらの競争ポイントをさらに加速させるものと思われる。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書 

サムスンディスプレイ、Micro LEDに本格進出…生態系を変える

サムスンディスプレイ

サムスンディスプレイは、イ・チョン社長就任後、初めて社員とのコミュニケーションイベントであるデトックス(D-Talks)を開催した。この席で李社長は、サムスンディスプレイの今後の戦略方向性を明らかにし、超格差技術の確保を通じてグローバル競争力を持続的に拡大するという強い意志を示した。 特に、ディスプレイ産業が急速に転換期を迎えている状況で、従来のOLED中心の構造を超えた事業多角化の必要性を強調し、その一環としてMicro LED分野の技術高度化 及び製品拡大を明確に言及した。

イ・チョン社長の発言は、単純な方向性提示にとどまらず、サムスンディスプレイが Micro LED事業を単にバックプレーン供給の次元ではなく、パネル・材料・工程全般で競争優位性を確保するという宣言として受け止められる。これは、これまでサムスン電子が主導してきたMicro LED TV事業がセット製造中心から脱却し、ディスプレイ部門全般に拡大される可能性があるというシグナルと解釈される。

サムスン電子はこれまで国内でMicro LED産業生態系を主導してきたが、実質的な素子供給やパネル生産においては、台湾や中国の協力会社との連携が避けられない構造だった。PlayNitride(台湾)、Sanan Optoelectronics(中国)などからチップを供給されたり、AUO(台湾)、BOE(中国)とバックプレーン駆動技術協力を進めてきたが、これは韓国の中核部品・素材生態系が十分に内在化されていない状況を反映している。このような協力は、グローバル技術融合という利点がある一方で、国内Micro LED産業の技術自立性や独立生態系構築の面では残念な構造だった。

サムスンディスプレイが本格的に技術投資を拡大し、超格差技術をMicro LEDに適用するという立場を明らかにしたことで、韓国の生態系は質的に異なる転換点を迎えることができると予想される。サムスンディスプレイはすでにOLEDで世界最高水準のTFE(薄膜封止)、LTPO、低電力設計、バックプレーン駆動技術を保有しており、これらの技術はMicro LED素子の高解像度駆動や収率向上、転写精度の確保にも応用できる。特に、高集積駆動回路設計、低電流駆動特性の確保、プロセス自動化などは、OLED技術基盤のサムスンディスプレイにとって相対的に優位な領域である。

サムスンディスプレイの参加は、単純な技術高度化を超えて、韓国の素材・部品・装備メーカーとの協力強化を促進するシグナルとして機能する可能性がある。これは、サムスン電子が長い間、外部に依存してきたチップの需給、全社装備、工程装備などの核心部門について、内部技術力の強化とサプライチェーンの国産化を同時に推進する基盤となり、長期的には国内Micro LEDクラスター形成の起爆剤として機能する可能性もある。

イ・チョン社長の発言は、単にMicro LED技術開発を強化するという次元を超え、ディスプレイ産業内の次世代技術主導権を国内エコシステムの中で再定義するという戦略的宣言と解釈される。サムスンディスプレイがOLED以降に備えてMicro LEDという新たな軸を本格的に育て始めたという点で、今後、産業盤石の変化はもちろん、韓国の中小協力会社や投資家にも新たな機会が開かれる可能性がある時期が到来している。

Joohan Kim, UBI Research Analyst(joohanus@ubiresearch.com)

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BOEチェン・ヤンスン会長、サムスン電子VD事業部との高官会談を開催…関係改善の兆候か

中国ディスプレイ企業BOEのチェン・ヤンスン(陈炎顺)会長が6月30日、サムスン電子のVD(Video Display)事業部と高官面談を行ったことが確認された。今回の面談は、会長をはじめとするBOEの経営陣も出席し、サムスン電子との関係改善と今後の戦略的協力の可能性を探るために開催されたと報じられている。

BOEは大型LCDおよびOLEDパネルを生産する中国最大のディスプレイメーカーで、同社は国内のTVおよびIT用パネル市場で強い存在感を維持しており、グローバル顧客にも製品を供給している。サムスン電子のVD(TV事業を担当)事業部は、グローバルTV市場シェアで首位を維持しており、ディスプレイパネルの安定的な供給を重要な戦略要素としている。

今回の会談は、両社間の公式的な協議日程で行われ、近年比較的距離があった関係を再構築する動きとみられる。 議論の詳細や結果は公表されていない。

業界関係者は、チェン会長の直接的な関与が、BOEがサムスン電子との協力関係の回復を重要視していると解釈している。サムスン電子も主要ディスプレイサプライチェーンの見直しと再編を進めている中、今回の会談が両社間の新たな転換点になるのか注目される。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

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車両におけるライブインターフェース、ストレッチャブルマイクロLEDが変えるUXの未来

Stretchable OLED & Micro-LED

Stretchable OLED & Micro-LED

マイクロLEDは無機材料で構成されており、車内のような高温、振動、紫外線などの過酷な環境下でも安定した動作が可能だ。実際、2023年にサムスンディスプレイは11インチの伸縮可能なマイクロLEDのプロトタイプを公開し、25%の伸縮率を実証した。

しかし、ストレッチャブルマイクロLEDも技術的に完成された段階ではない。最も重要な課題は生産性だ。マイクロLEDチップを数百万個単位で正確に転写する必要があるが、基板が延伸可能な柔らかい素材の場合、転写精度の確保が非常に難しい。 もう一つの課題は、タッチ操作や操作性を実現するためのカバー融合技術だ。ストレッチャブルディスプレイは、シリコンゴムのような柔らかい基板の上に実装されるため、基本的にタッチ感度や耐久性の面で限界がある。特に、精密なタッチ認識や物理的な操作感を実現するには、ガラスのように硬いカバー層が必要である。そのため、業界は柔軟性と剛性を同時に満たすハイブリッドカバー素材の開発に注力しており、高弾性硬質ポリマーやフィルム-ガラス複合構造などが有力な代替案として検討されている。

ストレッチャブルディスプレイの実用可能性を示す代表的な例として、LGディスプレイがSID 2025で公開した「3Dインターフェース型ストレッチャブルディスプレイ」がある。この技術は、ユーザーの動作に反応して表面が隆起する構造を備えており、視覚情報だけでなく、物理的なフィードバックも提供できるHMIとして注目されている。 また、CES 2025ではAUOが同様のコンセプトを採用した「3Dストレッチ可能ディスプレイ」を披露した。このディスプレイは、伸縮可能なマイクロLEDで構成されており、ユーザーが触れたり、手を上げたりするとディスプレイが局所的に隆起し、実際のボタンのように操作することができる。

LGD 12-inch Stretchable Micro-LED@SID 2025

LGD 12-inch Stretchable Micro-LED@SID 2025

AUO 14.3-inch Stretchable Micro-LED @CES2025

AUO 14.3-inch Stretchable Micro-LED @CES2025

自動車のインテリアは徐々に「Digital Sculptures(デジタル化された彫刻)」に進化しており、ディスプレイはその中心においてリアルタイムの反応性と感性的な経験を伝える役割を担っている。ストレッチャブルマイクロLEDは、単に伸縮可能なディスプレイではなく、自動車という物理空間全体を有機的に接続する「3Dインターフェース」へと進化している。技術的にはまだ解決すべき課題が存在するが、カバー基板、タッチの一体化、大面積精密転写技術が完成すれば、この技術は未来の車内インテリアのユーザーエクスペリエンス設計に欠かせない核心軸となるだろう。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

TCL CSOT社、200億元規模の8.6世代Inkjet Printing OLEDライン投資計画を策定 – 月45Kの生産能力を確保、2026年末の設備搬入を目標

パネルメーカー別の8.6G OLEDライン構築計画

パネルメーカー別の8.6G OLEDライン構築計画

UBIリサーチの中国市場動向レポートによると、中国のディスプレイ企業TCL CSOT(China Star Optoelectronics Technology)は、広州市にあるT9 OLEDライン付近に位置するT8敷地内に8.6世代(2,290×2,620mm)のOLED新規ラインの建設を計画している。今回の投資はインクジェット印刷(Inkjet Printing)技術を採用し、総投資額は約200億元(約3.8兆ウォン)規模となる見込み。

T8サイトは太陽光発電プロジェクトに転換される予定だったが、その計画は一時中止され、当初の計画通りOLED生産ラインとして活用されることになった。T8プロジェクトは2つの8.6G OLEDラインで構成され、月45,000枚生産規模(45K)となる見込みで、最初は1ラインから優先投資が行われる予定だ。

T8ラインの投資スケジュールは、2025年7月中に公式発表、10月着工、2026年末までの設備搬入開始を目標としている。プロジェクトの総責任者はLinpei(林佩)氏に決定され、インクジェットプロセスのコア技術は韓国の専門家が主導している。

インクジェット印刷方式は、従来のマスク堆積方式に比べて約30%低い設備投資コスト削減がメリットとして挙げられる。例えば、サムスンディスプレイは忠清南道牙山市のA6ラインにおいて、従来の蒸着プロセスを基盤にIT用途向けの8.6世代OLEDライン(月15K)を建設するため、約4兆ウォンを投入している。一方で、TCL CSOTはインクジェット技術を採用して、初期投資額200億元を投入し、8.6世代基準で月45K規模の生産能力を確保する計画である。

UBIリサーチのハン·チャンウク副社長は、「インクジェットOLEDは、輝度と寿命、大面積の均一性及び収率の確保など、依然として技術的な課題を抱えている。しかし、中国は既存の蒸着方式と差別化されたこの技術を次世代の成長のための動力源と位置づけ、戦略的な政府支援の下、本格的な量産化を準備している」とコメントした。また、「中国はTCL CSOTのインクジェット技術とVisionoxのViP(Visionox intelligent Pixelization)への投資を通じて、中国初大面積OLEDの量産化を推進中であり、これを通じて技術的優位性の確立を狙っている。」と分析した。

ITディスプレイの需要が拡大する中、大面積OLEDにおけるインクジェット技術の商用化が今後の市場の主導権を左右するのかどうか注目される。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶ China Display Industry Trends Report Inquiry

BOE、合肥政府B9の株式撤退に反対…Visionoxへの資金シフトに敏感

BOE's OLED Panel Production Complex

BOE’s OLED Panel Production Complex

ViPに続き、B9資金がFMMベースのVisionox投資に流用される可能性が高まっている。

BOEは、合肥地方政府のB9 OLED工場の株式を売却する動きに強く反発している。合肥政府は、約200億人民元のB9工場の持株式を売却する方針と報じられており、その資金が競合他社であるVisionoxのV5ラインに流用される可能性が高まっており、BOEはこの資金再配分の動向を注視している。

現在、VisionoxはV5ラインで独自のViP(Visionox intelligent Pixelization)技術を適用した7.5K規模の投資を進めている。Visionoxは従来、ViP + FMMハイブリッド方式に15K規模のラインを建設する計画であったが、資金問題のため、FMM方式の投資は一旦保留となった。しかし、B9撤退資金がVisionoxに再配分された場合、ViPラインのみならず、7.5KのFMM(Fine Metal Mask)方式の投資まで行われる可能性がある。これはBOEの中長期的な市場シェアと競争力に直接的な脅威となる可能性がある。

BOEはこのような理由でB9工場の持分撤退に反対し、合肥地域でのOLED投資におけるリーダーシップを維持する方針である。BOEはB9工場の株式を新規ラインへの投資または既存ラインの拡張に充てる計画の見直しを進めている。一方で合肥市政府は、地域のディスプレイ産業の再編を目的とした新たな投資構想も検討していると報じられている。

合肥政府の株式売却と資金再分配は、単なる財政調整を超えた中国OLED産業における技術、資金、生産能力の再編を予感させる。BOEとVisionoxの競争は激化し、OLED市場リーダーシップを巡るより広範な戦略的競争に発展する可能性がある。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

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中国メーカーのAIメガネ製品の発売が加速、ますます激化するAIメガネ競争

AI技術が更に成熟する中、AI時代が到来している。昨年の傾向を引き継ぎ、2025年にはさらに多くのAIグラス製品がさらに発売される見込みである。AIとAR技術の融合は昨年から始まり、2025年にさらに発展すると予想される。また、Appleが2027年末までにスマートグラスを発売されるという噂もある。ビッグテック企業間のAI戦争での優位性を争う競争は激化している。

「AI」はCES 2025の注目テーマの一つであり、AIスマートグラスも注目を浴びた。Vuzix、Rokid、Goertek、RayNeoなどの企業がマイクロLEDを適用したAIメガネの新製品も披露した。TCL RayNeo X3 ProモデルはQ2時点で量産すると発表した。

先週6月26日、Xiaomiは北京で新製品発表会を開催した。今回のXiaomiの新製品AIスマート眼鏡の発売発表は、レイバンメタ(Ray-Ban Meta)に衝撃を与えたことは間違いない。

Xiaomi AI Glasses (Source: Xiaomi)

Xiaomi AI Glasses (Source: Xiaomi)

XiaomiのAIグラスは「次世代のパーソナルスマートデバイス」を目指す製品で、音声とタッチ操作をベースとし、ディスプレイ機能を含まないスマートグラスで、音声通話や写真撮影、動画撮影に対応している。基本モデルの価格は280ドル(1999元)からで、高級フォトクロミックモデルは最大420ドル(2999元)まで設定されている。直接の競合製品であるレイバンメタ(Ray-Ban Meta)AIグラスの価格は299ドルから販売されている。

Metaと比較すると、Xiaomiのグラスはカメラセンサー(1200万画素IMX681センサーを搭載)などのハードウェア仕様が優れており、フレームのみの重量は40グラムでメタの48グラムより軽い。バッテリー寿命もより長く、Xiaomiは8時間でMetaの2倍の持続時間を実現している。ただし、弱点は、FacebookやInstagramなどのソーシャルコンテンツとの接続や共有などのアプリケーションの不足だろう。しかしながら、今後、中国メーカーはこれらの不足している技術や機能的な課題を解決すると見込まれており、AIグラスの世界市場競争はさらに激化するとみられる。

Namdeog Kim, Senior Analyst at UBI Research(ndkim@ubiresearch.com)

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AI統合とデバイス融合がもたらす次世代XRエコシステム

AI技術の高度化に伴い、XR市場は単純なウェアラブル機器を超え、「パーソナライズされたデジタルアシスタント」に進化し、再び熱を帯びている。 グーグル、メタ、アップルなどのグローバルビッグテック企業がそれぞれの生態系を基盤に市場先取りに乗り出しており、サムスン電子も積極的な投資と製品戦略でこの流れに参加している。

最近のXR機器は、音楽鑑賞、カメラ撮影、音声制御などの基本機能を超えて、リアルタイム翻訳、物体認識、パーソナライズされた情報提供など、高度化されたAI機能を中核に搭載している。 これにより、日常生活での活用度が大幅に増加しており、ユーザーとのインタラクション方式も進化している。

代表的に、MetaはRay-Banと協業したAIスマートグラスを通じて100万台以上の販売高を上げ、リアルタイムコンテンツ生成及び質疑応答機能でAIグラスの大衆化を主導している。 グーグルは「ジェミナイ」AIとアンドロイドXR SDKを組み合わせたスマートグラスエコシステムを構築中で、サムスンとの共同開発プロジェクトも順調に進んでいる。

アップルは2025年第3四半期にVision Pro M5バージョンの発売を皮切りに、2027年には軽いVision AirとディスプレイのないRay-Banスタイルのスマートグラスを発表する予定だ。 2028年下半期には、完全に新しいデザインのVision Pro第2世代とカラーディスプレイを搭載したXRグラスが量産される計画だ。 Vision AirとVision Pro第2世代は、新しいデザインでより軽くて安価な製品として発売される見通しだ。 2024年に発売されたアップルのビジョンプロは発売が3,499ドル(約460万ウォン)で、消費者の期待価格に比べて過度に高く、技術は優れているが、市場と消費者の現実とはギャップがある製品と評価された。 ビジョンプロのディスプレイは1.42インチ、3391PPIの高解像度ディスプレイが適用された点が原価上昇の主な原因だった。 アップルの開発計画は、プレミアムXRヘッドセット市場を維持しながら、大衆的なスマートグラス市場に参入して生態系を構築しようとするアップルの長期的なビジョンを示している。

サムスン電子は、次世代プレミアムXR機器である「無限」を下半期に正式発売する予定だ。 この製品は、AIとディスプレイ技術の融合を通じた新しいXR体験を提供し、サムスン電子のXRエコシステムへの参入を告げる信号弾となる見通しだ。 「無限」にはサムスンディスプレイが開発した1.3インチ、2000PPI級OLED-on-Silicon(OLEDoS)ディスプレイを採用し、軽量化、優れたバッテリー効率と2000$以下の価格を提供するという展望がある。 当初、サムスン電子はソニーの1.3インチ、3800PPI級のOLEDoSを検討した。 サムスンが価格競争力を考慮し、製品をプレミアム級と普及型に二元化して発売するのか、単一製品として発売するのか、今後の動向を見守る必要がある。

