AI光通信が道を開く…マイクロLEDがディスプレイ市場への参入を加速

LightBundle™ — Using microLEDs to “move data” (Source: Avicena)

The performance of an interconnect (Source: Avicena)
次世代ディスプレイ技術として注目されているマイクロLEDは、新たな用途で実用化の可能性を見出しています。低い歩留まりや複雑な製造プロセスなどによりディスプレイ市場への参入が遅れていましたが、最近、AI半導体間の高速光通信(Co-Packaged Optics、CPO)の需要が高まり、マイクロLEDの実用性が再び注目を集めています。CPO分野は、小型、高速、低消費電力といったマイクロLEDの特性と相性の良い分野であり、この市場での実用化は、ディスプレイ市場への参入を加速させる転換点となる可能性があります。
マイクロLEDは、OLEDとLCDの利点を兼ね備え、高輝度、長寿命、焼き付き防止、優れた色再現性などを実現するディスプレイ技術です。しかし、本格的な市場拡大には、解決すべき技術、製造、経済的な課題が存在します。技術的には、数μmサイズのRGBチップを数百万個も精密に配置して接合する必要があり、そのための大量転写プロセスは、速度、精度、歩留まりの面で依然として改善の余地があります。接合工程では、熱応力やアライメント誤差などの精密制御技術を継続的に向上させる必要があります。
製造プロセスも最適化が必要です。複数のピクセルが画面全体の品質に影響を与える可能性があるため、高精度検査と高度な補正技術が不可欠であり、現在の歩留まりはパイロットラインを基準に10~30%程度にとどまっています。自動化レベルと検査装置の精度も、将来の生産性を確保するための主要な改善課題です。
経済的実現可能性の面では、歩留まりとプロセスコスト構造の効率化が求められます。例えば、サムスン電子の110インチマイクロLEDテレビ「The Wall」は現在約15万ドルで販売されており、本格的な量産体制を確立するには、材料と装置のエコシステムもさらに拡張する必要があります。
現在、マイクロLEDは超高級テレビや大型商業サイネージを中心としたプレミアム市場に導入が進んでおり、今後はARやIT機器など、様々な製品群への拡大が見込まれています。業界全体でプロセスの標準化とサプライチェーンの構築が徐々に進んでおり、この流れが市場拡大の実用基盤につながると期待されています。技術・プロセス関連の課題は依然として様々ですが、改善と進化を通じて段階的に解決できる課題として認識されています。特に、非ディスプレイ分野への技術適用拡大は、マイクロLEDの実用性と信頼性を検証する好機となっています。AIサーバーや高性能半導体システムには、高速・低消費電力の光通信環境が必要であり、これはまさにマイクロLEDの技術的特性と一致しています。既存の電気ベースの相互接続は、発熱や帯域幅のボトルネックなどの限界を示しており、これらの問題を解決するために、光信号ベースの通信構造であるCPO技術が急速に採用されています。米国のスタートアップ企業であるAvicenaは、この分野をリードする企業であり、マイクロLEDをベースとした光通信技術であるLightBundle™ソリューションを通じて、AIやHPCシステムに適した高速・低消費電力のインターコネクトを実現しています。Avicenaは、数千個のマイクロLEDアレイを並列駆動することで数十~数百Gbpsの伝送速度を実現し、既存のVCSELと比較して低発熱、低動作電圧、小型化、並列化といった技術的優位性を示しています。また、CMOSプロセスで製造できるため、半導体パッケージとの統合にも有利です。
光通信用マイクロLEDは、ディスプレイ用に比べて実装条件がシンプルです。多色素子や高解像度は求められず、チップ数も数千~数万個と少ないため、多少歩留まりが低くても製品化が可能です。実際、Avicenaを含む複数の企業がマイクロLEDベースの光通信ソリューションでAIサーバー市場に参入しており、この市場では歩留まりよりも実際の通信性能と長期的な信頼性が重要な競争要因となっています。
AI光通信市場の需要拡大は、マイクロLEDの量産基盤強化の重要な触媒となりつつある。生産量の増加、設備投資、材料サプライチェーンの拡大は、ディスプレイ市場における歩留まり向上、プロセス自動化、コスト削減といった好循環にもつながる。実際、一部の装置メーカーは、ディスプレイと光通信プロセスを同時に処理できる統合装置を開発しており、これはプラスに作用している。
Changwook Han, Executive Vice President/Analyst at UBI Research (cwhan@ubiresearch.com)