サムスンは’プロジェクト無限’を皮切りに、XRハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ及びプラットフォームを網羅する統合戦略を本格化する計画だ。 このため、グーグル、クアルコムなどグローバルビッグテックとの協業を強化しており、スマートフォン、ウォッチ、リングなどギャラクシーエコシステム全体との接続性を最大化した「プロジェクト慧眼」も同時に推進している。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

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車載用透明ディスプレイ、どこまで可能か – 規制、技術、市場適合性の分析

自動車に適用可能な透明ディスプレイの応用先は、技術の発展とともに多様化しており、現在、4つの主要分野において実現可能性が議論されている。

第一に、車両のフロントガラス(windshield)に直接ディスプレイを統合するフロントガラス透明ディスプレイ、次に、ドライバーの視界内に設置されるフロントコンバイナー型透明ディスプレイ、三つ目は、後部座席側の窓に適用される後部座席側の透明ディスプレイ、第四は、ドライバー席と後部座席を分離する透明パーティションディスプレイである。各ディスプレイは、適用領域の特性や法的基準によって透過率と技術要件が異なる。

フロントガラス透明ディスプレイは、車両の走行情報をフロントガラス上に直接投影し、ドライバーが道路から支線を離さずに様々な情報を認識できるようにする技術である。しかし、フロントガラスは法的に可視光線透過率(VLT)70%以上が義務付けられており、現在の透明OLED(約45%)およびMicro LED(約55%)技術ではこの要件を満たしていない。 したがって、技術的な制限だけでなく、規制面からも、フロントガラスにディスプレイを直接組み込むことは、まだ現実的に難しい。

フロントコンバイナー型透明ディスプレイは、インストルメントパネル上またはフロントガラス付近に独立した透明ディスプレイパネルを装着する方式で、VLT70%以上の透過率確保が要求される。 そのため、この領域においても、現在のOLEDやMicro LED技術は透過率の面で規制を満たすことに限界があり、一部の試験製品はサイズと設置位置を制限することで規制基準を回避するパイロット製品が開発されている。

後部座席側の透明ディスプレイは、エンターテイメント、情報提供、広告などの目的で活用可能であり、多くの国で後部座席側のガラスに対する透過率規制はほとんどない、もしくは緩やかなため、商業化の可能性が高い。透過率が45~55%水準のOLED及びMicro LED技術でも十分に適用可能で、車両外部でも視認性が確保されるため、広告型透明ディスプレイとして活用された事例もある。特に、Micro LEDは高輝度、耐久性、外部温度変化への高い耐性から、商業化の面でOLEDより有利な評価を得ている。

透明パーティションディスプレイは、自動運転の進化に伴い、車両内で運転席と後部座席を分離すると同時に、プライバシー保護と情報伝達機能も果たす新たな分野である。車両内部空間に位置するため、透過率に対する法的規制は適用されず、OLEDとMicro LEDの両方を自由に活用できる。

現在、自動車用透明ディスプレイ技術の最大の課題は、透過率の低さである。透明OLEDのVLTは約45%、Micro LEDは約55%レベルであり、フロントガラスやフロントコンバイナー領域に適用には、少なくとも70%、理想的には75%以上の透過率確保が必須である。これを達成するためには、ピクセルの透明率向上、発光領域の最小化、高透明電極の開発、光学構造の最適化など、様々な技術的進歩が必要である。特に、Micro LEDは、理論的にピクセル間の非占有領域を拡大することで透過率をさらに高めることができる構造であるため、将来の規制に対応する可能性が高い技術として注目されている。

結論として、車載用透明ディスプレイの適用可能性と必要な透過率は領域によって異なり、現在の技術レベルでは、後部座席側や、内部パーティションに対し適用可能である。フロントガラスおよび直接視認領域への適用には、透過率の向上と法的基準の遵守という2つの課題を同時に解決しなければならず、現在要求される透過率は最低70%、実使用基準では75%以上の確保が理想的である。これらの条件を満たす技術が開発されれば、真の意味での透明ディスプレイをベースとしたスマートカーが実現できるだろう。

Required Transmittance for Automotive Transparent Displays

Required Transmittance for Automotive Transparent Displays

Windshield Transparent Display

Windshield Transparent Display

Combiner Transparent Display (Source: AUO)

Combiner Transparent Display (Source: AUO)

Partition Transparent Display

Partition Transparent Display

Rear Side Window Display (Source: LG display)

Rear Side Window Display (Source: LG display)

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

サムスンディスプレイ、次世代XR用高解像度OLEDoS マイクロディスプレイの開発

サムスンディスプレイ研究チームは、SID( Society for Information Display )公式ジャーナルの”J. Soc. Info. Display”に最近寄稿した論文を通じて4032PPI(pixels per inch)を実装した次世代OLED-on-Silicon( OLEDoS )マイクロディスプレイを開発したと明らかにした。今回の技術は、仮想現実(VR)、混合現実(MR)、拡張現実(AR)など次世代XRデバイスに最適化されたパネルで、高解像度と画質を維持しながらもシステム電力消費とクロストークを画期的に減らしたのが特徴だ。

1.3インチサイズのこのパネルは4032PPIの超高解像度を実現し、肉眼ではピクセル区分が不可能なほど精密なイメージを実現する。これにより、VR・ARガラスのScreen Door Effectを最小化し、没入感のあるコンテンツ体験を可能にする。 2024年に発売されたApple Vision Proのディスプレイは、1.42インチ、3391PPIの高解像度ディスプレイが適用された。

この論文では、高解像度実装のために7T1C ( 7個のトランジスタと1個のキャパシター)構造のピクセル補償回路構造が紹介され、これは前世代の6T2C構造の欠点を補完し、電圧偏差に強い設計を実現したと詳細な技術 説明した。

従来の6T2Cピクセル構造は、高解像度実装で小型トランジスタ間のしきい値電圧(Vth)偏差とイメージ歪み問題を 引き起こしてきた。そのため、サムスンディスプレイが新たに考案した7T1C構造は、次のような主な利点を提供する。

  • Vth補償精度向上:しきい値電圧偏差による輝度ムラを±2.75%に抑える(既存±10.6%)
  • 水平クロストーク減少:2.0%→1.3%
  • 単一キャパシターベースの面積効率の最適化
  • SRU( short range uniformity ) 向上: 97.3% 確保 (既存 90.4%)

また、データ駆動方式においても改善がなされた。従来の6T2C回路は、フレーム毎にデータラインを充放電しなければならず、消費電力が大きかったが、7T1Cは単一充電方式で消費電力を大幅に低減した。たとえば、同じフルグレー(full gray)パターンでソースICの消費電力は120mWから0.1mWに減少しました。

また、8V CMOSベース設計により動作電圧を下げながらも、従来比約50%以上の電力効率を確保した。

サムスンディスプレイは昨年、RGB OLEDoSとホワイトベースのOLEDoSを同時に開発するデュアルトラック戦略を公式化したところ、今回の4032PPIパネルはその技術力の欠実と評価される。今回の開発製品の量産時期は発表されていないが、当該技術は次世代XRデバイス市場の発展を加速する重要な契機になると期待される。

論文情報: J Soc Inf Display , 1–9 (2025) 。 https://doi.org/10.1002/jsid.2067

                     SID 2025 Digest 1424(P-8)

[4032-PPI 1.3-i nch OLEDoSの参考画像と仕様]

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶ UBIリサーチのマイクロディスプレイレポート

BOEのB11ラインベースで年間1億台のiPhone用パネル生産能力を確保、モジュールラインあたり35万台生産規模

BOE's panel shipments for iPhone

UBI Researchが毎月2回発行する「China Display Industry Trends Report」によると、BOEはB11ラインを中心に年間1億台規模のiPhone用OLEDパネル生産能力を構築したことが分かった。

BOEは現在、Apple専用モジュールライン26ラインを保有しており、そのうち11ラインが現在量産中、3ラインは開発専用モジュールラインとして利用されている。同社はタクトタイムを5.5秒に短縮し、ライン当たり最大月35万台を生産可能となり、月間約800万台のiPhone用モジュールの生産能力を備えている。B11ラインをiPhone専用に運営した場合、稼働率90%、歩留まり85%基準で月800~900万台、年間約1億台のパネルを生産することができる。

この大幅な生産能力にもかかわらず、BOEの実際のパネル出荷量は依然としてこの水準を大幅に下回っている。同社の2025年上半期iPhone向け出荷量は約2,100万台で、昨年同期の1,860万台に比べて13%増加した。2025年下半期にはiPhone向けパネルで2,400万台を出荷すると見込んでおり、年間総出荷量は4,500万台になると予想される。BOEがiPhone 17シリーズの供給に成功すれば、出荷量はさらに拡大する可能性があるが、iPhone 16と同様に、今回の新製品の初期供給には困難が伴うものと予想される。

現在、BOEは技術力の面ではまだサムスンディスプレイとLGディスプレイに後れを取っているものの、業界アナリストはBOEが急速に差を縮めていると指摘している。

UBI Researchのキム・ジュンホアナリストは、「BOEのiPhone向けパネルシェアが徐々に拡大するにつれて、今後、サムスンディスプレイとLGディスプレイのAppleとの単価交渉にも少なからず影響を与えるとみられる。BOEが積極的に追撃する中、韓国メーカーがどのように技術優位性とAppleとの戦略的提携を維持できるかが鍵となる」とコメントした。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶ China Display Industry Trends Report Inquiry

ロール式ディスプレイ、次世代のフォームファクターとして実用化が本格化… サムスンディスプレイ、素材の革新で技術リーダーシップを確立

サムスンディスプレイの16.7-inch Slidable Flex Solo 適用したLenovo社 ThinkBook Plus Gen 6

サムスンディスプレイの16.7-inch Slidable Flex Solo 適用したLenovo社 ThinkBook Plus Gen 6

2025年5月、米国サンホセで開かれた世界最大のディスプレイ技術イベントである「SID Display Week 2025」は、次世代フォームファクター技術の進化を直接確認することができる舞台であった。ローラーブルディスプレイの構造的問題を解決するための素材技術革新を発表し、技術的完成度を大きく引き上げた。

携帯性と大画面体験を同時に実現する次世代ディスプレイとして、画面を巻き取るように展開する構造を持つローラーブルディスプレイが注目されている。 SID 2025およびCES 2025では、主要なグローバル企業がこれを実際の製品として実装して関心を集めた。

2025年第1四半期 商用化されたLenovo社の「 ThinkBook Plus Gen 6 Slidable AI PC」は、サムスンディスプレイのスライダブルOLEDを搭載し、14インチから最大16.7インチまで拡張され、3万回以上の耐久性テストに合格した。

サムスンディスプレイはCES2025で垂直拡張方式の「Slidable Flex Vertical」スマートフォン試作品を公開したことがある。 基本5.1インチの画面サイズから垂直方向にスライドして6.7インチの大画面に拡張される形で、携帯性と大画面体験を同時に提供する新しい方式と評価される。​​ 今後、サムスンが独自のスライダブルOLED技術を基盤にギャラクシーローラーブルフォンを 商品化するかどうかも注目されている。

 SID 2025では、 BOEは12.3インチから17.3インチに拡張するローラーブルOLEDプロトタイプ 公開した。該当 製品は ロール 半径4mm、3.2: 1 拡張 比率 特徴として と、 10万回以上の屈曲耐久性を備えていると紹介された。

 Tianmaは13インチのスライダブルAMOLEDプロトタイプを発表し、先端フォームファクター競争に参入した。 5 mmの曲率半径(R)で設計され、画面は70 mmのスライド移動が可能で、スライド前後の厚みや平坦度の変化がほとんどないと報告した。

ローラーブルおよびスライダブルディスプレイは、耐久性、均一な復元力、駆動機構の信頼性確保などが技術的な課題として残っているが、構造設計と材料革新がこれを解決する重要な鍵として浮上している。

サムスンディスプレイはSID 2025で「Highly Recoverable and Robust Rollable AMOLED Display with Smart Elastomer Materials」というタイトルの論文を発表し、ローラーブルディスプレイのコア技術である材料開発の重要性を強調した。この 論文はDisplay Week 2025のDistinguished Paperで 選ばれた。

サムスンディスプレイは、高弾性と低弾性の2層のスマートエラストマー構造により、ローラーブルディスプレイの耐久性と回復性を大幅に向上させた。 新構造のおかげで、ペン落下テストと繰り返し ロールした後でも、パネルエッジの変形が大幅に減少した。 エラストマー層は、従来のポリイミドよりも変形を大幅に減少させ、繰り返しローリングしても優れた回復性能を示した。 帯電防止処理が追加され、反復的な摩擦や帯電によるパネル画像の損傷も効果的に抑制された。

ローラブルとスライダブル技術は現在、技術実証の段階を超え、スマートフォン、ノートパソコン、車載用ディスプレイなど様々な製品市場に参入している。  同時に、これらが経験する機械的ストレス、耐久性、外部衝撃および静電気蓄積の問題は、高性能素材技術がなければ解決できない。 サムスンディスプレイが提案したスマートエラストマーベースの二重層設計は、このような問題に対する答えを提示し、プレミアムモバイル機器と自動車用大型ディスプレイ市場で技術優位性を先取りする可能性を高めている。 ディスプレイ産業の次の主導権は、デザイン革新のための、素材・構造・工程の有機的な統合技術を通じて完成されるだろう。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書 

サムスンディスプレイ、5月からフォルダブルOLEDの出荷が急増…第2四半期シェア1位

Monthly Smartphone & Foldable Phone OLED Display Market Tracker

‘Monthly Smartphone & Foldable Phone OLED Display Market Tracker’

市場調査会社UBIリサーチが毎月発行する「Monthly Smartphone & Foldable Phone OLED Display Market Tracker」によると、サムスンディスプレイのフォルダブルフォン用OLEDの出荷量が5月から急増し、第2四半期の市場シェア1位を記録した。

2025年第1四半期には、サムスンディスプレイは約25万台のフォルダブルフォン用OLEDを出荷し、BOE、CSOT、Visionoxなど中国の主要パネルメーカーに後れを取っていた。しかし、5月から下半期に発売予定のGalaxy Z Flip/Fold 7シリーズのパネル量産が本格化し、出荷量が急激に増加した。

サムスンディスプレイのフォルダブルフォン用OLEDは、5月178万台、6月153万台が出荷され、第2四半期全体のフォルダブルフォン用OLED出荷量の52%を占めて市場1位になった。続いて、中国BOEが180万台、CSOTが90万台、Visionoxが50万台の出荷実績を記録した。

第3四半期にもサムスンディスプレイの出荷量シェアが1位を維持すると予想され、2026年にはAppleの折りたたみ式iPhone用パネルを初期に単独供給するため、2026年にもサムスンディスプレイのフォルダブルOLED市場占有率は維持されると予想される。

サムスンディスプレイだけでなく、全世界のフォルダブルフォン用OLED市場は持続的に増加している。2022年に1,500万台だった出荷量が2023年には2,180万台、2024年には2,500万台まで増加し、2025年には3,080万台まで増加すると予想される。2026年にAppleがフォルダブルフォン市場に参入し、中国のセットメーカーのフォルダブルフォン発売製品が増加することで、フォルダブルフォンの出荷量は2029年に5,000万台を超えると予想される。

UBI リサーチのハン・チャンウク副社長は、「Galaxy Flip/Fold 7シリーズの本格的な量産に支えられ、サムスンディスプレイは第3四半期にも最も高い出荷量を続けると予想される」とし、「フォルダブルフォン市場全体は2025年にも前年と同様の水準を維持するとみられ、Appleのフォルダブルフォンが発売されると予想される2026年から市場が本格的に拡大するだろう」と分析した。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶Monthly Smartphone & Foldable Phone OLED Display Market Tracker 

LGディスプレイ、OLED技術高度化に1兆2,600億投資…韓国PajuにLTPO3.0-COE-RGB 2-Stack強化

LGディスプレイ、OLED技術高度化に1兆2,600億投資...韓国PajuにLTPO3.0-COE-RGB 2-Stack強化

LGディスプレイがOLED事業強化に向けた大規模な取り組みを開始した。6月17日、同社は取締役会において、総額1兆2,600億ウォン規模の大規模設備投資計画を議決し、韓国・坡州とベトナムの生産拠点を中心に次世代OLED技術の高度化に着手すると明らかにした。

今回の投資の核心は、韓国・坡州の工場とベトナムのモジュール工場だ。

坡州事業所には約7,000億ウォン規模の投資が行われる予定で、スマートフォン及びIT用LTPO 3.0技術、COE(Color on Encapsulation)基盤投資とRGB 2 stack tandem構造補完投資、WOLED用4-Stackチャンバー投資などが含まれる。ベトナムのモジュール工場には約5,600億ウォンが投入され、モジュール工程の効率化及び自動化レベルの向上に焦点を当てる。

LGディスプレイは、坡州のパネル生産ラインをLTPOラインに転換するに従い、一時的な生産キャパの減少が見込まれるため、これを補完するための全体的な設備最適化への投資も並行して行う予定だ。同社は今回の設備アップグレードを通じて、次世代IT OLEDの競争力確保はもちろん、プレミアムモバイルおよびタブレット市場への対応力を強化する方針。

今回の投資財源は、昨年売却した中国広州LCD工場(売却価格約2兆2,466億ウォン)の資金を基に賄われ、産業部にリショアリング企業として登録し、500億ウォン規模の補助金を受ける資格を有している。

LGディスプレイの関係者は「今回の投資は、単純な設備拡張を超え、高付加価値OLED製品中心の体質転換のための戦略的な布石」とし、「技術力と収益性を同時に確保し、2025年の黒字化に向けた堅固な基盤を確実に築きたい」と明らかにした。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書 

AI光通信が道を開く…マイクロLEDがディスプレイ市場への参入を加速

LightBundle™ — Using microLEDs to “move data” (Source: Avicena)

LightBundle™ — Using microLEDs to “move data” (Source: Avicena)

The performance of an interconnect (Source: Avicena)

The performance of an interconnect (Source: Avicena)

次世代ディスプレイ技術として注目されているマイクロLEDは、新たな用途で実用化の可能性を見出しています。低い歩留まりや複雑な製造プロセスなどによりディスプレイ市場への参入が遅れていましたが、最近、AI半導体間の高速光通信(Co-Packaged Optics、CPO)の需要が高まり、マイクロLEDの実用性が再び注目を集めています。CPO分野は、小型、高速、低消費電力といったマイクロLEDの特性と相性の良い分野であり、この市場での実用化は、ディスプレイ市場への参入を加速させる転換点となる可能性があります。

マイクロLEDは、OLEDとLCDの利点を兼ね備え、高輝度、長寿命、焼き付き防止、優れた色再現性などを実現するディスプレイ技術です。しかし、本格的な市場拡大には、解決すべき技術、製造、経済的な課題が存在します。技術的には、数μmサイズのRGBチップを数百万個も精密に配置して接合する必要があり、そのための大量転写プロセスは、速度、精度、歩留まりの面で依然として改善の余地があります。接合工程では、熱応力やアライメント誤差などの精密制御技術を継続的に向上させる必要があります。

製造プロセスも最適化が必要です。複数のピ​​クセルが画面全体の品質に影響を与える可能性があるため、高精度検査と高度な補正技術が不可欠であり、現在の歩留まりはパイロットラインを基準に10~30%程度にとどまっています。自動化レベルと検査装置の精度も、将来の生産性を確保するための主要な改善課題です。

経済的実現可能性の面では、歩留まりとプロセスコスト構造の効率化が求められます。例えば、サムスン電子の110インチマイクロLEDテレビ「The Wall」は現在約15万ドルで販売されており、本格的な量産体制を確立するには、材料と装置のエコシステムもさらに拡張する必要があります。

現在、マイクロLEDは超高級テレビや大型商業サイネージを中心としたプレミアム市場に導入が進んでおり、今後はARやIT機器など、様々な製品群への拡大が見込まれています。業界全体でプロセスの標準化とサプライチェーンの構築が徐々に進んでおり、この流れが市場拡大の実用基盤につながると期待されています。技術・プロセス関連の課題は依然として様々ですが、改善と進化を通じて段階的に解決できる課題として認識されています。特に、非ディスプレイ分野への技術適用拡大は、マイクロLEDの実用性と信頼性を検証する好機となっています。AIサーバーや高性能半導体システムには、高速・低消費電力の光通信環境が必要であり、これはまさにマイクロLEDの技術的特性と一致しています。既存の電気ベースの相互接続は、発熱や帯域幅のボトルネックなどの限界を示しており、これらの問題を解決するために、光信号ベースの通信構造であるCPO技術が急速に採用されています。米国のスタートアップ企業であるAvicenaは、この分野をリードする企業であり、マイクロLEDをベースとした光通信技術であるLightBundle™ソリューションを通じて、AIやHPCシステムに適した高速・低消費電力のインターコネクトを実現しています。Avicenaは、数千個のマイクロLEDアレイを並列駆動することで数十~数百Gbpsの伝送速度を実現し、既存のVCSELと比較して低発熱、低動作電圧、小型化、並列化といった技術的優位性を示しています。また、CMOSプロセスで製造できるため、半導体パッケージとの統合にも有利です。

光通信用マイクロLEDは、ディスプレイ用に比べて実装条件がシンプルです。多色素子や高解像度は求められず、チップ数も数千~数万個と少ないため、多少歩留まりが低くても製品化が可能です。実際、Avicenaを含む複数の企業がマイクロLEDベースの光通信ソリューションでAIサーバー市場に参入しており、この市場では歩留まりよりも実際の通信性能と長期的な信頼性が重要な競争要因となっています。

AI光通信市場の需要拡大は、マイクロLEDの量産基盤強化の重要な触媒となりつつある。生産量の増加、設備投資、材料サプライチェーンの拡大は、ディスプレイ市場における歩留まり向上、プロセス自動化、コスト削減といった好循環にもつながる。実際、一部の装置メーカーは、ディスプレイと光通信プロセスを同時に処理できる統合装置を開発しており、これはプラスに作用している。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

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フォトリソグラフィ方式によるOLEDプロセス: 次世代ディスプレイの革新に向けた課題とチャンス

Applied Materials社のMAX OLED™によるパターニングプロセス

Applied Materials社のMAX OLED™によるパターニングプロセス

OLED技術は、その優れた画質と柔軟性により、スマートフォンのディスプレイの中心となっている。 FMM(fine metal mask)プロセスは、現在、スマートフォンなどの中小型OLEDディスプレイのRGBサブピクセルをパターニングするために主に活用されている技術である。

しかし、従来のFMM方式は、開口率(約30%)の限界、電気抵抗の増加による不均一な明るさ及び高い生産コストという問題を抱えている。 OLED材料の感受性のため、FMMの代替として検討されたフォトリソグラフィパターニングも、工程中のOLED損傷の懸念から商用化に困難があった。

Applied Materials社は、SID2025 conferenceでMAX OLED™プロセス技術について発表した。 MAX OLED™は、独自のピクセルアーキテクチャーと新しいプロセスにより、従来のフォトリソグラフィ 技術 の利点は生かしつつ、OLED材料の影響を補完する。 特に、OLED蒸着直後にTFE(Thin Film Encapsulation)を通じて敏感な有機層を保護し、複数の複雑なフォトリソグラフィとエッチング工程を可能にする。

MAX OLED™プロセスにより、FMMに比べて開口率を2倍に増やし、ピクセルの明るさ、解像度、ディスプレイの寿命を大幅に向上させた。 また、局所的なカソード接触構造により、電気抵抗の増加問題を解決し、ノートPCディスプレイの消費電力を33%、モニターディスプレイの消費電力を47%まで削減することができた。 2,000ppiに達する高解像度の実装が可能で、RGB各色別OLEDスタックの個別最適化も可能である。

経済的な面でも、MAX OLED™はポジティブな変化をもたらす。 フォトマスクのリードタイムをFMMに比べて大幅に短縮し、コストを削減して新製品の開発サイクルを短縮する。 また、LCDプロセスで多く適用されるMMG(multi-product in a mother glass)を通じてガラスの活用度を高め、短いソース-基板距離でOLED材料活用率を約2倍に増大させ、材料コスト削減にも貢献する。

最近、Visionoxは第8世代OLED生産にMAX OLED™プロセスを活用するマスクレスプロセス(ViP, Visionox intelligent Pixelization)を検討中であると発表した。 Visionoxの発表は、フォトリソグラフィベースのOLEDプロセスの商業的可能性を示唆するポジティブなシグナルであるが、まだ十分な歩留まりが確保されていないため、量産投資は慎重に検討中である。 これは、MAX OLED™技術の複雑なフォトリソグラフィプロセスと歩留まり安定化の検証がまだ必要であることを示している。 RGB各色別OLED蒸着後のTFE工程、そして繰り返されるフォトリソグラフィとエッチング工程は、高い精度と工程制御が要求され、これは歩留まり確保の難易度を高める主な要因である。 サムスンディスプレイもMAX OLED™プロセスのパイロット評価を進めているという事実は、この技術が業界の主要企業の注目を集めていることを証明している。

結論として、MAX OLED™は既存のFMMプロセスの限界を克服し、次世代OLEDディスプレイの性能を革新する有望な技術である。 複雑なプロセスによる歩留まり確保という課題が残っているが、ディスプレイ業界の大手企業がこの技術に注目していることは、MAX OLEDが将来のディスプレイ市場をリードする核心技術として浮上する可能性が十分にあることを強く示唆している。 これは、VRディスプレイ、透明OLED、アンダーパネルカメラ(UPC)の統合など、新たな応用分野の可能性を切り開くだろう。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

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iPad Pro OLEDの後継モデルを7月パネル生産開始、2024年同水準の出荷量を見込む

Apple iPad Pro(2024) (source: Apple)

Apple iPad Pro(2024) (source: Apple)

2024年モデルのiPad ProシリーズにOLEDディスプレイが採用されたことを受け、アップルは2025年モデルのiPad ProシリーズでもOLEDパネルの採用を継続する見込み。iPad Proの後継モデルのパネル生産は7月から開始される予定だ。

2024年にはサムスンディスプレイとLGディスプレイがiPad Pro用OLEDパネルを供給した。サムスンディスプレイは11インチモデル用パネルを280万台、LGディスプレイは11インチ70万台と13インチ280万台を供給した。しかし、小売価格の高騰により販売が鈍化し、第3四半期と第4四半期の出荷量が減少したため、当初予想の900万台を下回る結果となった。

2025年、サムスンディスプレイとLGディスプレイの両社は、11インチと13インチの両モデル向けにパネルを供給する見込み。特に注目すべきは、これまで13インチモデル向けのパネルを供給していなかったサムスンディスプレイが、7月から13インチパネルの生産を開始する見込みである点である。

2025年のiPad Pro OLED向け第1四半期の出荷量は、サムスンディスプレイが30万台、LGディスプレイが70万台と集計された。後継モデル全体としては、2024年と同水準の出荷量を維持すると見込まれる。AppleのOLEDタブレットPC市場は2025年以降、iPad miniやiPad AirなどミドルレンジモデルにもOLEDが適用され始め、拡大すると予想される。

一方、BOEはB12ラインでiPad Pro用OLEDパネルの承認を目標に開発を進めているが、Appleの厳しい品質基準を満たせず、技術的な課題に直面しているとの報道がある。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶Small OLED Display Market Tracker

▶Medium & Large OLED Display Market Tracker

OLED TVパネル出荷、2028年に1000万台突破の見込み…生産ライン拡張が必要

OLED Display Market Tracker

OLED Display Market Tracker

UBIリサーチが毎四半期に発行する「OLED Display Market Tracker」によると、世界のOLED TV市場は2028年までに年間出荷台数1000万台に近づくと予測されている。OLED TV市場が本格的な成長軌道に入るにつれ、主要パネルメーカーの生産拡大戦略に注目が集まっている。

最近、サムスン電子はWOLED(White OLED)パネルを採用したOLED TVラインナップを拡充し、LG Displayからのパネル購入も積極的に増やしている。現在、サムスン電子が使用するWOLED TVパネルはすべてLGディスプレイから独占的に供給されている。

UBIリサーチの分析によると、LGディスプレイのWOLEDパネルとサムスンディスプレイのQD-OLEDパネルの現在の量産能力を考慮すると、実際の年間生産量は約1,000万台レベルに達する。既存の生産能力は現在の市場需要を満たすのに十分だが、2028年に1,000万枚を超える急増があり、その後も成長が続く場合、パネル需要を満たすためにラインの追加拡張が必要になる可能性が高い。

サムスン電子は、中国のテレビメーカーの積極的なMini-LED攻勢に対抗するため、OLED戦略をさらに強化している。同社は「OLED TV市場でナンバーワンを達成する」という目標を掲げ、プレミアムTV市場でOLEDの採用比率を着実に増やしている。

その結果、LGディスプレイもOLED TV需要拡大の増加から直接的な恩恵を受けると予想される。サムスン電子の積極的なOLED戦略は、WOLEDサプライヤーの収益性を向上させるだけでなく、長期的な生産拡大の原動力にもなっている。

UBIリサーチは、OLED TVの世界出荷台数が2028年に1,000万台を突破すると予測しており、主要パネルメーカーがOLED TV専用生産ラインの本格的な拡張に着手する可能性が高いと予測している。

UBIリサーチのハン·チャンウク(Changwook Han)副社長は、「OLEDはプレミアムTV市場で優れた画質競争力とブランド価値を証明している。主要パネルメーカーは大型OLEDラインの拡張を本格的に検討することになるだろう」とし、「2028年はOLED TV市場復活の転換点になるだろう」と述べた。

Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶Medium & Large OLED Display Market Tracker

▶Small OLED Display Market Tracker

XRデバイスが6G時代の鍵となる理由

Google Headset and Smart Glasses Examples

Google Headset and Smart Glasses Examples

スマートフォン普及の決め手となったのは4Gの登場だった。3Gは技術的な「データ通信」を可能にしたが、消費者がそれを体感することは難しかった。 一方で、4Gは高解像度映像のストリーミング、リアルタイムのゲーム、SNSの活性化などの目に見える変化をもたらし、その体験の中心にスマートフォンのディスプレイの発展があった。画面は大型化、鮮明化、高速化し、ネットワークの進歩は日常的な体験となった。

通信業界は現在、2030年頃を目標に6Gの商用化に向けた準備を進めている。6Gは4Gの最大100倍の速度(最大1Tbps)、1ms以下の遅延時間、そしてブロードバンドのハイパーコネクティビティをサポートする。しかし、コンテンツのダウンロードや、動画を見たりするだけでは、このレベルのスピードを体験することは難しい。6Gのスピードと低遅延特性を実感的に「体験」できる唯一のインターフェースは、XR(eXtended Reality)、つまり拡張現実デバイスなのである。

XRにはAR-VR-MRが含まれ、6Gの中核をなすサービスとして挙げられる。しかし、これを実現するXRデバイスは、高解像度ディスプレイ、軽量化、発熱制御、光学系構成など、様々な技術的課題を抱えている。特に、ディスプレイはXR体験の中心である。単眼ベースで2,000×2,000以上の解像度、100PPD以上の画素密度、5,000~10,000nit以上の高輝度が要求され、これは一般的なスマートフォンのレベルをはるかに超えている。

現在、主要XR企業とディスプレイ企業は次のように動いている。

  • Googleは2024年のI/Oを通じてAndroid XRプラットフォームを発表し、XRヘッドセットとスマートグラスを開発している。特に、スマートグラスにはXREAL(XREAL)が供給するOLEDoSベースのディスプレイを採用していることが知られている。GoogleのXR戦略は、Apple Vision Proををターゲットとした、プラットフォーム・ハードウェア・コンテンツ統合エコシステムの構築に重点を置いている。
  • AppleはOLEDoSを使用したVision ProでプレミアムXR市場をリードし、後継モデルでも同様の方向性を維持している。
  • サムスンはOLEDoS、LEDoS技術を中心にXR用の超高解像度ディスプレイを開発中であり、サムスン電子のXRヘッドセットとスマートグラスに搭載される予定である。
  • LGディスプレイはOLED技術競争力を基盤にOLEDoSのコア技術に拍車をかけている。
  • BOEは中国政府の支援を受けてOLEDoSを量産しており、現地のXRスタートアップやグローバルパートナー企業に供給している。
  • JBDはLEDoSベースの超高輝度ディスプレイを小型AR機器に応用し、10万nitを超える輝度を実現で注目を集めている。

このように、XRデバイス用ディスプレイはOLEDoSとLEDoSの2つの軸で技術が二分されている。OLEDoSは解像度と色表現力、LEDoSは輝度と寿命に強みを持ち、それぞれデバイスの用途に応じて選択される。

最終的に、6Gはネットワーク速度の進化のみならず、ヒューマン・マシン・インターフェースの再定義を意味する。3Gから4Gに移行する際にディスプレイが中心であったとすれば、6GではXRデバイスとディスプレイ技術がその座を奪うことになる。消費者が6Gを「感じる」ためには、XRという新たなウィンドウを通してテクノロジーを実装する必要がある。

Changwook HAN, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶ UBIリサーチのマイクロディスプレイレポート

2025年韓国工業化学会ディスプレイ分科会、AIと溶液工程の次世代ディスプレイ技術発表

2025 KSIEC

2025年6月3日、済州国際コンベンションセンターで開催された韓国工業化学会(KSIEC)春季学術大会でディスプレイ分科会が主管した「商用化のための溶液プロセス、ピクセル化、大面積化ディスプレイ技術」 セッションが盛況に開催された。 本セッションは、次世代ディスプレイ技術の素材、プロセス、システムを網羅する融合発表で構成され、商用化のための核心技術と産業界との連携を強調した点が高く評価された。

ディスプレイ分科会は、2000年代初頭から発光材料、印刷工程、高解像度ディスプレイ技術を中心に産学研の研究者が組織した技術ネットワークとして発足した。 OLED、QD-LED、MicroLEDなど、韓国が世界市場をリードしてきたディスプレイ分野において、分科会は学問と産業をつなぐ架け橋の役割を果たし、現在は韓国工業化学会内で産業的な波及力が最も大きい分科会の一つとして認められている。

今年のディスプレイ分科会は、ソウル大学校のイ・テウ教授がOrganizerとして参加し、高い専門性と技術的洞察を提供した。

本セッションでは、産業界セッション4件と学界セッション4件の計8件の発表が行われ、商用化に直結するテーマが多数紹介された。 産業界セッションでは、サムスン電子のキム・テグフン専門研究員がAI基盤の量子ドット素材の合成自動化システムを通じて量子ドット素材の品質を向上させる技術を発表し、大量生産体制への転換の可能性を提示した。 ドンジンセミケムのユン・ヒョクミン常務は、超大型OLED基板(6世代と8.6世代)プロセスに適用可能なフォトレジスト特性について発表し、プロセスの安定性と歩留まり確保の面で産業界の大きな関心を集めた。

続いて、韓国生産技術研究院のチョ・グァンヒョン博士は、インクジェット印刷技術を基盤とした量子ドットディスプレイの画素形成技術を発表し、高精度、大面積ディスプレイの実用的な解決策として注目された。 韓国電子通信研究院のクォン・ビョンファ博士は、溶液プロセスを通じて画素と素子を統合実装する技術を紹介し、低コスト大量生産の技術的実現可能性を提示した。

学界のセッションでは、ペロブスカイト基盤の発光素子の研究が続いた。 東国大学のチェ・ミンジェ教授は、InP基盤量子ドットの前駆体設計を通じて発光波長を精密制御する技術を、慶尚国立大学のヤン・ソクジュ教授は二次元ペロブスカイト素材のLED応用可能性を発表した。 全南大学のパク・ジョンヒョン教授は、高効率・高安定性のペロブスカイトナノクリスタル開発戦略を、延世大学のヤン・ジョンヒ教授は、マシンラーニングを活用した合成条件空間探索技法を通じて迅速な素材最適化アプローチを紹介した。

今回のディスプレイ分科セッションは、素材・プロセス・システム間の有機的な連携を中心に、次世代ディスプレイ技術が実質的な商用化段階に近づいていることを示し、産学研協力の新たな機会を開いた。 学術大会組織委員会は「基礎研究の成果が産業応用につながる代表的な分科セッション」とし、今後も持続的な技術交流と共同研究が行われることが期待されると明らかにした。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書 

フォルダブルOLEDデバイス、タブレット·ノートパソコンが牽引し、中・大型市場を拡大

Huawei’s ‘MateBook Fold’

Huawei, ‘MateBook Fold’

フォルダブルデバイス市場は、スマートフォンだけでなく、タブレットやラップトップといった中型から大型ディスプレイの分野へと急速に拡大している。最近では、AmazonとHuaweiがフォルダブルタブレットおよびノートパソコン製品の開発・発売を開始し、市場拡大の大きな一歩を踏み出している。Appleも2027年以降にフォルダブルタブレットPCの発売を準備中と報じられている。

Amazonは11.3インチのフォルダブルタブレットPCを開発中で、ディスプレイパネルはBOEのB12ラインから供給される。この製品は2026年第1四半期に最初のサンプルが提出され、同年4月に量産開始予定である。予定生産台数は約100万台で、カバーウィンドウ素材にはUTG(Ultra Thin Glass)が採用される予定である。

一方、Huaweiは5月19日に同社初のフォルダブルノートパソコン『MateBook Fold』を正式に発売した。この製品は展開時18インチ、折りたたみ時13インチで使用可能で、解像度は3.3K、画面比率は4:3である。重量は1.16kgで、展開時の厚さはわずか7.3mmである。ディスプレイは中国のOLEDパネルメーカーであるTCL CSOTが供給し、LTPOとタンデム構造を採用し、従来比で約30%の電力消費を削減した。また、Token UTGをベースにした1.5mmの折り曲げ半径設計により、耐久性も大幅に向上させた。実際、耐衝撃性能は従来比で約200%向上しているという。

Appleも現在フォルダブルタブレットの開発を進めており、早ければ2027年、遅くとも2028年には発売される見込みだ。AppleのフォルダブルタブレットPC用パネルは、サムスンディスプレイが最初のサプライヤーになると予想されている。業界関係者は、アップルの参入が中型から大型のフォルダブルディスプレイ市場の成長の起爆剤になると考えている。

これまでスマートフォンに限定されていたフォルダブルデバイスは、現在ではタブレットやノートパソコンなどに拡大しつつあり、新たな需要層を生み出している。このシフトは、関連ディスプレイ技術と部品のエコシステムの進化を加速させている。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書

Visionox、次世代OLEDをリードするための昆山研究所設立及びMask-less OLED投資を本格化

Visionox Logo

ディスプレイ企業Visionoxは、次世代OLED技術をリードするため、中国江蘇省に位置する昆山市に国家級研究所の設立を推進しており、 ViP(Visionox intelligent Pixelization)プロジェクトの生産ライン確保のための投資も本格化している。 最近開催された世界最大のディスプレイイベントであるSID Display Week 2025では、自動車やスマートホーム、ヘルスケア、メタバスなど様々な分野でのAMOLED応用事例を披露し、グローバル技術リーダーシップを再確認した。

Visionoxは、ディスプレイ産業の核心競争力である源泉技術の確保のため、昆山市に国家級研究所の設立を準備している。 この研究所は、次世代OLED技術を集中的に研究する予定で、既存のV2ラインに位置するD2パイロット工場を昆山研究所の敷地に移転し、研究開発(R&D)と試作の有機的な統合を図る。 昆山市政府は今回のプロジェクトに対して財政的支援を提供する予定であり、自治体-企業間の先端技術育成協力の模範事例となることが期待される。

ViP(Visionox intelligent Pixelization)技術の名称は、Mask-less OLEDを意味するML OLEDに変更する方針だ。  現在、安徽省合肥市で推進中のV5ラインでは、FMM(ファインメタルマスク)方式の代わりに、Mask-less OLED技術を適用した7.5K OLED生産を重点的に推進している。 技術委員会の検討が進行中で、2025年6月中に最終投資決定が行われる予定だ。

装置投資はすでに一部確定しており、Nicon露光機、Nissinイオン注入機、APSYSTEMのELA装置についてLOI(購入意向書)が発行され、蒸着機サプライヤーはApplied Materials社のディスプレイ装置関連子会社であるAKTが有力視されている。 ただし、FMM関連装置投資は保留の可能性が提起されている。

VisionoxはV2ラインに15K規模の増設も計画中で、今年中に装置発注が予想される。 必要な資金は、既存のD2パイロットライン及び特許売却、河北省政府の政策資金支援などを通じて確保する計画だ。 V5プロジェクトと並行して推進される増設戦略は、OLED需要の増加に対応し、生産効率及びコスト競争力向上のための先制的な対応である。

Visionoxは昆山国家級研究所の設立、ViP OLED中心の生産ラインの転換、AMOLED応用の多様化戦略を通じて、技術中心の持続可能な成長を追求している。 政府との協力、資産効率化、戦略的な設備投資配分などを通じて、財務的安定性と技術競争力を同時に確保し、グローバルOLED市場で技術先導企業としての地位を強化している。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶ China Trend Report Inquiry

OLED発光材料市場、2025年に28.6億ドルから2029年には37.2億ドルまで成長の見込み

2Q25 Quaterly OLED Emitting Material Market Tracker

‘2Q25_Quaterly OLED Emitting Material Market Tracker’

 

UBIリサーチ『2Q25_Quarterly OLED Emitting Material Market Tracker』によると、2025年第1四半期のOLED発光材料市場は4億9,000万ドルに達し、2025年の発光材料市場は28.6億ドルに達すると予想した。同市場は年平均6.7%で成長し、2029年には37.2億ドルの市場規模を形成すると見る。

国別に見ると、出荷が下半期に集中している韓国パネルメーカーの生産サイクルの特徴によって、2025年第1四半期には初めて中国OLEDパネルメーカー向け発光材料の売上高が韓国OLEDパネルメーカー向け発光材料の売上高を初めて上回った。ただし、第2四半期からApple iPhone 17とiPad Proのパネルの量産が開始されるため、下半期には再び韓国パネルメーカー向け発光材料の売上高が中国を上回ると見込む。

企業別発光材料の使用量は、2025年にサムスンディスプレイが39.8%のシェアを占めると見込まれ、LGディスプレイが19.9%、BOEが13.1%の割合を占めると分析。韓国のパネルメーカーのOLED材料使用量は、2029年まで55%のシェアを維持すると見込まれている。UBIリサーチのノ・チャンホアナリストは「2025年第1四半期に一時的に中国パネルメーカー向け売上高が韓国パネルメーカー向け売上高を追い越したものの、すぐに韓国パネルメーカー向け売上高が回復する」と述べ、「2025年以降、韓国パネルメーカーは、中国パネルメーカーの出荷量に劣る可能性が高いが、発光材料の売上高は当面、韓国メーカーがより高いシェアを維持するだろう」と予測した。

Changho Noh, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶AMOLED Emitting Material Market Tracker Sample

SID 2025で見る車載用OLEDディスプレイのトレンド

自動車のインテリジェント化・ネットワーク化が加速するにつれ、様々なタイプの車載ディスプレイの需要が急速に高まっています。ディスプレイ技術面では、LTPS TFT LCDとOLEDの採用率が上昇しており、マイクロLEDへの関心も高まっています。

2024年には、車載用OLEDパネルの出荷台数は前年比126%増の約248万台に達すると予想されています。2025年には約300万台に増加すると予想されています。これは、OLEDの採用が拡大し、特に高級車において、豪華な内装と効率的なスペース活用に貢献しているためです。

LG Display、BOE、Visionox、Tianmaなどは、最近、SID 2025と上海モーターショーで、様々なOLED車載ディスプレイソリューションを発表しました。メルセデス・ベンツ、アウディ、GAC、Idealなどの大手自動車メーカーも最新モデルにOLEDを搭載しており、市場浸透はさらに拡大しています。

LGディスプレイは、「未来を運転する」というテーマで自動車専用の展示スペースを組織した。展示されたコンセプトカーには、ダッシュボード全体を覆う57インチのピラーツーピラーOLEDと、後部座席用の18インチのスライド式OLEDが搭載されていた。

57-inch pillar to pillar OLED & 18-inch sliding OLED

LG-Display-57-inch-pillar-to-pillar-OLED-18-inch-sliding-OLED

BOEは、55インチの透明OLEDサンルーフを含む合計8つのOLEDディスプレイで構成されたスマートコックピットを展示しました。主な仕様は、12.3インチのインストルメントパネルとCID(解像度720×1920)、視野角48度以上で相対輝度0.5%未満の切り替え可能なプライバシーディスプレイ、解像度466×466、310PPIの1.5インチ円形OLED、そして2つのCMS OLEDです。

55-inch OLED transparent sunroof

55-inch OLED transparent sunroof

BOE OLED smart cockpit

OLED smart cockpit

Visionoxは、SID 2025でスマートC型アームレストフレキシブルOLED、デュアルスクリーン統合フレキシブルOLED、車載用UDIRフレキシブルOLED、切り替え可能なプライバシーディスプレイを発表しました。

Visionox UDIR OLED

UDIR OLED

Visionox Dual screen

Dual screen

Visionox Privacy OLED

Privacy OLED

天馬は、13インチのスライド式OLEDと、曲率範囲R800~2000mmのデュアル13インチマルチ曲率統合型ブラックOLEDディスプレイを展示した。

Tianma 13-inch slidable OLED

13-inch slidable OLED

Tianma 13-inch multi curvature OLED

13-inch multi curvature OLED

Changwook HAN, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

Visionox、V2ラインの増設可能性…小型OLEDの月産6万台体制構築の見込み

Visionoxは、中国救案(Guan)にあるV2ラインの拡張を再検討していると報じられた。これまで、地方自治体の投資支援の遅れにより拡張計画が保留されていたが、最近、救案市政府との協議が再開され、投資の可能性が再燃している。もし計画が前進した場合、V2ラインに月間15K規模の蒸着能力が追加され、既存のV1(昆山、5.5世代 15K)とV3(合肥、6世代 30K)ラインと合わせて、Visionoxは月産60Kレベルの小型OLED生産能力を確保することになる。

現在、VisionoxはV1ラインでスマートウォッチおよびモバイル用リジッド・フレキシブルOLEDを生産しており、V2とV3ラインではフラッグシップスマートフォンに採用されるLTPO OLEDを主力製品として生産している。主要顧客には、Xiaomi、Oppo、Honor、Huawei、Vivoなど、中国を代表するスマートフォンメーカーがある。

出荷量においても、Visionoxは近年著しい成長を遂げている。2021年に3,500万台、2022年に4,600万台、2023年に7,300万台を記録し、2024年には1億2,000万台に達し、前年比で約64.4%となっている。ただし、2025年第1四半期の出荷量は2,610万台で、通年では2024年と同様の数字にとどまる可能性を示唆している。

一方、Visionoxは合肥で中大型OLED市場進出に向けた8.6世代ライン(V5)の新設も進めている。このラインはノートパソコン、タブレット、車載ディスプレイなどITおよび車載用分野をターゲットとしており、ポートフォリオの多様化と成長の戦略的拠点として注目されている。

V2ラインの拡張が実現した場合、Visionoxは小型OLEDの生産能力を大幅に強化するとともに、中大型市場への参入を含む多角的な成長戦略を加速化できると期待される。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶ China Trend Report 

タブレットPC、モニター、自動車、テレビ部門の2025年第1四半期の中・大型OLED出荷量, 前年同期比12.2%増加

2Q25 Medium-to-Large OLED Display Market Track

2Q25 Medium-to-Large OLED Display Market Track

UBIリサーチより発刊された『2Q25 Medium-to-Large OLED Display Market Track』によると、2025年第1四半期OLEDパネルメーカーの中大型OLED出荷量は、2024年第1四半期比で12.2%増加し、売上高は17.1%増加した。

メーカー別では、サムスンディスプレイとLGディスプレイの中大型部門の業績が前年同期比で増加した一方、中国パネルメーカーの業績は2024年とほぼ同水準を維持した。

アプリケーション別では、タブレットPC、モニター、車載用、テレビ向け出荷量がすべて増加したが、ノートPC向けパネルの出荷量はわずかに幅減少した。特に、車載向けパネルの出荷量は、2024年第1四半期の27万台から2025年第1四半期の81万台に3倍に増加した。特にサムスンディスプレイの車載用OLEDパネルの出荷量は10万台から54万台に大幅に増加し、LGディスプレイとBOE、Everdisplayは前年並みの水準を維持した。

BOEとEverdisplayだけでなく、中国のTianmaも最近車載用OLEDのプロモーションを展開し、顧客基盤を拡大している。2025年の車載用OLED出荷量予想は300万台で、2024年比20%増加すると見込まれている。

第1四半期のタブレットPC用OLEDの出荷量は195万台で、前四半期の220万台比で25万台減少した。サムスンディスプレイと中国パネルメーカーの出荷量は前四半期比で微減となったが、LGディスプレイはiPad Pro用パネルの生産再開により、出荷台数は第4四半期の30万台比で2倍以上となった。

Changwook HAN, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶Medium & Large OLED Display Market Track

SID2025でAlediaはMICRO-LEDディスプレイの革新を約束します。

AlediaはフランスのGrenobleに本社を置くmicro-LED研究開発スタートアップで、2011年にフランス国立科学研究所CEA-Letiからスピンアウトした。AlediaはナノワイヤーベースのGaN-on-Silicon技術を開発し、micro-LEDを必要とするすべてのディスプレイアプリケーションに供給する計画を持っている。ナノワイヤの特性上、エネルギー効率に優れ、高解像度に適しているが、ピクセルをm x nアレイの形で構成すれば、大面積高輝度製品群にも最適な選択肢になると主張している。

Alediaのコア技術は、シリコン基板上に3次元構造のGaNナノワイヤを成長させる方法です。この技術は、光の放出方向を精密に制御できるため、拡張現実(AR)などの高性能ディスプレイソリューションに適しています。

Aledia-Micro-LED Aledia-Micro-LED

Alediaは約300件の特許を保有しており、1.5 µm以下のサイズのmicro-LEDでEQE 32%の世界最高レベルの効率とその製造技術、回路ボンディング技術の開発を完了したという。

Alediaは、フランスのChampagnierに2億米ドルを投資し、2025年上半期に完成予定のmicroLED生産ラインを建設中です。この施設は、8インチおよび12インチのシリコンウェーハでmicroLEDを量産することができ、月20Kのウェーハ生産能力を備えている。AlediaはAR用micro-LEDを本格的に生産するものと思われる。

Aledia-Micro-LED

Alediaの研究陣は、SID 2025でマイクロLED産業の難題を一緒に解決する準備ができていることを知らせた。

Joohan Kim, UBI Research Analyst(joohanus@ubiresearch.com)

▶XR用Micro-LED ディスプレイ技術レポート

ミシガン大、青色リン光の寿命を改善.ディスプレイの「青色問題」解決の糸口を提示

2025年5月 – 米国ミシガン大学のStephen R. Forrest教授の研究チームが開発した新しい青色リン光OLED(PhOLED)は、従来に比べて10倍以上改善された寿命と高色純度の発光を同時に達成し、青色OLEDの難題を解決する糸口を提示した。 研究結果はNature Photonics最新号に掲載され、SID2025でも関連論文を発表した。

OLEDはスマートフォンや高級テレビに広く使用されているが、これまで青色発光は低効率の蛍光方式に依存しており、エネルギー消費が大きく、寿命が短かった。 これは、青色光はエネルギーレベルが最も高く、発光層の分解が早く起こるためである。 研究チームは、この問題を解決するために、多層構造と両面設計を導入したタンデム PEP (polariton-enhanced Purcell effect) OLEDを開発した。

従来の研究でForrest研究チームは、金属電極付近の表面で発生する プラズモン現象が、発光分子の励起子(exciton)がより速くエネルギーを放出するのを助けるという事実を明らかにした。 これをさらに強化するために、今回の研究では、表面プラズマと励起子が結合した「プラズマ-励起子-ポラリトン」を形成できるように、陰極と陽極の両方に有機半導体を堆積した。 これは、まるで交通渋滞を解消する高速車線を作るように、エキシトンが光に素早く変換される経路を提供する。

また、タンデム構造により二つの発光層それぞれの負荷を半分に減らして分解を防止し、光共振器(ファブリー-フェロキャビティ)構造により発光効率と色純度をさらに高めた。

 研究の筆頭著者であるHaonan Zhao博士は、「Exitonが衝突して崩壊するのを放置する代わりに、Exitonが脱出できる高速道路を提供することで、20年前の問題に対する物理的設計ソリューションを提供し、既存の青色OLED技術が解決できなかった問題を物理的設計を通じて回避した」と説明した。 Forrest教授は、「商用化までにはまだ段階が残っているが、過去20年間解けなかった難題に実質的な答えを提示したという点が意義深い」と述べた。

今回の研究成果は、次世代のスマートフォン、テレビ、ウェアラブル機器など、様々なディスプレイ製品の性能を一段階引き上げるのに核心的な役割を果たすと期待される。 また、エネルギー効率が重要な照明分野でも革新的な変化をもたらす可能性を秘めている。 この研究は、米国エネルギー省(Department of Energy)とUniversal Display Corporationの支援を受けた。

Paper Information
– Title: Stable, deep blue tandem phosphorescent organic light-emitting diode enabled by the double-sided polariton-enhanced Purcell effect
– Authors: Haonan Zhao, Claire E. Arneson, Stephen R. Forrest
– Journal: Nature Photonics (2025)
– Journal: SID 2025 Digest148 (13-4)

Chang Ho NOH, Analyst at UBI Research  (chnoh@ubiresearch.com)

▶2025 OLED発光材料レポート

SID 2025、TCLが6.5インチから65インチのインクジェットOLEDを展示…量産化でディスプレイ市場は激変するか?

TCLはSID 2025ディスプレイウィークで、様々なサイズのインクジェットOLED製品を展示しました。インクジェット方式は、発光材料の利用効率が高く、真空蒸着方式に比べて材料コストの削減に有利な技術とされています。TCLは2024年11月に21.6インチ4KインクジェットOLEDプロフェッショナルディスプレイの量産を正式に発表し、現在量産に向けた投資を検討しています。

今回の展示会では、TCLはスマートフォン向けの6.5インチインクジェットOLEDディスプレイを展示しました。このディスプレイは、リアルストライプベースで360ppiの高解像度を実現し、ペンタイルベースでは約460ppiに相当します。このほか、2.8K解像度(243ppi)の14インチ酸化物TFTベースOLEDノートPCパネル、4K 120Hz仕様の27インチOLEDモニター、3300万画素、8K 120Hz仕様の65インチOLED TVディスプレイなど、多様な製品ラインが展示された。

TCL, 6.5” Smartphone

TCL, 6.5” Smartphone

TCL, 14” Notebook PC

TCL, 14” Notebook PC

TCL, 27” Monitor

TCL, 27” Monitor

65インチ製品は、低階調でもDCI-P3の色域の99%を維持し、発光材料の利用率を2倍に高め、ブルーライトを50%削減する技術を採用しています。これは、インクジェットOLEDの大型化と実用化における重要な技術革新と評価されています

TCL, 65” 8K TV

TCL, 65” 8K TV

TCLは6.5インチから65インチまでのフルラインナップを揃え、インクジェットOLED技術がモバイルからテレビまであらゆる製品ラインに適用できるという自信を示している。これまで中国のOLEDパネルメーカーは先進企業が最初に検証した技術をベースに生産することに重点を置いてきたが、インクジェットOLEDは中国が量産をリードした最初の技術である。この技術の成功は、中国のパネルメーカーが技術と生産の両面で飛躍するチャンスとなり得る。

しかし、真空蒸着法を用いたOLEDは、タンデムIT OLED構造やマルチスタックTV OLED構造などにより、輝度と寿命が継続的に向上しており、インクジェットOLEDには生産性を確保するだけでなく、この性能格差を縮めるという課題が依然として残っている。

Chang Wook HAN, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書

大日本印刷、BOEと8.6G OLED FMM供給の独占契約を締結、中国の国産化推進の中で市場でのリーダーシップを強化

(出典: DNP)

(出典: DNP)

大日本印刷(DNP)が、OLEDの主要部品であるFMM(Fine Metal Mask)市場で再び優位性を示している。最近、DNPは中国最大のディスプレイメーカーであるBOEと8.6世代OLEDパネル用のFMMに関する独占供給契約を締結し、拡大する大型OLED市場の拡大に対応している。

この契約は、BOEが推進中の8.6世代OLEDラインの量産戦略の一環であり、DNPはこれに対応するため、日本・福岡県の黒崎工場にFMM生産ラインを新設した。この生産ラインは、既存の6世代の約2倍以上の基板サイズに対応し、高解像度大型OLEDパネルの蒸着工程に最適化されている。また、新ラインは柔軟性を念頭に設計されており、必要に応じて一部の第6世代製品を生産することができる。

現在、DNPは6世代ラインでもBOE(5.5世代を除く主力ライン)、CSOT、Tianmaなど中国主要パネルメーカーと単独供給契約を締結しており、同分野でのシェアは100%を維持している。しかし、一部のパネルメーカーは中国製FMMのトライアルを開始しているとされるが、正確な使用比率は統計的に確認されていない。中国におけるFMMの国産化に向けた努力は継続しているものの、DNPと同水準の精度と歩留まりを達成することは容易ではない。

供給安定性と生産量拡大に対応するため、DNPは既存の広島県三原工場と今回の福岡新規ラインを並行稼働させている。この二拠点戦略は、生産の拡張性を高めるだけでなく、地震などの自然災害に備えたBCP(事業継続計画)の観点からも顧客企業の信頼性を高める要因となっている。

FMMは、OLED成膜工程でRGBサブピクセルを精密にパターニングするために必要不可欠な素材であり、パネルの解像度と歩留まりに直接影響を与える。サムスンディスプレイは、DNPから25μm級の超薄型FMMを調達する一方、一部韓国企業とのコラボレーションを通じてFMMの多角化戦略も並行している。特に、Poongwon Precision(風源精密)のような国内サプライヤーもFMM量産技術の開発を加速させ、DNPの独占体制に亀裂を生じさせようとしている。

DNPは、BOEとの大型契約を通じて、次世代OLED量産移行における重要なパートナーとしての確固たるものとし、更なる高世代移行が加速するグローバルOLED市場での戦略的優位性を改めて実証した。

Junho Kim, Analyst at UBI Research (alertriot@ubiresearch.com)

▶ China Trend Report 

2025年第1四半期の小型OLEDパネル出荷量、前四半期比14%減も第1四半期としては過去最高を記録

2Q25 Small OLED Display Market Track

2Q25 Small OLED Display Market Track

スマートフォンとフォルダブルフォン、スマートウォッチなどのアプリケーションの業績と展望を含むUBIリサーチの『2Q25 Small OLED Display Market Track』によると、2025年第1四半期の小型OLED出荷量は2億4,300万台で、2024年第4四半期の2億8,400万台比で4,000万台減少した。

前四半期実績と比較するとパネル出荷量は14.3%減少したが、前年同期比では10.7%増加して、2025年第1四半期のパネル出荷量は過去最高を記録している。

第1四半期の業績を詳細に見ると、前年同期比でサムスンディスプレイとLGディスプレイの出荷量が減少した。中国パネルメーカーの中では、Visionoxが前年同期比で最も大きく減少した。

サムスンディスプレイの場合、出荷量は減少したものの、出荷量シェアは前年同期比で2.9%上昇している。同様にLG Displayのシェアは13.1%から9.3%に低下したが、これは主にアップル向けパネルの生産が季節的に下半期に集中したためである。しかし、それでも1Q24のシェア6%から3.3%ポイント上昇している。LG Displayのアップル向けパネル出荷量は毎年成長を続けており、2025年の出荷量は2024年のそれを10%以上上回ると予想される。

中国パネルメーカーの出荷量は2024年第4四半期比で減少傾向を示した。しかし、2023年と2024年第1四半期のパネル出荷量を比較すると、前年同期比の伸びは依然として強い。注目すべきは、BOEがアップルのiPhone 17 Pro向けパネルの供給承認を得るための審査を受けていることである。BOEが認証に合格すれば、2025年に約5,000万枚のiPhoneパネルを出荷すると予測されている。

UBIリサーチのハン・チャンウク副社長は「iPhone 17シリーズにLTPOパネルが全面採用されると予想されるため、パネルの平均価格が上昇」と分析する。韓国のパネルメーカーの出荷量は前四半期比で減少したものの、Apple向けパネルの本格量産に伴い下半期には業績が改善すると予想され、2024年よりも収益が増加する可能性がある。」と述べた。

Changwook HAN, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶Small OLED Display Market Track Sample

サイドミラーに代わるカメラ ― 世界の自動車メーカーのCMS競争

自動車産業の技術進歩に伴い、カメラモニタリングシステム(CMS)の重要性が高まっています。既存のサイドミラーに代わるこの技術は、ドライバーの視野を広く確保し、車両のデザインと空力性能を向上させるという利点があります。CMSは、車外に設置された高解像度カメラを通して周囲の状況をリアルタイムで捉え、車内のディスプレイに送信することで、ドライバーが死角なく周囲を認識できるように支援します。夜間や悪天候などの運転環境でも優れた視認性を提供し、運転の安全性向上につながります。

CMSはドアミラーをなくすことで車両の空気抵抗も低減し、燃費向上とCO2排出量の削減にも貢献します。大型商用車ではCMSの導入により最大1.5%の燃費削減効果が得られるとの分析もあります。こうした技術的な優位性がある一方で、CMSの普及には課題もいくつかあります。まず、カメラとディスプレイの耐久性・信頼性の確保が不可欠であり、システムの故障や不具合が運転者の視界に致命的な影響を与える可能性があるため、徹底した品質管理とテストが必要です。また、従来のドアミラーに慣れたドライバーがディスプレイベースの新しい視聴方法に慣れるのに時間がかかる場合があり、ユーザー教育や運転支援機能との連携開発も並行して行う必要があります。さらに、各国の法規制や安全規制が未だ完全に統一されていないことも、普及の障壁となっています。

こうした流れの中、CMS技術は先日開催された「上海モーターショー2025」において、多くのグローバル企業が注目するキーテクノロジーの一つとして大きく取り上げられました。この展示会では、CMS関連の様々な技術が紹介され、自動車デザインと運転環境の未来の方向性を示す場として評価されました。

AVITA 12

AVITA 12

Honda Ye GT

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SAIC Maxus MIFA 7 EV

SAIC Maxus MIFA 7 EV

Mazda EZ-60

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BYD U7

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Changan Deep Blue S09

Changan Deep Blue S09

Han Chang-wook, Executive Vice President/Analayst of UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

Visionox、第4世代OLED技術をpTSF方式で実現

Visionoxは「SID 2025 国際ディスプレイ学会」において、第4世代OLED技術であるpTSF(Phosphor-assisted Thermally Activated Delayed Fluorescence Sensitized Fluorescence)の商用化の可能性を実証した。pTSFはハイパーフルオレッセンスOLEDの一形態であり、高色純度・高効率・長寿命を同時に実現する次世代ディスプレイ向けの有望な技術として注目されている。

今回開発されたグリーンOLED素子は、従来のDCI-P3色域を超えてAdobeRGBおよびBT.2020の要件を満たす超広色域を実現した。特に、pTSFベースのハイパーフルオレッセンスOLED素子は、CIEx < 0.21、FWHM(半値全幅)21〜27nmの高い色純度を示し、既存の燐光OLEDと比較して最大12%の効率向上と20%の寿命延長を達成したと報告した。

pTSF技術は、蛍光発光体の高い色純度、TADFホストによる100%の励起子利用、燐光補助材を介した効率的なエネルギー移動という3つの要素を組み合わせており、従来のOLED構造に比べて発光効率と安定性に優れる。また、G6量産ラインに対応した蒸着プロセスの最適化により、材料使用量を10%以上削減しつつ性能を維持している。

この技術を応用したプロトタイプ製品AおよびBは、既存のVisionox製品と比べてそれぞれ12%および6%の消費電力削減を実現した。さらに、DCI-P3およびAdobeRGBの色域カバレッジがいずれも99.5%以上を記録し、高温・高湿環境における信頼性試験でも商用製品と同等の性能を示した。

Visionoxは、今回の成果がハイパーフルオレッセンスOLEDの商用化に向けた重要なステップであるとし、今後はグリーンに加えてレッドおよびブルーのpTSF構造も開発し、BT.2020全色域のカバーを目指すとしている。

本研究は、中国の国家重点研究開発計画および清華大学化学科との共同研究により進められ、「SID 2025」学会にて試作品展示とともに発表された。

Chang Ho NOH, UBI Research Analyst(chnoh@ubiresearch.com)

▶ China Trend Report Inquiry

SID 2025で、サムスンディスプレイはOLEDのパイオニアであることを証明しました。

サムスンディスプレイは、SID 2025でOLEDのパイオニアであることを証明した。サムスンディスプレイは世界最高の技術を3つのテーマで紹介した。OLEDパイオニア企業が保有する最高の技術力を紹介し、明日のOLEDの姿をあらかじめ体験できるように立体的に展示した。

‘有機ELのフロンティア’

世界初の環境にやさしいCd-free電界発光量子ドット(EL-QD)技術を適用したQED 18.2インチディスプレイを発表した。EL-QDは、量子ドットに直接電界を加えて無機発光する技術で、QDの正確な色表現と実現した新技術である。カラーフィルターなしでBT2020 86%の色再現性と400nitの性能を実現した。サムスンディスプレイは性能をさらに向上させ、2年内の製品発売を目指している。一緒に発表された27インチQD-OLEDモニターは、5,120 x 2,880個のピクセルで220ppiの世界最大の解像度を体験することができる。ディスプレイ領域のすべてのピクセル内に有機光ダイオードバイロセンサーを内蔵したSensor OLED displayは、指で心拍数、血圧、ストレス、心房細動などの身体指標を測定することができる。SID今年の優秀論文に選ばれたセンサーOLEDディスプレイは、「ネイチャー・コミュニケーションズ」にも紹介された。

‘ピクセルから完璧へ’

青色有機材料を改善した新規EL材料の導入により、2025年の65″UHD TVは、従来比33%の輝度改善と世界最大の明るさである4,000nitを達成した。 また、世界初の500Hz駆動技術を搭載した27″OLEDゲーミングモニターを発表した。6.8″ Bezel-lessスマートフォンディスプレイは、最大0.6mmの薄いベゼルが非現実的な錯覚を体験させてくれる。14.6″OLEDパネルの上に載せた6.8″OLEDパネルは、その境界が見えないため、一つのパネルに見えるように展示された。世界初導入されたLEAD技術は、OLED表面のpolarizerを除去しても、従来と同じ反射率と明室contrastを持つOLEDパネル技術である。をかけてパネルを見る際、polarizerによってしない。LEAD技術は、もともと低消費電力と薄くて軽いという特徴がある。

明日をデザインする

サムスンディスプレイを通じて、今後の次世代ディスプレイも公開された。Rollable displayとfoldable displayのようなユニークなフォームファクターが紹介された。昨年より変位が 増加したストレッチャブルディスプレイも展示された。最大5,000ppiのRGB OLEDoSは’new realities’のためのソリューションとして展示された。

イ・チャンヒディスプレイ研究所長(副社長)は、サムスンディスプレイの圧倒的な技術力を披露できることを誇りに思い、さらに新しい技術を先駆的に開発していくことを強調した。

Joohan Kim, UBI Research Analyst(joohanus@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書

LGディスプレイ、「SID 2025」で「未来を創るディスプレイ技術」をテーマに次世代OLED技術を披露

LGディスプレイは、SID 2025展示会場を3つのゾーンに分け、大型OLED技術の進化、未来のモビリティをターゲットとした車載ディスプレイソリューション、持続可能な未来に向けた次世代ディスプレイ技術を紹介しました。

大型OLEDゾーンでは、「主流へのさらなる進化」をテーマに、第4世代OLEDパネルと、それを採用したテレビやゲーミングパネルの優秀性を披露しました。RGB素子を独立して積層して発光させる独自技術「プライマリーRGBタンデム」構造を採用し、最大4,000nitの輝度を実現しました。「27インチゲーミングOLED」を展示し、従来の第3世代OLEDを適用した製品と第4世代OLEDを適用した新製品を比較することで、輝度や色再現性の向上など、進化したLGディスプレイのゲーミングOLEDを体感できるようにしました。

27-inch Gaming OLED: 3rd Gen vs 4th Gen OLED

27-inch Gaming OLED: 3rd Gen vs 4th Gen OLED

世界最高解像度(5120×2160)で最高のゲーミング体験を提供する「45インチ 5K2KゲーミングOLED」も公開された。45インチの大画面に約1100万画素を高密度に配列し優れた画質を実現し、映画館のスクリーンに近い21:9の比率でワンランク上の没入感を提供する。ゲーミングから映画鑑賞まで、様々なコンテンツを一つのモニターで最適化できるLGディスプレイの独自技術「DFR(Dynamic Frequency & Resolution)」も注目を集めた。コンテンツに合わせて高リフレッシュレートモードと高解像度モードを自由に選択できる。

45-inch DFR gaming monitor

45-inch DFR gaming monitor

「車載用ストレッチャブルディスプレイ」は、従来の物理ボタンが配置されていた車両センターフェイシア部に、画面を自由に伸縮できるストレッチャブルディスプレイを適用することで、将来のモビリティデザインに革新をもたらす可能性を秘めています。

SDVに最適化された車載ディスプレイを適用したコンセプトカーが公開された。コンセプトカーの前席ダッシュボードには、LGディスプレイが業界で初めて商用化した57インチの超大型ピラー・ツー・ピラーが備えられ、後席エンターテインメント用に「18インチ スライド式OLED」が搭載された。 -40℃から85℃までの過酷な環境でも正常に動作する信頼性と耐久性を確保し、車載用途にも適している。

また、「持続可能な未来のためのディスプレイ」をテーマに、低消費電力技術と環境に優しい部品を適用した次世代ディスプレイを公開した。「ラップトップ向け16インチ Neo:LEDパネル」は、写真から映像制作までプロフェッショナルに適した最高の色再現性を実現するとともに、消費電力を削減する新しいLED技術を開発・適用し、IT機器のバッテリー効率を大幅に向上させた。また、未来の環境保全のために製品重量の41%を環境に優しい素材で作った「14インチノートPCパネル」も公開した。LGディスプレイは、この製品で環境に優しい素材の使用を2030年までに50%に増やす計画だ。また、22インチのマイクロLEDパネル2枚をそれぞれ独立した画面で動作させたり、2枚のパネルをシームレスに連結して1つの画面として動作させるデモを通じて、マイクロLEDを活用したタイリング技術も紹介した。

Han Chang-wook, Vice President of UBI Research/Analayst(cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDLディスプレイ年次報告書

▶2025 中大型OLED Display年次報告書

BOEの8.6世代IT用OLEDライン(B16)の進捗状況

中国BOE(京東方)は2024年3月、四川省成都市に総額630億元(約12兆4千億ウォン)を投資し、IT用8.6世代(2290×2620mm)OLED生産ラインであるB16の建設に着手した。 同ラインは、月3万2千枚のガラス基板処理能力を備える予定である。

BOEは2024年4月、 ソンイク システムの水平蒸着機を発注し、2025年5月にはB16ラインにアバコの蒸着機物流システムと ソンイク システムの水平蒸着機など主要装備が搬入される予定である。

サムスンディスプレイが8.6世代ラインでガラス基板基盤のハイブリッドOLED工程を適用するのとは異なり、BOEは約4兆1千億ウォン規模であるサムスンディスプレイの投資金の約3倍に達する金額を投資し、フレキシブル基板とガラス基板の両方をサポートできる工程設計を導入した。 これにより、B16ラインではIT用パネルだけでなく、スマートフォン用のフレキシブルOLEDパネルの生産も可能になると予想された。

しかし、BOEがB16ラインでスマートフォン生産の経済性を検討した結果、8.6世代ラインでは450ppi以上の高解像度FMM(Fine Metal Mask)工程で収率確保が難しく、FMMコストも急上昇したため、既存の6世代ラインに比べて効率が低いという結論を下したようだ。

B16ラインの最初の量産製品は、中国内ブランド用ノートパソコン用パネルが予想され、Apple用の14.8インチMacBook用パネルの開発も進行中である。 一方、iPad用11インチパネルはB12(6G)ラインで開発が行われている。

BOEは、B16ラインでのスマートフォン用OLEDパネルの生産効率が低いと判断し、自動車用ディスプレイなどの代替応用先を模索している。

Chang Ho NOH, UBI Research Analyst(chnoh@ubiresearch.com)

▶ China Trend Report Inquiry

サムスン電子とサムスンディスプレイ、ARメガネ用LEDoSの開発は誰がするのか?

サムスン電子の半導体(DS)部門のARメガネ用LEDoSの開発に注目が集まっている。サムスン電子のDS部門は昨年、CSS(化合物半導体ソリューションズ)事業チーム内にマイクロLED専担部署を稼動中だが、サムスンディスプレイと事業主管選定において議論が絶えなかった。去る4月にも専担部署をサムスンディスプレイに移す案を検討したという。今年に入ってLEDoSの開発が本格化し、モバイル経験(MX)事業部とDS部門、そしてサムスンディスプレイの役割が明確になるとみられる。

業界の専門家によると、LEDoS基盤技術が先に完成段階に達したら、サムスンディスプレイが事業化を推進するのが効率的だという。LEDoS基盤技術が確保される時期は、来年半ばとされている。当分の間、大きな変化はなく、CSS事業チームのマイクロLED専担部署でCMOS Backplane技術とマイクロLED素子技術が開発されると見られる。

マイクロLED専担部署を率いるクォン・サンデク副社長は、システムLSI出身の回路専門家として知られている。専担部署内にはLED開発の専門家とディスプレイの専門家が多数在籍している。ARメガネの分野では台湾と中国が急成長を遂げているが、サムスンがより速い歩みを見せるかもしれない。

Joohan Kim, UBI Research Analyst(joohanus@ubiresearch.com)

▶XR用Micro-LED ディスプレイ技術レポート

Visionox、V5ラインに『ViP+FMM』の並行投資を確定…サプライヤー会議は5月22日開催予定

VisionoxのViP(Visionox・インテリジェント・ピクセル化)

VisionoxのViP(Visionox・インテリジェント・ピクセル化)

UBIリサーチのChina Trend Reportによると、中国のディスプレイ企業Visionoxスは、V5 OLED生産ラインの技術的方向を決定した。同社は、独自の蒸着技術であるViP(Visionox intelligent Pixelization)と従来のFMM(Fine Metal Mask)方式にそれぞれ7.5K生産規模で投資を進める。ViP方式の7.5K投資が先に実施され、その約半年後にFMMへの投資が行われる予定だ。

ViPはフォトリソグラフィーを基盤とした高精度蒸着技術で、FMMを必要とせずに高解像度OLEDの製造が可能である点で、Visionoxが将来の生産競争力確保のため集中的に開発してきたコア技術だ。ただし、歩留まり問題のためViP単独量産は依然として課題として残っており、今回のV5ラインではFMM方式と並行する戦略が採用された。

Visionoxはこれに関連し、5月22日に中国合肥でサプライヤー会議を開催する。この会議には地方政府関係者も招待されており、V5関連投資資金の問題も近日中に解決されると期待される。

Visionoxのこのような動きは、世界のOLED業界が8.6世代OLEDラインへの投資の流れと連動し、注目を集めている。サムスンディスプレイは現在、韓国の牙山(アサン)に8.6世代IT用OLEDライン(30K)を建設中で、アップルのiPad・MacBook用パネルに供給するため、来年下半期の量産を目指している。また、BOEも中国の成都にある8.6世代OLEDラインでスマートフォン用OLEDパネルと中国国内市場向けIT OLEDパネルの生産を目標に投資を進めている。

UBIリサーチのキム・ジュンホ(Junho Kim) アナリストは「まだ歩留まりと技術の大幅な改善が必要だが、VisionoxはViP技術を通じて生産効率の向上と差別化された技術競争力を追及しているようだ」と分析した。

UBIリサーチのChina Trend Reportは、中国ディスプレイ企業の最新情報、中国OLEDパネル企業の出荷量データ、設備投資などの最新情報を提供している。

Junho Kim, UBI Research analyst(alertriot@ubiresearch.com)

▶ China Trend Report 

LGディスプレイのハイブリッドリン光ブルータンデム公開特許の概要

最近公開されたハイブリッドリン光青色タンデム特許の内容をみると、材料会社による量産が可能な検証済みの発光材料を用いていること、そして混合ホストに最適化された既存のOLED蒸着装置をそのまま利用できることから、リン光青色を早期に製品化できる特許と評価されています。

特許の主な内容は以下のとおりです。

– リン光発光層を上部に配置する必要があり、この場合、蛍光青色タンデムと比較して効率指数(青色指数)が1.7倍に向上します。(リン光発光層を下部に配置すると、効率指数は1.4倍にしか向上しません。)

– 蛍光発光層の厚さは、リン光発光層の厚さの60%以下にする必要があります。

– 下図に示すように、青色リン光ドーパントスペクトルの第2ピーク強度は、第1ピーク強度の50%以下にする必要があります。

– リン光ドーパントの最高強度波長と蛍光ドーパントの最高強度波長の差は20nm以下である必要があります。

製品検証を完了したLG Displayの青色リン光パネルが、Display Week 2025で展示されるのを楽しみにしています。

Han Chang-wook, Vice President of UBI Research/Analayst(cwhan@ubiresearch.com)

SID 2025のプレビュー

サムスンディスプレイが世界初商用化した非偏光OLED技術「LEAD™」が、情報ディスプレイ協会(SID)から「Displays of the Year(DIA)」賞を受賞した。「LEAD™」は、不透明なプラスチックシートである偏光板を代替するOCF(On Cell Film)技術で、輝度向上、屋外視認性向上、パネル20%薄型化などの優れた効果が高く評価されている。

サムスンディスプレイは、この技術の代表的な4つの特徴、▲低消費電力▲環境に優しい▲輝度向上▲薄型軽量設計を盛り込んだ「LEAD™」というブランド名で、独自技術を積極的に市場に展開している。

SDC LEAD™ Technology

SDC LEAD™ Technology

LGディスプレイは、「新技術による事業拡大(未来を牽引する)」をテーマに、未来のモビリティに最適化された世界最高の車両ディスプレイを披露する予定だ。

▲車内のあらゆる空間を映し出すことができる車両用ストレッチャブルディスプレイソリューションで、未来のモビリティにふさわしいデザイン革新の可能性を提案する。一般モニターと同等の高解像度100ppi(pixels per inch)と赤、緑、青(RGB)フルカラーを実現しながら画面を最大50%まで伸縮可能なストレッチャブルディスプレイを、車両のセンターフェイシア領域に適用し、美観と利便性を極大化している。

最近、世界初の「40インチピラーツーピラー」の商用化に成功したLGディスプレイは、▲単一パネルとしては世界最大となる57インチの車両用ピラーツーピラーを展示している。▲必要な時だけ天井から下に展開する18インチのスライダブルOLED OLEDならではの立体的な画質を活かしたエンターテイメント機能を実現し、新たなモビリティ体験を提供します。車載ディスプレイの大型化が進む中、視野角を制御することで安全性を高めるキーテクノロジーであるSPM(Switchable Privacy Mode)モードを搭載しています。

LG Display Automotive Stretchable Micro-LED Display

LG Display Automotive Stretchable Micro-LED Display

Han Chang-wook, Vice President of UBI Research/Analayst(cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

2025年のOLED発光材料使用量が前年比28%増加する見通し

UBI Researchの「2025 OLED発光材料レポート」では、OLED産業の最新動向と主要課題を分析し、OLEDパネルメーカーと発光材料メーカーの技術開発方向などを総合的に分析した。 また、OLEDパネルメーカーの量産キャパ分析とサプライチェーンおよびパネル構造を分析し、発光材料の実績を詳細に分析し、市場規模を予測した。

技術トレンドの面では、hyperfluorescence、蛍光材料など高効率、長寿命の発光技術の競争が激しく展開されており、特に青色材料の外部量子効率と寿命の改善が市場拡大の核心課題として浮上している。重水素置換、boron系蛍光素材などの素材革新が活発に行われる中、中国企業はdopantとhost分野で急速に存在感を拡大し、グローバルサプライチェーンに深く入り込んでいる。

2024年の発光材料使用量は129トンと集計された。韓国と中国のパネルメーカーの出荷量が同時に増加し、2023年の101トンから30%近く上昇した。メーカー別では、サムスンディスプレイが着実に最も高いシェアを占めており、サムスンディスプレイのリジッドOLEDの出荷量が急増し、材料使用量はますます高くなっている。

UBI Researchのノ・チャンホ研究委員は、「韓国パネルメーカーのOLED発光材料需要量は2025年に111ton、2029年には150tonになると予想され、中国パネルメーカーの材料需要量は2025年54.4tonから年平均10.3%成長し、2029年には80.6tonに達するだろう」と展望した。

Chang Ho NOH, UBI Research Analyst(chnoh@ubiresearch.com)

OLED & XR KOREA 2025- LetinAR PinTilt Technology

4月16日から3日間開催されたOLED & XR KOREA 202で、LetinARのPinTilt技術が紹介された。世界的な関心が集中しているARガラスの光学技術は、まだ開発が現在進行中の状態である。AR技術は、実際の環境に仮想イメージを重ね合わせる光学系から始まる。グーグル、アプソン、メタ、マイクロソフト、ソニーなどのメーカーは、バードバス(Birdbath)方式と出射瞳孔拡張(Exit Pupil Expander Waveguide)方式の光学系で激しい競争を繰り広げ、長所は最大化しているが、短所は解決できていない。バードバスはサイズと重量を減らすことができず、EPEは画質と消費電力を改善できなかった。LetinARは自社のPinTilt技術で二兎を追うことができると明らかにした。

PinTilt技術は、一般的なメガネの重さのARグラスで48度の広いFOVの歪みのない高画質画面を実現することができるという。LetinARは、自社のARグラスに要求されるディスプレイの輝度は20,000 nitsと明らかにしており、OLEDoSやLEDoSともに適していると思われる。製造も従来のインジェクション方式でコストパフォーマンスまで備えているというから、ARグラス業界のゲームチェンジャーになるかもしれない。

可変焦点や駆動エンジンの改善などの技術的な解決策とともに、ARグラスが実生活で活用される日が遠くないと業界の専門家が予測している理由だろう。

(出典: LetinAR)

(出典: LetinAR)

Joohan Kim, UBI Research Analyst(joohanus@ubiresearch.com)

▶XR用Micro-LED ディスプレイ技術レポート

LGディスプレイハイブリッドリン光ブルータンデム製品検証および特許出願

LGディスプレイは5月1日、世界で初めて青色リン光OLEDパネルの量産向け性能検証に成功したと発表しました。昨年、UDCと共同で青色リン光を開発した後、今回の成果はわずか8か月で達成されたもので、「夢のOLED」の実現に一歩近づいたと評価されています。

LGディスプレイは、下層に青色蛍光体、上層に青色リン光を積層するハイブリッド2層タンデム構造でこの問題を解決しました。蛍光方式の安定性とリン光方式の低消費電力を併せ持ち、既存のOLEDパネルの安定性を維持しながら、消費電力を約15%削減しました。

特に、実際の量産ラインでの性能評価、光学特性、公平性が求められる製品化段階を成功裏に完了したのはLGディスプレイが初めてで、すでにUDCと製品検証を完了しています。

(出典: LGディスプレイ)

(出典: LGディスプレイ)

LGディスプレイは、ハイブリッドリン光ブルータンデム技術に関する特許を韓国と米国で独占出願している。LGディスプレイの公開特許によると、ハイブリッドリン光ブルータンデムは、既存の蛍光ブルータンデムに比べて約1.7倍高い効率を実現することが示されている。効率、色座標、寿命を最適化するためには、青色リン光ドーパントのスペクトル形状、蛍光層とリン光層の厚さの比、発光層の位置などが重要であり、本特許はこれらの要素を中心とした技術内容を有している。高効率リン光と長寿命蛍光を活用し、ハイブリッドリン光ブルータンデムの実用化を最適化する特許として評価されている。 LGディスプレイのハイブリッド2スタックタンデムを適用したOLEDパネルは、今月11日(現地時間)から米国カリフォルニア州サンノゼで開催される世界最大のディスプレイイベント「SID(Society for Information Display)2025」で見ることができる。今回展示された製品は、スマートフォンやタブレットなどIT機器に適用可能な中小型パネルだ。AI PCやAR/VR機器など、高画質と高効率の両方が求められる製品が増えていることで、青色リン光技術の適用が急速に拡大すると予想される。

LGディスプレイのユン・スヨンCTO(最高技術責任者)は、「夢のOLEDに向けた最後の難問と言われる青色リン光製品化検証の成功は、次世代OLEDに向けた革新的なマイルストーンになるだろう」とし、「青色リン光技術で未来の市場を先取りする効果を享受できると期待している」と語った。

Han Chang-wook, Vice President of UBI Research/Analayst(cwhan@ubiresearch.com)

OLED発光材料の開発動向と展望

5月にUBI Researchで出版された「2025 OLED発光材料レポート」の内容を紹介する。

“2025OLED発光材料レポート”では、OLED産業の最新動向と主要課題を分析し、OLEDパネルメーカーと発光材料メーカーの技術開発方向などを総合的に分析した。 また、OLEDパネルメーカーの量産キャパ分析とサプライチェーン及びパネル構造を分析し、発光材料の実績を詳細に分析し、市場規模を予測した。

技術トレンドの面では、hyperfluorescence、TADF、燐光材料などの高効率、長寿命発光技術の競争が激しく展開されており、特に青色材料の外部量子効率と寿命の改善が市場拡大の核心課題として浮上している。 重水素置換、boron系蛍光素材など素材革新が活発に行われる中、中国企業はdopantとhost分野で急速に存在感を拡大し、グローバルサプライチェーンに深く入り込んでいる。

2024年の発光材料使用量は129トンと集計された。 韓国と中国のパネルメーカーの出荷量が同時に増加し、2023年の101トンから30%近く上昇した。 メーカー別では、サムスンディスプレイが着実に最も高いシェアを占めており、サムスンディスプレイのリジッドOLEDの出荷量が急増し、材料使用量はますます高くなっている。

韓国パネルメーカーのOLED発光材料需要量は2025年に111ton、2029年には150tonと予想され、中国パネルメーカーの材料需要量は2025年54.4tonから年平均10.3%成長し、2029年には80.6tonに達すると予想される。

本レポートは、OLED発光材料産業の最新動向と市場規模予測、主要企業別の戦略、技術開発の方向性などを総合的に分析したため、ディスプレイ及び素材産業従事者にとって、市場現況の把握と新たな事業企画のための重要な指針となるだろう。

Chang Ho NOH, UBI Research Analyst(chnoh@ubiresearch.com)

上海モーターショー2025: ミニマリズムとリビングルームの間で進化する車両ディスプレイ

車両ディスプレイが単なる運転支援装置から、車内体験の中核要素へと進化するにつれ、世界の自動車業界は相反する2つのトレンドのバランスを模索しています。1つは、不要な要素を排除してシンプルさを重視する「ミニマリズム」トレンド、もう1つは、リビングルームのように車両を装飾しようとする「リビングルーム」トレンドです。この2つのトレンドは、地域、顧客層、メーカーによって明確な違いを伴いながら展開しています。

ミニマリズムは、必要な情報のみを直感的に提供し、物理的なボタンの数を最小限に抑える方向に発展しています。主に米国とドイツで広がったこのトレンドは、ハイテク感度の高い若い世代や実用性を重視する消費者の間で強い支持を集めています。

一方、リビングルームトレンドは、車内を単なる移動手段から、運転中に映画、音楽、ゲームなど、様々なエンターテイメントを楽しめる空間へと変貌させようとするトレンドを反映しています。車内には大型曲面ディスプレイや助手席専用スクリーン、後部座席用エンターテイメントスクリーンなどが随所に搭載され、移動中でもリッチなコンテンツを楽しめる環境が整っています。こうしたリビングルーム型ディスプレイのトレンドは、特に中国と韓国市場で顕著です。中国の消費者は車を「第二の居住空間」と捉えており、複数の大型ディスプレイを搭載した車を好む傾向が顕著です。韓国でも、電気自動車や高級SUVを中心にリビングルーム型ディスプレイの需要が高まっています。

メーカーによって対応方法も異なります。欧州企業はミニマリズムを基本理念としつつも、主力モデルにはリビングルーム型の要素を積極的に取り入れ、高級感を高めています。米国企業はミニマリズムへのこだわりが比較的強いものの、高級車においてはエンターテイメント機能を強化する動きが見られます。中国企業は当初からリビングルームコンセプトを重視して市場を拡大してきましたが、韓国企業は車種ごとに戦略を柔軟に調整し、両トレンドをバランスよく活用しています。 4月2日から5月2日まで開催されている「上海モーターショー2025」に出展する自動車メーカー各社の車両展示の「ミニマリズム」と「リビングルーム」のトレンドをまとめた。

「ミニマリズム」のトレンド

「ミニマリズム」のトレンド

「リビングルーム」のトレンド

「リビングルーム」のトレンド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Han Chang-wook, Vice President of UBI Research/Analayst(cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

車載用OLEDディスプレイ出荷台数、2024年に248万台に到達へ:前年比126%増

UBIリサーチが発表した「2025年車載ディスプレイ技術及び産業動向分析レポート」では、車載ディスプレイの様々な技術、企業、市場動向が紹介された。

2024年の車載ディスプレイパネルの世界出荷量は2億3,600万台で、前年比8.3%増加した。2025年には2億4,180万台に達すると予想されている。2024年のOLEDパネル出荷量は約248万台で、前年比126%増加した。

これは、OLEDディスプレイが車内デザインの洗練性と効率性に貢献できるため、特にプレミアムカーでOLEDが積極的に採用されるためである。昨年発売された現代自動車のジェネシスGV80車両には、LGディスプレイ製の27インチOLEDディスプレイが適用された。また、中国のEV自動車生産会社であるニオは、2025年型ET9モデルに15.6インチOLEDと乗客用14.5インチOLEDディスプレイを採用する。

ジェネシスGV80に搭載された27インチOLED(出典:ヒュンダイ自動車)

ジェネシスGV80に搭載された27インチOLED(出典:ヒュンダイ自動車)

車載ディスプレイのエンターテインメント用途が拡大するにつれ、LCDディスプレイはOLEDと同等のコントラスト比を実現するために、ローカルディミング機能を備えたミニLEDの採用を増やしています。2024年のミニLEDパネル出荷台数は前年比で2倍以上の340万台に達する見込みです。ソニー・ホンダモビリティが2026年に発売予定の電気自動車「AFEELA」には、LGディスプレイ製の40インチピラーツーピラーミニLEDディスプレイが搭載される予定です。

UBIリサーチの副社長、ハン・チャンウク氏は、「ソフトウェア定義車両(SDV)では、高解像度、低消費電力、AR、マルチディスプレイ性能が求められ、リアルタイムのデータ提供と最適化されたユーザーエクスペリエンスが求められます。そのため、これに適したOLEDディスプレイの採用は拡大を続け、車載OLEDパネルの出荷台数は2025年に約300万台に達すると予想されます」と述べています。

Han Chang-wook, Vice President of UBI Research/Analayst(cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 車載用ディスプレイ技術と 産業動向分析レポート

台湾企業Micro-LED Display技術様々な応用可能性と商用化可能性を示す(Touch Taiwan 2025 レポート

台湾のマイクロLEDディスプレイ技術のリーディングカンパニーであるAUO、Innolux、PlayNitrideは、4月16日に台湾で開催されたTouch Taiwan 2025で、各社は最新技術を展示し、マイクロLEDの多様な応用可能性と商用化の可能性を示した。各社は大型ディスプレイや車載用ソリューション、その他様々用途の製品を披露した。

AUOのMicro-LEDは、「ディスプレイ」と「モビリティ・ソリューション」という二つの分野で、先端ディスプレイ分野におけるAUOの技術革新を示す展示品を披露した。同社は、サムスン電子と共同開発した114インチMicro-LEDテレビを展示したほか、自社開発としては世界最大となる42インチの単一モジュール8個をタイル化した127インチテレビを紹介した。

127” Micro-LED TV (Resolution: 3,840x2,160, 1,000nit, Pixel Pitch: 0.732mm)

127” Micro-LED TV (Resolution: 3,840×2,160, 1,000nit, Pixel Pitch: 0.732mm)

さらに、17.3インチの両面透明Micro-LEDディスプレイ(下の写真)は、両面に異なる情報を表示することができ、両面で相互インタラクティブなサービスを生み出すことができる。このようなディスプレイは、商業広告、家庭用装飾など、多くの分野で使用でき、ディスプレイスタイルの質を高めながら情報を伝えることができる。

 17.3” Dual-side Transparent Micro-LED Display (left), Application case(right): from AUO

17.3” Dual-side Transparent Micro-LED Display (left), Application case(right): from AUO

AUOは、スマートモビリティソリューションに関して、子会社のBHTCと共に、Virtual Sky Canopy、XR Interactive Window、Morphing Center Control、Foldable Cruise Pilot、Horizon Image Glassなど、様々な車載ディスプレイのアプリケーションとビジョンと可能性を示した(下写真)。

その他、13インチの3D ARヘッドアップMicro-LEDディスプレイや、触覚機能を備えた14.6インチフレキシブルMicro-LEDタッチディスプレイなどの先端技術を公開した。

InnoluxのMicro-LEDは、204インチの8K Micro-LEDディスプレイを先頭に、130インチの折りたたみ式Mini-LED 4Kテレビを披露し、ブースの中心的存在となっていた(下の写真)。そのほか、1.39インチのタッチ内蔵型ウェアラブルMicro-LEDディスプレイ、Micro-LEDミラー製品、透明ディスプレイ、Micro-LEDフローティングディスプレイなど様々な製品を展示した。車載応用製品の分野では、子会社のCarUX社のブランドで各種車載用displayを展示した。その中で、9.6インチのMicro-LEDを適用したLight Field Projectiveディスプレイが紹介された。      

Innolux, 204” 8K Micro-LED Display

Innolux, 204” 8K Micro-LED Display

130” foldable Mini-LED 4K TV (left: unfolded view, right: folded view)

130” foldable Mini-LED 4K TV (left: unfolded view, right: folded view)

Micro-LED Mirror Product (left) and Transparent Display (right)

Micro-LED Mirror Product (left) and Transparent Display (right)

48” Windshield Reflective Solution

48” Windshield Reflective Solution

PlayNitrideは、サムスンと共同開発した89インチMicro-LEDテレビ製品に加え、独自の技術プラットフォームをベースに5,000nitの高輝度を持つ1.39インチTantium Micro-LEDディスプレイと高輝度8.07インチ透明ディスプレイ、ARグラス用0.18インチ高輝度(50万ニット超)、高解像度(5,644 PPI、720×720)フルカラーディスプレイを展示した。また、技術向上だけでなく、9.38インチFloatingディスプレイ、外部企業と共同開発した3Dディスプレイなどのアプリケーションも紹介した。

1.39” (326PPI, 5000 nits) Tantium Micro-LED Display Product

1.39” (326PPI, 5000 nits) Tantium Micro-LED Display Product

詳細な内容及び技術分析は、UBIリサーチが後日発行するMicro-LEDレポートで紹介される予定である。

Nam Deog Kim, UBI Research Analyst(ndkim@ubiresearch.com)

XR用Micro-LED ディスプレイ技術レポート

アップル iPhone 18シリーズ、スペック変更により発売スケジュール調整

Apple iPhone 16 (Source: Apple)

Apple iPhone 16 (Source: Apple)

アップルは、2026年に発売が予定されているiPhone18シリーズの標準モデルの発売を遅らせる見通しだ。

これまでアップルは、iPhoneのシリーズごとに、標準モデル、Max、Pro、Pro Maxの4機種をリリースしてきた。2025年のiPhone17シリーズでは、Maxモデルが新モデルのAirモデルに置き換わると予想されており、Airモデルは4モデルの中で最も高価になると予測されている。

2025年までに4機種のスマートフォンが発売されると予想されているが、2026年には標準モデルの発売はなく、2027年に延期される見通しである。

アップルがiPhone 18シリーズを発売すると予想される2026年には、同社初の折りたたみ式スマートフォンも発売される可能性が高い。折りたたみ式スマートフォンの発売は販売台数を分散する可能性があるため、このような戦略的動きが検討されているようだ。

もしiPhone 18の標準モデルの発売が2027年前半にずれ込む場合、iPhone 16eの後継モデルと同時に発売されることが予想される。このシナリオでは、アップルはPro、Air、折りたたみ式などのハイエンドモデルを下半期に、低価格モデルを翌年上半期に発売し、年間を通じて異なる販売ルートを確保することになる。

アップルがこのような年2回の新製品リリース戦略を採用した場合、サムスンディスプレイ、LGディスプレイ、BOEなどのパネルサプライヤーの業績に影響を与える可能性がある。これまで第3四半期にiPhoneシリーズが販売されると、韓国パネルメーカーの収益は第三四半期から押し上げられ、第4四半期にピークを迎えていた。しかし、今後は上半期にも新型iPhoneがリリースされる場合、上半期と下半期の収益格差が縮小する可能性がある。一方で、BOEが技術的に遅れを取り続け、標準モデル向けのパネル供給のみに留まる場合、下半期の好業績が上半期にシフトする可能性がある。

Junho Kim, UBI Research analyst(alertriot@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDディスプレイ年次報告書レポート

ULVAC、中国Metaways社と提携、シリコンベースのマイクロOLED量産プロセスを発表

ULVACは、先日開催されたディスプレイ産業の展示会で、シリコンベースのマイクロOLEDディスプレイと量産プロセスを発表し、拡大するXRおよびメタバースデバイス市場における競争優位性をアピールした。展示されたソリューションは、マイクロOLEDの開発とモジュール統合に特化した新進気鋭の中国企業である浙江宏星科技股份有限公司(Metaways)との共同開発によるものである。

展示されたディスプレイは、AR/VRスマートグラス、パイロット用HMD、赤外線暗視システム、ウェアラブル医療機器などの超小型・高解像度アプリケーション向けに設計されている。

ULVACは、マイクロOLED製造に最適化された装置として、SELION-E300、NET-300C、NET-300Sを紹介した。これらの装置は、金属や絶縁体の精密なパターン形成、低温PECVD蒸着、先進的なパッケージングに使用される。高効率、高い信頼性、安定したスループットを実現し、シリコンベースのOLED生産に最適である。

ULVACの加工パートナーであるMetawaysは、中国におけるマイクロOLEDモジュール製造のトップメーカーとしての地位を確立している。 同社は、設計、チップ製造、駆動回路、最終的なモジュール組み立てに至るまでをカバーする垂直統合型の生産ラインを開発した。 中国科学技術大学、中国電子科技大学、南京大学などの博士号取得者や専門家を含む強力な研究開発チームを擁するMetawaysは、独自のイノベーションと自社技術の開発に注力している。

このコラボレーションは、日本の装置メーカーが急成長する中国のディスプレイ新興企業と協力する顕著な例である。マイクロOLEDに対する世界的な需要が増加し続ける中、このようなパートナーシップは、国境を越えた装置とデバイス技術の融合を加速させ、高解像度・超小型ディスプレイの次のイノベーションへの道筋を立てることが期待されている。

Junho Kim, UBI Research analyst(alertriot@ubiresearch.com)

UBIリサーチのMicro ディスプレイレポート

BOEのマイクロディスプレイ開発方針が明らかに

2025年3月26日に開催されたFPD China 2025の「CDC Metaverse – Display on Silicon」では、AIとARガラスエコシステムの構築、シリコンベースのディスプレイ技術ロードマップ、コアプロセス、装置と材料の革新、産業と市場動向の見通しなどのテーマについて専門家グループの発表が行われました。

 BOEは”The Progress and Roadmap of BOE Si-Based Micro Display Technology”について発表し、北京にマイクロディスプレイ基地を建設し、シリコンベースのOLED、シリコンベースのLED技術を追加して、必要なすべての仕様の高、中、低レベルのマイクロディスプレイを包括するエコシステムを形成していく方針を明らかにした。

高速LCD部門では、北京の第6世代LTPS-LCDラインであるB20にマイクロディスプレイ用高解像度(2000ppi)LCDの研究開発ラインと製造ラインを建設中だ。 LCDの地域拠点である青島とオルドスでは、高速LCDのモジュールとパネルを製造している。

北京にはハイエンド向けのOLEDoSとLEDoSの研究開発及び生産ラインも準備している。 Design houseに依存してきたSi backplaneは、独自に設計する方針だ。 重慶ではVR用AMOLEDパネルの開発と生産を担当し、昆明のOLEDoSラインであるBMOTで12インチOLEDoSを生産している。

Chang Ho NOH, UBI Research Analyst(chnoh@ubiresearch.com)

UBIリサーチのmicro display report

中国Tianma社、マイクロLEDディスプレイ技術と製品開発の展開を加速

3月23日から25日まで中国のアモイで開催されたICDE2025の出展企業の中で、Tianmaは他社よりも多くのMicro-LED製品を出展し、中国企業の中で製品開発に最も積極的であることを示した。また、Micro-LED以外にも、TianmaはICDT2025会議でLCD技術やOLED技術を用いた車載用ディスプレイ製品も出展し、その技術力をアピールした。

Tianmaが展示した主なMicro-LED製品は以下の通りである。まず、Micro-LED製品では、通常の透明ディスプレイに加え、低反射技術を用いた透明Micro-LED、テレビや大型スクリーン向けの27インチMicro-LED(タイル方式)が展示された。また、輝度10,000nitのMicro-LEDパネルを使った車載用8インチHUDスクリーンも展示された。

8.07” Low-reflective Transparent Micro-LED Display

8.07” Low-reflective Transparent Micro-LED Display

8.0” HUD Application Display (10,000 nit luminance)

8.0” HUD Application Display (10,000 nit luminance)

27” Splicing Micro-LED Display

27” Splicing Micro-LED Display

27インチのMicro-LEDパネルは、P0.4mmの7.5インチスクリーンを繋ぎ合わせて製造され、繋ぎを増やすことでビデオウォールや商業ディスプレイ用途にも対応可能。 今回の会議では、Micro-LEDの効率向上技術や、大量転写技術も発表し、技術開発に非常に積極的であることを示した。 これらは、今年発表されるUBIリサーチのMicro-LED技術レポートで詳しく説予定である。

Tianmaは中国・厦門市でのMicro-LED生産ライン構築プロジェクトを通じて、2022年3月に設備投資を行い、現在、3.5世代のMicro-LED自動化ラインを保有している。TianmaのLTPS技術をベースに、Micro-LEDの全工程にわたる技術開発を加速し、車載用、タイリング型、透明ディスプレイモジュールなどの製品化を加速している。

Nam Deog Kim, UBI Research Analyst(ndkim@ubiresearch.com)

XR用Micro-LED ディスプレイ技術レポート

2024年OLED発光材料使用量130トン過去最高、2028年には200トン突破の見通し

1Q25_Quarterly OLED Emitting Material Market Tracker

1Q25_Quarterly OLED Emitting Material Market Tracker

UBIリサーチより発刊された「1Q25 Quarterly OLED Emitting Material Market Tracker」によると、2024年の発光材料使用量が130トンだった。 韓国と中国パネルメーカーの出荷量も同時に増加し、2023年から30%近く上昇した。
メーカー別に見ると、サムスンディスプレイが引き続き着実に最も高いシェアを占めており、同社のrigid OLEDの出荷量が急増しているため、材料使用量はますます増加している。 同社は使用量ベースでOLED発光材料市場全体の42%を占め、次いでLGディスプレイが20%、BOEが13.2%となっている。

材料の使用量では依然として韓国のパネルメーカーが優勢だが、中国のパネルメーカーも追従している。中国のBOEとTCL CSOT、Tianma、Visionox、EDOのスマートフォン用OLEDの出荷量は、2021年1億1,400万台から2024年3億9,400万台で年平均51%ずつ成長した。 さらにBOEとEDOなどの中国パネルメーカーがIT用OLEDパネルの供給を本格化しており、中国パネルメーカーにより発光材料の使用量はさらに急増すると予想される。

UBIリサーチのノ・チャンホ博士によると、「2025年にはサムスンディスプレイとLGディスプレイがiPhone用パネルの出荷量が2024年比で増加が予想され、サムスンディスプレイのtablet PCとnotebook、monitorなどのIT機器出全体出荷量が2024年よりも大幅に増加することが予想されるため、発光材料市場の成長はしばらく持続だろう」と述べた。「また、中国のパネルメーカーによるIT用OLEDの量産拡大により、発光材料市場は2028年までに200トンを超えると予想される。」

Chang Ho NOH, UBI Research Analyst(chnoh@ubiresearch.com)

▶AMOLED Emitting Material Market Track Sample

RGB Mini-LED TVがOLED TVと対決構図を形成しており、今後の動向が注目される。

Micro-LED TVのconsumer market参入が2025年と言われる中、それより低いOLED級性能のRGB Mini-LED TVが市場に進出し、OLED TVと対決構図を形成すると言われている。RGB Mini-LED TVは性能面でWOLED構造のOLED TVに劣らない。OLED生産量で韓国に大きく遅れている中国のパネル生産メーカーが戦略的にRGB Mini-LED技術開発に集中している中、サムスン電子とSONYもこの分野に参入している。

HisenseはCES2025で116インチ4K TriChroma RGB Mini-LED TVを発表した。97%BT.2020の色再現性、10,000 nitsのピーク輝度、10K級のlocal dimming zoneが特徴である。TCLも2026年にRGB Mini-LED TVを発売する予定である。

サムスン電子は、RGB Micro-LED TVというブランド名でMini-LEDとMicro-LEDを含むRGB Mini-LED TVを2025年中に様々なサイズで発売する予定で、98インチ8K製品をCES2025で静かに披露した。

ソニーも一般的なRGB LED Backlight技術を開発中であることを明らかにしており、Bravia XR Mini-LED TVに導入し、Bravia XR RGB Mini-LED TVとして発売されることが予想される。

RGB Mini-LED Backlightの価格は従来のMini-LED Backlightの価格と同様の水準で予想され、今後のOLED TVとの対決の行方が注目される。

Hisense 116UX 4K TV with TriChroma RGB mini LED backlight system (CES2025)

Hisense 116UX 4K TV with TriChroma RGB mini LED backlight system (CES2025)

Samsung 98-inch 8K Neo QLED prototype with RGB micro-LED backlighting (CES2025)

Samsung 98-inch 8K Neo QLED prototype with RGB micro-LED backlighting (CES2025)

Joohan Kim, UBI Research Analyst(joohanus@ubiresearch.com)

2024年小型OLEDディスプレイ出荷台数は2023年比2億台増加、2025年10億台超えの見込み

‘1Q25 Small OLED Display Market Track’

‘1Q25 Small OLED Display Market Track’

UBIリサーチ発刊「1Q25 Small OLED Display Market Track」によると、スマートフォン、フォルダブルフォン、スマートウォッチなどのアプリケーション実績と見通しを含め、2024年の小型OLED出荷台数は9億8000万台に達する見込みで、2023年の7億7300万台から約2億台増加した。025年には小型OLED市場は10億個を超えると予想される。

2024年の実績を見ると、韓国と中国のパネルメーカーの多くが4,000万~5,000万台の出荷台数増加となり、特に中国のパネルメーカーであるTCL CSOT、Tianma、Visionox、Everdisplayは2023年比でて50%以上の出荷増を記録した。中国最大のパネルメーカーであるBOEは、iPhoneの供給中断による一時的な生産停止が年間を通じて発生したため、パネル出荷量は約8%増にとどまった。

中国パネルメーカーだけでなく、韓国パネルメーカーの出荷量も大幅に増加したしている。サムスン電子のGalaxy Aシリーズにrigid OLED パネルが採用され始めたため、サムスンディスプレイの出荷量は2023年の3億2,000万台から2024年には3億8,000万台に急増すると予想されている。LG Displayのスマートフォン向けOLED出荷量も、iPhone向けパネル供給の拡大により、2023年の5,200万台から2024年には6,800万台に増加した。

中国パネルメーカーの出荷量が着実に増加しており、サムスンディスプレイのrigid OLED出荷量とLG DisplayのiPhone向けパネル出荷量も増加していることから、2025年の小型OLED出荷量は10億台を軽く超えると予想される。

Iリサーチのハン・チャンウク副社長は「OLEDはサムスン電子のGalaxy Aシリーズや中国セットメーカーの低価格モデルに広く採用されており、BOEとVisionoxの新しい8.6Gラインもスマートフォン用パネルの生産を目的としているため、小型OLEDの出荷台数は当分増え続けると予想される」と述べた。

Han Chang-wook, Vice President of UBI Research/Analayst(cwhan@ubiresearch.com)

▶Small OLED Display Quarterly Market Track Sample

中大型OLED開発動向と展望

2025年3月にUBI Researchで 発行された「2025 中大型OLED Display年次報告書」の内容を紹介する。

“2025 中大型OLED Display年次報告書”は、中・大型OLED産業の主な課題と製品動向、パネル開発動向及び生産ライン現況、市場展望などを取り上げている。

中・大型OLEDは、IT(ノートパソコンとタブレット)用OLEDが市場を牽引している。 Automotive OLEDとモニター用OLEDもプレミアム市場を中心に急速に成長している。

2024年のノートパソコンとタブレット用OLEDの出荷量は、それぞれ8.46百万台と7.5百万台と集計された。 2023年のノートパソコンとタブレット用OLEDの出荷台数は5.40百万台と1.85百万台で、ノートパソコンは57%、タブレットは400%増加した。 2024年のタブレット用OLED出荷量の急増は、iPad Pro用OLEDが620万台供給された影響が大きい。

2025年のノートパソコンとタブレット用OLEDの出荷量はそれぞれ10.8百万台と16百万台と予想される。

優れたコントラスト比、速い応答速度、優れた色再現力など、AIベースのコンテンツ消費に適したIT用OLEDの出荷量は、2028年には5千万台を突破すると予想される。

UBI Research,「2025中・大型OLED Display Annual Report」

UBI Research,「2025 中大型OLED Display年次報告書」

中・大型OLEDは、IT用OLEDパネルとTV、モニター及びautomotive用OLEDパネルなどの応用分野によって、様々なTFT基板技術とOLED材料及びプロセス技術が適用される。 本報告書では、tandem OLEDと発光材料及びencapsulation技術などの核心技術の開発動向を紹介し、応用分野別に技術の特徴を分類し、LTPOとoxide TFT技術などの開発動向を分析した。 Inkjetプロセス、Photolithographyパターニング技術など、次世代OLED開発のための核心技術開発動向も把握し、技術競争力も分析した。

本報告書は、8.6G ITライン投資動向とIT用OLED及びautomotive用OLEDパネルなどのイシューを分析し、パネルメーカー別の技術開発動向と2029年までのOLED市場展望を提供することで、研究開発者の開発方向樹立と新たな事業企画のための市場現況把握などに役立つガイドラインとなるだろう。2025 中大型OLED Display年次報告書

Chang Ho NOH, UBI Research Analyst(chnoh@ubiresearch.com)

▶2025 中大型OLED Display年次報告書

2024年IT用OLED出荷量前年比2.2倍増加、2028年5千万台を突破

UBI Researchの最新報告書「2025中・大型OLEDディスプレイ年次報告書」によれば, 過去4年間、同様の製品数を維持していた小型OLEDとは異なり、IT OLED、特にノートパソコンとタブレットの発売製品が2024年に入って急増した。

2024年のノートパソコンとタブレット用OLEDの出荷量はそれぞれ8.46百万台と7.5百万台と集計された。 2023年のノートパソコンとタブレット用OLEDの出荷量は5.40百万台と1.85百万台で、ノートパソコンは57%、タブレットは400%増加した。 2024年のタブレット用OLED出荷量の急増は、iPad Pro用OLEDが620万台供給された影響が大きい。

2024年に発売されたOLEDタブレットPCは、Appleの製品が2種類、サムスン電子の製品が2種類、Huaweiの製品が2種類、Honorの製品が2種類で計8種類だった。 2024年に発売されたAppleのiPad Proに続き、iPad mini、AirなどのモデルにもOLEDが適用され、OLEDタブレットPC市場はさらに拡大すると予想される。

2022年52種から2023年44種に発売製品数が少量減少したノートパソコンも2024年80種と約2倍近く増加した。 2026年にはMacBook ProにもOLEDが、2028年にはMacBook AirにもOLEDが適用されると予想される。

UBI Research のハン・チャンウク副社長は, “プレミアムスマートフォン市場で確実に定着したOLEDは、IT製品群でもプレミアム級を中心に急速に使用量が増加する見通しである” と予測した。

また、「2025年のノートパソコンとタブレット用OLEDの出荷量はそれぞれ10.8百万台と16百万台、2028年にはIT用OLEDの出荷量が5千万台を突破すると予想される」と明らかにした。 彼は「優れたコントラスト比、速い応答速度、優れた色再現力など、AI基盤のコンテンツ消費に適した特性を備えたOLEDがIT機器でプレミアムディスプレイとして定着するだろう」と付け加えた。

 Chang Wook HAN, UBI Research Analyst(cwhan@ubiresearch.com)

▶2025 中大型OLED Display年次報告書

2024年のスマートフォンとフォルダブルフォン用OLEDの出荷量は前年度比27%増加、2026年には10億台を突破

UBIリサーチが最新発刊した「2025 小型OLEDディスプレイ年次報告書」によると、2024年のスマートフォンとフォルダブルフォン用OLEDの出荷量は、それぞれ8.34億台と2,400万台と集計された。 2023年のスマートフォンとフォルダブルフォン用OLEDの出荷量はそれぞれ6.55億台と2千2百万台だった。

サムスン電子のリジッドOLED使用量の拡大と中国パネルメーカーのフレキシブルOLED出荷量の増加により、2024年のスマートフォンとフォルダブルフォン用OLED出荷量の合計は前年度比27%増加した。

2025年のスマートフォンとフォルダブルフォン用OLEDの出荷量は、それぞれ9.1億台と3,000万台と予想され、2024年比でスマートフォンは9%、フォルダブルフォンは27%増加すると予想される。

2025年、中国のスマートフォンとフォルダブルフォン用OLEDの出荷量は4.9億台で、韓国の4.51億台に比べて出荷量が多いと予想される。

2026年からAppleが折りたたみ式OLEDスマホを発売する見通しで、折りたたみ式スマホ市場は急速に成長すると予想される。

2026年にはスマートフォン用及びフォルダブルフォン用OLEDの出荷量が10億台、2029年には13億台を突破すると予想される。

小型OLEDの出荷量が増加しても、2025年以降は売上高は減少すると予想される。 中国のフレキシブルOLEDの出荷量は引き続き増加するが、販売価格の下落により、全体売上高は減少する。

パネル出荷量の増加に伴い、中国パネルメーカーの売上高シェアも徐々に増加するが、2029年までに韓国パネルメーカーの売上高シェアが50%以上を占めると予想される。

Chang Ho NOH, UBI Research Analyst(chnoh@ubiresearch.com)

▶2025 小型OLEDディスプレイ年次報告書レポート

小型OLEDの開発動向と展望

2025年3月にUBI Researchで出版された「2025小型OLED Display Annual Report」の内容を紹介する。

2024年のスマートフォンとフォルダブルフォン用OLEDの出荷量はそれぞれ8.33億台と2,500万台であり、2025年には9.1億台と3千万台の市場に成長すると予想される。

これは、サムスン電子のrigid OLED使用量の拡大と中国パネルメーカーのflexible OLED出荷量の増加、およびスマートフォン用ディスプレイがLCDからOLEDに置き換わっているためだ。

2025年、中国のスマートフォンとフォルダブルフォン用OLEDの出荷量は4.9億台で、韓国の4.51億台に比べて出荷量が多いと予想される。

2026年からAppleが折りたたみ式OLEDスマホを発売する見通しで、折りたたみ式スマホ市場は急速に成長すると予想される。

Premiumモデルを中心に新しいLTPO(more Oxide TFT)やpol-less(CF on encapsulation, COE)、low reflectivity技術が適用されたパネルが増加しており、機器の厚みを減らすための様々な技術開発が進んでいる。

中国メーカーではtandem OLEDをスマートフォンにも適用し、OLEDパネルのシェア競争に活用している。 BOEは月32Kの8.6世代(2290㎜×2620㎜)OLED生産ラインをChengdu B16に建設しており、IT機器用hybrid OLEDとスマートフォン用flexible OLEDを生産できるように装置を注文している。

“2025小型OLED Display年間報告書”は、小型OLED製品のトレンド分析とパネルメーカー別のパネル開発現況及びライン現況、今後の市場展望などを収録した報告書である。

パネルメーカー別の技術開発動向と2024年の月間稼働率を分析し、2029年までのOLED全体市場とパネルメーカー別、応用製品別、国別市場を展望しているため、本レポートは市場の現状を把握し、新たな事業企画のための重要なガイドラインとなるだろう。

UBI Research Chang Ho NOH Analyst(chnoh@ubiresearch.com)